<真砂・宝山神社 *まなごほうざんじんじゃ>
宝山神社があるのは、古座川・真砂地区の
すでに廃村となった集落の中心部です。
山の斜面にへばりつくようにして作られた
自然石の階段を一気に上がっていくと、
一目で無人とわかる寂れた集落に入りました。
主が住んでいた頃の家財道具が残る、
荒れ果てた民家の脇を通り抜け、
さらに奥へと足を進めた先に見えてきたのは、
楚々とした佇まいの朱の鳥居です。
引き寄せられるように近づいてみれば、
そこは廃村の神社とは思えないほど、
掃除の行き届いた清潔な神域がありました。
苔むした石段には落ち葉ひとつなく、
鳥居の周りもきれいに掃き清められており、
一見して地元の人たちの手で、
手厚く守られていることがわかります。
このように土地に暮らす人々の努力により、
大切にお祀りされている神社を目の前にしますと、
「人がいてこそ神社が成り立つ」という真実が、
はっきりと理解できるのです。
周囲を廃墟に囲まれる中、
小高い山の周辺の一角だけが、
命を宿すかように静かに呼吸をしていました。