<中山神社 なかやまじんじゃ>
昨日ご紹介した、美作国一の宮・中山神社に伝わる話以外にも、
『中山神社縁由』の中には、「地主神であるオオナムチは、
中山神にこの地を譲り、境内の祝木(いぼき)神社、
あるいは国司(くにし)神社に退かれた」
という一節が記されています。
現在、中山神社に祀られるの神は「鏡作神」ですが、
もしかするとそれ以前は「金山彦神」、
さらに古くは「オオナムチ」が祀られていた
可能性もありそうですね。
オオナムチから土地を譲られた(奪った)金山彦神は、
出雲の金屋子神とも同一視される存在ですし、
もしかするとこの美作国でも「新旧のタタラ部族」
の争いが勃発していたのかもしれません。
また、日本書紀の中では、
「天岩戸隠れの際、石凝姥という鍛冶屋が、
香具山の金(かね)を採って日矛(ひほこ)を作り、
真名鹿(まなか)の皮を丸ごと剥いで、
天羽鞴(あめのはぶき)を作った」という記述があります。
「天羽鞴」は「鞴(ふいご)」と呼ばれる、
鉄を熱したり銅を熔かしたりする送風装置のことで、
炉に空気を送り込み炭を勢いよく燃やすために用いられました。
つまり、オオナムチと中山神(金山彦神)との国譲りにおいて、
中山神(の眷属神)が乙麿に命じたのは、
製鉄機械の材料となる「鹿」を献上することだったのでしょう。