アジサイの中で最も花の遅いタマアジサイです。新潟県内にもあることはあるのですが、上越地域の一部でしか見たことがないので県内の人にとってはあまり馴染みがないアジサイでしょう。私が最初にこの種を意識したのが転付峠越えをして南アルプスの赤石岳を目指した時のこと。途中にフォッサマグナの露頭があってそこを見学していた時にイワタバコと一緒に咲いていたタマアジサイを見たときでした。この時の山行がとても厳しいものでしたから、それに付随したいくつかのことが記憶の中に強烈に刻みこまれているのですが、その一つがタマアジサイ。上三依の植物園に植栽されているタマアジサイ、岩場に張り付いている当時の景観とはまるで異なりますが、つい当時の思い出がよぎってしまいます。よくよく見ると藤色の優しい色彩で初夏に見るものとは異なり控えめです。装飾花もあまり目立ちません。むしろ、花よりつぼみに目が向いてしまいます。
花だけ見ていれば「アジサイ」で、それで終わってしまいそうなのです。しかし、つぼみを認識すると「変わったアジサイ」となります。最も関東圏や甲信地域の人は普通のアジサイなのかもしれません。経験的にこの地域に出向くと比較的普通にある種のように見受けられます。つぼみは総苞に包まれて大きくなり、開花するまで総苞は残ります。ほかのアジサイが早くに総苞が無くなって個々の小さなつぼみが広がるように開花しますから、とても変わった習性のように見受けられます。