<南三陸町・戸倉地区>
南三陸町という名称を聞きますと、
多くの人が思い浮かべるのが、
津波の威力により、骨組みだけを残して倒壊した
町の防災庁舎の姿ではないかと思います。
石巻と気仙沼の間に位置する南三陸町は、
最も大きかった戸倉地区の津波高が約20m、
犠牲者・行方不明者は合わせて800人を超え、
市街地がすべて更地になってしまうほど、
甚大な津波被害を受けた地域のひとつです。
石巻から南三陸町へは、国道45号線で一度内陸部に入り、
山を越えて海岸沿いへと向かうルートを取ったのですが、
海に近づき視界が開けると同時に見えてきたのは、
レールのない駅舎と、川にかかる壊れた橋げたでした。
遠くで動く重機の音やプレハブ商店の灯りが、
かろうじて人の気配を伝えており、
震災前の景色を知らないよそ者にとっては、
そこに町があったことすら想像できないほど、
何もない地面だけが延々と続いていました。