<十二湖の森>
今回の旅で、どうしても外せないと考えていたのが、
青森周辺の「森」の散策でした。
まあ、散策と申しましても、
本格的な登山をするわけではなく、
縄文遺跡を取り巻く「森」に足を踏み入れることで、
少しでも「縄文人」の息遣いに
触れたいと思ったのですが、
実際に鳥のさえずりや葉擦れの音だけが聞こえる、
誰もいないブナの原生林で、
静かに深呼吸を繰り返しておりますと、
縄文時代に生きた人々が、
なぜこのような稀有な文化を維持できたのか、
なぜ他人との争いを最小限に抑えることができたのか、
少しだけわかるような気がいたしました。
恐らく、縄文の人々は「自分は森(自然)であり、
森(自然)は自分である」ということを、
理屈ではなく直感で気づいていたのでしょう。
そして「自分は他人であり、他人は自分である」
という真実も、同じように理解していたのだと思います。
森の中にひとりでたたずんでいるとき、
まるで自分と森とが一体化したような感覚に陥り、
人間であるはずの自分と、自然であるはずの森との
境界線が不明瞭になりました。
自然を痛めつければ自分が荒れる、
他人を痛めつければ自分が傷つく……、
現代人である私たちはこの「自然の摂理」
を忘れているのかもしれません。