ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

ホルヘ・リナレスvsサオヒン・シリタイコンドー

2006年04月01日 | 国内試合(その他)
満員とまでは行かないが、かなりのお客さんが入っていた。
ベネズエラ人とタイ人の対戦、しかもノンタイトル。
その試合にこれだけの人が集まったことにまず驚き、そして
嬉しくもなった。リナレスのハイレベルなボクシングを
見たいという人は、確実に増えているようだ。

相手も噛ませ犬なんかではない。サオヒンは2度の世界挑戦を
経験し(いずれも判定負け)、現在はアジアの地域タイトルである
PABAのフェザー級王者。これが20戦目のリナレスに対し、
サオヒンは実に3倍の60戦以上というキャリアを誇る歴戦の雄だ。
アジア圏においては、間違いなく「強豪」と呼べる選手である。
この実力者を、「ベネズエラのゴールデンボーイ」リナレスが
どう攻略するのか。その興味が、これだけの観客を集めたとも言える。


既にWBAでもWBCでも上位にランクされ、いつ世界戦が
決まってもおかしくない状況にあるリナレスとしては、ここで
印象的な勝ち方をして、評価も人気も上げたいところだ。

試合の方は、リナレスが終始危なげない戦い振りで文句のない
判定勝ちを収め、世界レベルの力量を示した。その「危なげない
戦い振り」にやや食い足りなさが残ったが、「打たせずに打つ」
ことがボクシングの理想であるならば、危険な相手を前に徹底して
リスクを避けた今回のリナレスの戦法は間違っていない。

タフなサオヒンをぐらつかせるシーンが何度かあったが、決して
深追いはしなかった。サオヒンはかつて名古屋で石井広三と対戦し
判定で敗れたが、前半にダウンを奪われて劣勢になりながらも
終盤に反撃して逆転KO勝ち寸前まで行ったこともある。

そのことをリナレスが知っていたかどうかは分からないが、実際に
相対してみてサオヒンの強さを感じたのだろう。またリナレス自身にも、
7ラウンド辺りから足に痛みを感じるというアクシデントがあった
ようだ。そういった要素を鑑みて、まずは勝つことに専念したのだと
思われる。


これで20連勝無敗となったリナレス。しかし陣営は世界挑戦を焦らず、
次回もノンタイトル戦を行うようだ。