ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

WBC世界Sバンタム級TM 西岡利晃vsレンドール・ムンロー

2010年10月24日 | 国内試合(世界タイトル)
西岡が、難敵と目されていたムンローに完璧な判定勝ちを収めて
5度目の防衛に成功した。

スーパー・バンタム級に上げてからの西岡は、あまり派手に足を使わず、
最低限の動きで相手のパンチを避けるようになった。
キャリアを積んだことにより「見切り」が良くなり、無駄な動きが減ったのだ。
そんな西岡が、今回は足を忙しく動かしていた。
それだけムンローを警戒していたのだろう。

旺盛な突進力を誇るムンローを、フットワークと強いパンチで止めることに成功。
圧倒的大差を付けられてなお、前に出ることができなかったムンロー。
とにかく西岡が上手すぎて、出たくても出れなかった、という感じだ。

それでも、ムンローは最後まで気持ちが折れなかった。
一撃で試合を終わらせることも少なくない西岡のパンチを何発も食らいながら、
ぐっと我慢して攻め返す。評判通り、心身ともにタフな挑戦者だった。

判定は大差、技術でも圧倒したが、西岡にとっても
かなり疲れる試合だったのではないだろうか。

それにしても・・・バンタム級時代は4度に渡って世界の壁に跳ね返され、
アキレス腱を断裂し、 ガラガラの会場で格下相手に打ちつ打たれつの
乱戦を繰り広げ、「まだやるのか」「西岡は終わった」とまで言われた男が、
今や押しも押されぬ日本のエースとして、幾多の強豪を撃退しているという
事実には感慨深いものがある。

バンタム級時代と変わったもの・・・それは、体力と精神力。
線が細く、接近戦を避けがちだった西岡が、自ら接近戦を仕掛けるようになった。
階級を上げて体力がアップしたのと、「いざとなれば打ち合いも辞さない」
という覚悟が強まったのだと思う。

西岡は34歳。ピークを維持できる時間はさほど長くないと思うが、
この年齢で「最高傑作」とまで称えられる内容の試合を見せられたことは、
多くの30代のボクサーに希望を与えたのではないだろうか。

王者は王者らしく戦い、挑戦者は挑戦者らしく戦った。
本当に素晴らしい、そして後味の爽やかな試合だった。

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