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世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

XXゼロ 呪催眠カーズ

2008-01-24 15:16:07 | 小説
XXゼロ 呪催眠カーズ (宝島社文庫 598)
上甲 宣之
宝島社

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「XX(エクスクロス)ゼロ 呪催眠カーズ」上甲宣之
 阿鹿里村事件より半年前の神戸。「別れ屋」の彼女は、御名方稲荷大社の境内にいた。別れ屋というのは、依頼を受け、対象のカップルの仲を引き裂く業者のこと。片割れの浮気相手になることすらも辞さない苛酷な仕事だが、もって生まれた美貌と抜群の頭脳で、彼女は全営業所トップの成績をあげるクイーンとして君臨していた。
真夜中の境内に潜む彼女。丑の刻参りの装束に身を包み、藁人形と五寸釘を携えたターゲットの醜い姿をカメラにおさめたまではよかったが、不注意から姿を目撃され、さらに相方・くららのミスからターゲットに命を狙われることになる。彼女の名は西園寺レイカ。最凶の殺人鬼のかつての姿である。

「そのケータイはXX(エクスクロス)で」、「地獄のババぬき」で話題の上甲宣之の手による本作は、人気キャラ・レイカ様を主人公とした番外編。彼女が理性を失う前の、真人間(?)だった頃の貴重な記録だ。
 真人間とはいえ、頭脳戦肉弾戦ともに抜群のレイカ様の命を狙ったってどうなるものか、と思われるところだが、どうしてどうしてターゲットは強敵である。見ただけで相手を催眠状態に陥らせ、好きなように暗示をかけることのできる、「呪催眠」という無茶苦茶通り越してやりすぎの技を持っている。さすがのレイカ様も、「車の外には空気がない」とか「移動速度40〓を下回ると激痛が走る」なんて暗示に邪魔されては満足に動けない。さらに「夜明けとともに地球上の酸素は消失する」でとどめを刺される。最凶神話はどこへやら、話は嫌でも緊迫感を放つ。
 恋愛名所を転々とする、痛みとシニカルさに満ちた追跡行だけでも読めないことはない。実際それだけでも十分に面白いのだが、できることなら他2作品とも読んでおいていただきたい。「彼氏とラブラブ。信頼をおく妹分のいるレイカ様」なんていうレアな姿を見る喜びがあってこそ、本作は本来の光りを放つ。ラストに待つ別れの味わいもいや増すというものなのだ

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