<穴見海岸展望所>
***** 鉄の神々4但馬・ヒボコ *****
翌日、日の出前にホテルを出発し向かったのは、
日本海沿いの港町にある神社です。
しかしながら、右も左もわからない未踏の土地を、
まだ夜も明けきらぬ暗闇の中、
手探りで車を走らせるというのは、
なかなかに緊張感を伴うひとときでして、
この日も唯一の水先案内人である、
ナビの灯りだけを頼りにハンドルを握っているうちに、
いつの間にか予定にはなかった
高速道路に乗っていた模様……。気が付けば目の前には、
まるで藤城清治が創り出す影絵の世界のように、
薄桃色に染まった空とモノトーンのグラデーションが
印象的な朝の日本海が広がっていました。
普段、慌ただしく日常生活を送っておりますと、
朝日の輝きや夕暮れ時の空の色、
風のそよぐ音や雨が降り出す前の独特の湿気……等々、
ちょっとした景色の変化などつい見逃してしまうもの。
ただし、ひとたび旅に出た瞬間、
こうした何気ない自然の色合いが、
「今だけしか見られない貴重な一瞬」だと気付きます。
大げさではなく、「この景色を見るためにここに来た」と、
実感するひとコマが幾度となく用意されているのですね。
特に日本という国には、ただ美しいだけの場所は存在せず、
その中に「神の気配」を感じられる
稀有な国柄なのだとつくづく思います。
【このシリーズの参考書籍・文献・サイト】
古代の鉄と神々 ~真弓常忠
風土記からみる古代播磨 ~坂江渉 他
民族・地名そして日本 ~谷川健一
青銅の神の足跡 ~谷川健一
鹿と鳥の文化史 ~平林章仁
海峡を往還する神々 ~関裕二
全国一の宮徹底ガイド ~恵美嘉樹
『御霊神』の誕生 ~伊藤信博
たじまネット風土記