農水省が「備蓄米放出」の入札結果を公表も不十分…人気の“ブランド米”値下げ効果は未知数に
日刊ゲンダイDIGITAL3/18(火)9:26

【別表】【放出備蓄米の上位10品種】=農水省入札公告を基に日刊ゲンダイ集計/(C)日刊ゲンダイ
農水省は14日、コメ価格の高騰を受けた政府備蓄米放出の入札結果の概要を公表した。初回の入札数量約15万トンの平均落札価格は60キロ(1俵)あたり2万1217円となった。
備蓄米放出の公表後もコメ高騰に歯止めはかからず、全国のスーパーで2月24日〜3月2日に販売されたコメ5キロあたりの平均価格は3952円。前週から13円値上がりし、9週連続で上昇中だ。前年同期に比べ1922円も高く、上昇率は94.6%とほぼ倍増である。
コメ価格の指標となる「相対取引価格」(集荷業者の卸売業者への販売価格)は直近1月分で、60キロあたり2万5927円。今回の平均落札価格に消費税分を加えても、直近の相対取引よりも約3000円ほど安い。さらに流通コストが乗り、卸売業者を経て小売業者に売り渡され、3月下旬にも店頭に並ぶ見通し。
コメ高騰が収まれば、備蓄米放出は大成功と言えるが、不安は拭えない。今回、放出する備蓄米は、24道県が産地の計41品種に上る。入札対象は産地・品種・数量・保管倉庫の場所などで細かく分類され、ロット数は469に達する。ところが、農水省が公表したのは、あくまで全体の平均落札価格のみ。どの品種にどれだけの値が付いたのか、詳細な内訳はオープンになっていないのだ。
〈別表〉は農水省の入札公告をもとに、日刊ゲンダイが集計した放出備蓄米の上位10品種だ。全国の作付けシェア33.1%(2023年産)で断トツのコシヒカリの放出量は全体の7.2%。人気の新潟産に絞ると、1.8%まで下がる。また、8位以下には全国的には、なじみの薄い品種が並ぶ。
なじみの薄い品種が平均落札価格を押し下げた可能性も
「知名度の低い品種が、全体の平均落札価格を押し下げたことも考えられます。そうしたコメは、産地や品種の異なる複数のコメを混ぜた『ブレンド米』として主に外食・中食向けに割安で販売される。安価なコメ調達に悩まされた外食チェーンなどは大歓迎でしょうが、人気品種の落札価格が分からない以上、スーパーで見かけるコシヒカリなど『ブランド米』の値下げ効果は未知数です」(コメ卸売関係者)
農水省はコメ高騰の要因を「先高観を見越した小規模の集荷業者や農家が在庫を抱え込んでいる」と分析してきたが、そもそも24年産を「平年並み」とした作況指数の算出に疑問が残る。「国内需要を満たす生産量が確保されていない」との専門家の指摘もある。
米価を安定させるためにも生産量アップは待ったなし。政府は事実上の減反政策をやめるべきだ。
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1995年の食糧管理法廃止で、政府はそもそも実際のコメの流通量を把握しきれなくなっているとのこと。今回の備蓄米放出でスポット価格が下がらなかった場合、農水省の推定生産量そのものが間違っている可能性が。●関連記事【もっと読む】『備蓄米放出でもコメ価格は高止まり…怪しくなってきた農水省の「実態把握」』で詳報している。
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