ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

2月のボクシング(国内編)

2006年02月04日 | 国内試合(その他)
2月の試合予定をざっと拾っておきたいと思う。


まずは今日(4日)、WBC世界スーパー・バンタム級1位の西岡利晃が
WBC同級22位のウーゴ・バルガスとノンタイトル戦を行う。
バルガスはWBCカリブ王座というよく分からないタイトルを持っており、
今までの戦績は27戦13勝9敗1分、うちKO勝ちが7つだそうだ。
ちなみに西岡は、33戦26勝(15KO)4敗3分。戦績から言っても
ランキングから言っても明らかに西岡が格上であり、すっきり勝たなければ
いけない相手だと言える。

前回の試合では元東洋太平洋王者のペドリト・ローレンテに苦戦している西岡。
「世界に最も近い男」と言われ続けながら、ウィラポンへの挑戦は4度に渡って
失敗し(2敗2引き分け)、いつの間にか29歳になってしまった。若手という
イメージがあったが、もうとっくにベテランである。ウィラポンに敗れた後
バンタム級からスーパー・バンタムにクラスを上げ、大した実績も挙げていないのに
なぜかすぐ1位にランクイン。その後も大した実績を残していないのにずっと
1位のままなのは不可解だが、ともかく5度目の世界挑戦を実現させるためには、
22位の選手「ごとき」に手こずるわけにはいかない。


そして明日5日は、名古屋でダブル東洋太平洋タイトルマッチ。杉田竜平が
ランディ・スイコに、大場浩平がマルコム・ツニャカオにそれぞれ挑戦する。
これはずっと楽しみに待っていた試合だ。出来れば生で観たかったが、既に
チケットは完売らしい。名古屋のボクシング興行で「ソールド・アウト」なんて
あまり聞いたことがない。次代のスター候補である大場への期待感は、僕の
予想以上に高まっているのかもしれない。最近はやや見限られてきた感のある
杉田にしても、まだ根強いファンは多いのだろう。

相手はいずれも世界レベルの強豪である。当然楽観的な予想は立てられないが、
マッチメークだけでドキドキさせられる試合なんて名古屋では実に稀なのだから、
その興奮を純粋に楽しみたいと思う。本当に、一体なぜこんな興行が実現したのか
不思議なほどだ。噛ませ犬ばかりを連れてくる弱気なマッチメークや、悪名高い
地元判定の酷さなどで、これまで名古屋のボクシングファンは肩身の狭い思いを
してきたが、今回ほど「名古屋にいて良かった」と思える試合も少ない。

明日は全国のボクシングファンの注目が名古屋に集まる。両者の健闘を期待するのは
もちろんだが、それ以上に、とにかく公正なジャッジメントをお願いしたい。
ここで「名古屋判定」など起きようものなら、もう永遠に名古屋は笑いものだ。


この他にも2月は注目カードが目白押しだ。8日には前日本ウェルター級王者の
湯場忠志が、世界8位のマサ・バキロフと対戦する。湯場はこれが再起戦。
前回は衝撃の1ラウンドKO負けで王座を失った湯場。再起戦といえば、普通は
「手頃な相手」を呼んでくるものだが、いきなり世界ランカーに挑むとは驚きだ。
その素質を常に高く評価されながらも、大事なところで星を落としてきた湯場に
してみれば、「もう後がない」という思いもあるのだろう。また、バキロフが
肩書きの割には強さを感じさせないのも事実で、世界ランクを手に入れようと
思った時、これほどおいしい相手もいない、と陣営は考えているのかもしれない。

追い込まれた湯場が潜在能力を発揮するのか、あるいはバキロフが世界ランカーの
意地を見せるのか。正直に言って、どんな展開になるのか読めない試合である。


11日は、日本スーパー・バンタム級チャンピオン福原力也の初防衛戦。
これは毎年恒例の「チャンピオン・カーニバル」の一環のため、いきなりランキング
1位の酒井俊光が相手だ。原則的に「最強の挑戦者」を迎えるのがチャンピオン・
カーニバルの理念である。

また、この日のセミファイナルも興味深い。先日の日本タイトルマッチ(同時に
世界挑戦者決定戦でもあった)で惜しくも敗れたプロスパー松浦が、日本ランカーの
河野公平と対戦するのだ。松浦は世界6位、河野は日本7位。松浦は格の違いを
見せたいが、同時に足元をすくわれないように気をつけなければならない。


13日はそのチャンピオン・カーニバルの中でも屈指の好カードの一つが見られる。
日本フライ級タイトルマッチ、王者の内藤大助と、1位の中広大吾の激突だ。
内藤は2度の世界挑戦に失敗しているとはいえ、世界王者以外には未だ負けなし。
国内トップの評価は揺らいでいない。しかし中広も期待の新鋭だ。元世界ランカーを
KOし、日本ランカーにも圧勝。ここまで無傷の13連勝を誇る。

キャリアでは王者が圧倒的に上回るが、気になるのはメンタル面だ。内藤にとっては、
防衛戦でありながら世界戦に敗れた後の「再起戦」でもある。気持ちの持っていき方は
なかなか難しいのではないだろうか。一方の中広には、無敗で駆け上がってきた
「勢い」がある。ましてや挑戦者であるから、気持ちの面で迷いはないだろう。
とはいえ、両者のこれまで辿ってきた道筋が違い過ぎるので、現時点での戦力比較は
しにくい。終わってみれば「やっぱり内藤は強かった」ということになるのか、あるいは
「噂通り中広は凄かった」ということになるのか。とにかく非常に楽しみだ。


これだけではない。18日には日本ミドル級タイトルマッチ、20日には日本
バンタム級タイトルマッチ。そして27日には、WBC世界スーパー・フライ級
タイトルマッチが控えている。王座に返り咲いた徳山昌守が、「2度目の初防衛戦」で
いきなり1位のホセ・ナバーロと対戦するのだ。これも、もうずっと前から楽しみに
していた試合である。世界戦10勝1敗のキャリアを誇る実践派テクニシャンの徳山と、
シドニー五輪アメリカ代表という肩書きを持ち、アマチュアの王道を歩んできた
ナバーロ。果たしてどちらのテクニックが優れているのか。ボクシングの粋を集めた、
緊迫感のある技術戦になるだろう。

ただ、心配なのは徳山のコンディションだ。前回の川嶋戦ではパワーとスピード、
テクニックを融合させた素晴らしいボクシングを展開したが、川嶋のパワーに対抗する
ために敢行した筋力アップに伴い、ただでさえ長身の徳山の減量苦はもはや極限にまで
来ているはずだ。また、川嶋に雪辱し返り咲きを果たした直後には「引退宣言」まで
飛び出したほどだから、モチベーションの低下も気になるところだ。最終的には
「スーパー・フライ級はこれで卒業」という発言に落ち着いた徳山が、果たして
「徳山ボクシングの集大成」を見せてくれるのか。好試合を期待したい。








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