木村が元世界王者を破り、世界ランク復帰を確実にした一戦。
無敗で日本王者になった木村だが、僕の中では印象の薄い選手だった。
巧いことは巧いのだろうが、攻撃面でのアピールに欠け、一言で言えば
「つまらない」試合をするというイメージしかない。
そんな木村が初防衛戦で福原力也にタイトルを奪われ、世界ランクも
失った。その再起戦の相手にヨーダムロンを選ぶとは、ずいぶん思い切った
マッチメークだ。ヨーダムロンには確かに一発の怖さはないが、木村が
過去に破ってきた元世界王者たち(セーン・ソー・プルンチット、
ヨックタイ・シスオー)のようなロートルではなく、今も王座返り咲きに
意欲を見せる現役バリバリの世界ランカー(WBA4位)なのだ。
ヨーダムロンは石井広三をKOして王座に就いたヨベル・オルテガを
破って世界王者となり、初防衛戦で佐藤修にKO負けしてタイトルを
失った。1年半ほど前にはマヤル・モンシプールに挑戦し敗れている。
しかし負けたのはその2試合のみ、つまり世界戦以外では負けていない。
試合は、地味ではあるが見応えのあるものになった。本来フットワークを
多用するタイプの木村がほとんど下がらない。ファイターに近いスタイルだ。
長年慣れ親しんだスタイルを変えるのは容易なことではない。もし変えるに
しても、普通なら弱い相手で試しながら煮詰めていくものだ。日本王座も
世界ランクも失った木村は、「今のままじゃいけない」と危機感を抱いた
のだろう。この大一番でのスタイル改造に、木村の決意が感じられた。
とはいえ元々慎重派の木村だから、ただのがむしゃらなファイターになった
わけではない。ガッチリとガードを固め、ディフェンスにも細心の注意を
払った上で、多彩でスピードのあるパンチを放っていく。この辺り、同じ
花形ジムの先輩である星野敬太郎(元WBA世界ミニマム級王者)に通ずる
戦い振りだ。
中間距離でのフェイントの掛け合いやジャブの突き合い、接近戦での
パンチの交換。お互いディフェンスが良く、またお互い強打者ではないため、
どちらかがダウン寸前のピンチに陥るようなエキサイティングな場面は
見られないが、非常にレベルの高い攻防が繰り広げられる。
優劣の微妙なラウンドも多かったが、手数の上でもクリーンヒットの上でも、
若干木村が上回っている。特にボディブローの冴えがいい。後半に入ると
ヨーダムロンが焦り始め、KO狙いでラフに攻め立てる。その中で露骨な
ローブローが増え、2度の減点もあった。相当追い込まれている証拠だ。
結局、多くのラウンドで(ほんの少しの差ではあるが)優位に試合を進めて
いた木村が、文句ない判定勝ちを収めた。ディフェンス面での巧さと攻撃面での
積極性をミックスさせた木村のニュー・スタイルは、少なくともこの試合では
非常によく機能していた。
本来クレバーな面を持つ木村であるから、例えばモンシプールのような
猛ファイター相手に今回のような戦法を一貫して取るつもりはないだろうが、
戦い方の幅が広がったのは間違いない。そして何より、負けたことで逆に
精神的に強くなったようだ。無敗の頃はむしろ「負けないこと」を優先する
ような印象の薄い試合振りだったが、これで一皮むけるのではないかと思う。
無敗で日本王者になった木村だが、僕の中では印象の薄い選手だった。
巧いことは巧いのだろうが、攻撃面でのアピールに欠け、一言で言えば
「つまらない」試合をするというイメージしかない。
そんな木村が初防衛戦で福原力也にタイトルを奪われ、世界ランクも
失った。その再起戦の相手にヨーダムロンを選ぶとは、ずいぶん思い切った
マッチメークだ。ヨーダムロンには確かに一発の怖さはないが、木村が
過去に破ってきた元世界王者たち(セーン・ソー・プルンチット、
ヨックタイ・シスオー)のようなロートルではなく、今も王座返り咲きに
意欲を見せる現役バリバリの世界ランカー(WBA4位)なのだ。
ヨーダムロンは石井広三をKOして王座に就いたヨベル・オルテガを
破って世界王者となり、初防衛戦で佐藤修にKO負けしてタイトルを
失った。1年半ほど前にはマヤル・モンシプールに挑戦し敗れている。
しかし負けたのはその2試合のみ、つまり世界戦以外では負けていない。
試合は、地味ではあるが見応えのあるものになった。本来フットワークを
多用するタイプの木村がほとんど下がらない。ファイターに近いスタイルだ。
長年慣れ親しんだスタイルを変えるのは容易なことではない。もし変えるに
しても、普通なら弱い相手で試しながら煮詰めていくものだ。日本王座も
世界ランクも失った木村は、「今のままじゃいけない」と危機感を抱いた
のだろう。この大一番でのスタイル改造に、木村の決意が感じられた。
とはいえ元々慎重派の木村だから、ただのがむしゃらなファイターになった
わけではない。ガッチリとガードを固め、ディフェンスにも細心の注意を
払った上で、多彩でスピードのあるパンチを放っていく。この辺り、同じ
花形ジムの先輩である星野敬太郎(元WBA世界ミニマム級王者)に通ずる
戦い振りだ。
中間距離でのフェイントの掛け合いやジャブの突き合い、接近戦での
パンチの交換。お互いディフェンスが良く、またお互い強打者ではないため、
どちらかがダウン寸前のピンチに陥るようなエキサイティングな場面は
見られないが、非常にレベルの高い攻防が繰り広げられる。
優劣の微妙なラウンドも多かったが、手数の上でもクリーンヒットの上でも、
若干木村が上回っている。特にボディブローの冴えがいい。後半に入ると
ヨーダムロンが焦り始め、KO狙いでラフに攻め立てる。その中で露骨な
ローブローが増え、2度の減点もあった。相当追い込まれている証拠だ。
結局、多くのラウンドで(ほんの少しの差ではあるが)優位に試合を進めて
いた木村が、文句ない判定勝ちを収めた。ディフェンス面での巧さと攻撃面での
積極性をミックスさせた木村のニュー・スタイルは、少なくともこの試合では
非常によく機能していた。
本来クレバーな面を持つ木村であるから、例えばモンシプールのような
猛ファイター相手に今回のような戦法を一貫して取るつもりはないだろうが、
戦い方の幅が広がったのは間違いない。そして何より、負けたことで逆に
精神的に強くなったようだ。無敗の頃はむしろ「負けないこと」を優先する
ような印象の薄い試合振りだったが、これで一皮むけるのではないかと思う。