<まないたさま>
古くから水神をお祀りする聖地として
また婦人病への霊験あらたかな信仰の場として、
女性たちからの厚い信仰を集める「まないたさま」は、
近年はスピリチュアルスポットとしても周知される、
民間信仰の色合いが強い場所です。
ちなみに「まないた」の語源は、
美しい水をあらわすマナイト(真名井戸)が
転訛したものだと言われており、
実際にまないたさんの聖域は、
産田川の源流部分に位置しています。
「山道をひたすら下ったところにある」
という話までは聞いていたのですが、
実際に入り口に立ってその地形を確認しますと、
想像をはるかに越えるほどの傾斜の崖道が続き、
どこまで降りれば谷底につくのかも確認できません。
一日の生活が動き出したばかりの午前6時過ぎ、
その付近には一軒の民家があるのみで、
遠くの木々の間を駆け抜けようとした鹿の親子が、
「まさかこの時間に人間に見つかるとは」といった表情で、
驚いたように立ち止まり、こちらのほうを見ています。
冷気を含んだ早朝の風が竹林の中を吹き抜け、
サラサラと乾いた音を立てる中、
私の脳裏には「行きはよいよい帰りは怖い…」 という、
とうりゃんせの歌だけが、
グルグルとリピート再生し続けていました。