田神六兎の明るい日記帳

田神六兎の過去、現在、そして起こるであろう出来事を楽しく明るくお伝えします。

私は何もできなかった

2013年10月03日 | 日記
 横浜市緑区で踏切内で倒れている男性を救い自分は命を落とした女性がいました。勇敢で、立派です。私などとてもできません。
 十年ほど前のことです。いつも通る踏み切りでの出来事です。踏み切りはカマボコ状、道路巾は二車線ギリギリ、通行量は並です。線路は私鉄二系統の路線ですので、踏切内は複々線になっています。
 夕方仕事を終えて帰宅途中でした。私は車を運転する時は寒くても運転席側の窓を2センチほど開けます。外の音を聞くためです。また踏み切りを渡る場合は警報の音よりも警報ランプをまっ先に見る癖があります。警報音よりも警報赤色灯が早く発せられます。運転が下手ですので、最大の注意を払っています。
 その日、私は先頭で列車の通過を待っていました。警報音が鳴りはじめ、遮断機が降りようとしたとき、後方から私の車の隙間をぬって自転車が踏み切りに進入しました。こちら側の遮断機をかいくぐり向こう側の遮断機をくぐろうとしたときバランスを崩し、踏切内で自転車が傾き、少年は横を向いてしまいました。少年は手に包みを持っていました。片手で自転車を倒さぬように支え、降りてしまった遮断機の前で一瞬立ち止まったように見えました。私は声も出せませんでした。体が硬直し、たぶん息をするのも忘れていたと思います。対向車線に止まっていたライトバンの運転手さんは中年の男性でしたが、取り乱した様子もなく平然と少年が片手でもつ自転車を遮断機の下を滑らせ、道路へ引き出しました。少年は四つんばいで遮断機を抜けました。その瞬間、急ブレーキのドンドンと地響きのような振動を伴って電車が通過しました。通過してかなり前方で電車は止まりました。いつまでも警報機がなり続いていました。私は足が震え、歩くことができませんでした。踏み切りの近くで通過する電車を見ていますとこの光景がフラッシュバックします。私にはとてもできません。彼女のご冥福を祈ります。