はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ドリームガールズ

2007-02-19 16:16:14 | 映画
「ドリームガールズ」監督:ビル・コンドン

一瞬で引き込まれた。それは濁流に飲まれる感覚にも似ていた。派手な照明、きらめく衣装、リズミカルにかき鳴らされるブラックミュージック。陽気な音楽の洪水の奥から、きっと楽しいことが押し寄せてくる。その予感が運転疲れの脳を完全に覚醒させた。トニー賞6部門を受賞した伝説的ミュージカルの映画化は、「シカゴ」脚本を担当したビル・コンドンが指揮をとり、キャストにも恵まれ、結果後世に語りつがれるべき名画となった。歌うことの楽しさと、夢の変遷。それがテーマだ。
シカゴ育ちの三人娘エフィー(ジェニファー・ハドソン)、ディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)はドリーメッツというトリオを結成、スターになることを夢見て多くのアマチュアオーディションに出場していた。実力はあるのに運に恵まれない三人だが、野心家カーティス(ジェイミー・フォクス)との出会いにより、ジェームス・アーリー(エディ・マーフィー)のバックコーラスを任されることに。それだけでも成功には違いないが、カーティスは満足しない。強引な手腕ながらも黒人開放の時流に乗り、三人娘をザ・ドリームスとして華々しくデビューさせた。
その際リードボーカルを歌唱力に勝るエフィでなく華麗な容姿のディーナにしたのはテレビ時代の訪れの現われでもある。だがそれを不満とするエフィは大暴れの末に脱退。新メンバーとともにザ・ドリームスが歩むのは、ポップでライトで踊れる音楽。ソウルを失った楽曲に絶望したジェームスと作詞家C・Cが離れ、映画出演など音楽活動以外の活動に従事させられることにディーナは疲れ……。
彼女らは自らに問う。自分たちがやりたい事はなんだったのか、かなえたい夢はなんだったのか。他人の夢を踏みにじってもなんとも思わないハイパープロデュースマシンと化したカーティスに鉄槌を下し、そして壮麗なるラストステージが訪れる……。

ジェニファー・ハドソンの名演、ビヨンセ・ノウルズの美声、ジェイミー・フォックスの悪の演技。良いところはたくさんあるけど、個人的に印象に残ったのはエディー・マーフィだった。彼の演ずるところのジェームス・アーリーは中堅どころの歌い手だが、陽気で下品で女好きで、でもソウルに満ちていて、本当に楽しそうに歌うのだ。生粋のエンターティナーのエディのキャラが生かされていて、それがとても嬉しかった。最近ぱっとしない彼だけに、この当たり役は大きい。夢の変遷と人の心の移り変わりと、汚れちまった悲しみと、それらをすべて表現しきった彼のラストは見物。

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