『 環境省は17日、新潟県の佐渡トキ保護センターで飼育中の1歳の雌のトキ1羽が、ドジョウの過食によるビタミン不足とみられる症状で倒れたと発表した。このトキは今年1月にも同様の症状で倒れた個体だった。ほぼ回復しているという。』(産経新聞)
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疲れに関する役立つ情報を毎月発信します。(2011年6月15日公開分)Vol.12 トキにもビタミンB1が大切!?はじめに
みなさん、トキ(朱鷺)をご存知でしょうか。
知らない人はいないと思われますが、トキは学名Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)といい、 コウノトリ目トキ科の鳥です。19世紀までは日本・中国など東アジアに広く分布していましたが、乱獲や環境の変化等により日本産のトキは2003年に絶滅(正確には、野生絶滅)してしまいました。現在では日本産と同一種の中国産のみとなり、日本は中国からツガイの2羽を受け入れて佐渡トキ保護センターで1999年から人工繁殖を開始、2011年3月時点で140羽まで増えています。
原因はトキの偏食?
人工繁殖によって増えたトキは2008年より放鳥を開始していますが、本年3月、放鳥に向け野生復帰訓練中のトキに「飛行中にバランスを崩す」、「池に落ちて溺れる」、「ふらつく」などの異常行動が認められたとの報道がありました。優雅に飛行し歩き回るトキに一体何が起きたのでしょうか。
理由は、トキの好き嫌い、つまり偏食にあったようです。
トキはクチバシの触覚が発達しており、野生ではそれを湿地や田んぼなど泥の中にさしこみ、ドジョウやカエルなどを捕食するのですが、訓練中は好物のドジョウばかり食べていたようです。
偏食でビタミンB1不足に!
ドジョウ、コイなどの淡水魚にはビタミンB1を分解する酵素アノイリナーゼ(※1)が含まれていて、トキのようにドジョウばかり偏食すると、ビタミンB1が分解・欠乏してしまい、脚気(かっけ)(※2)
症状が発現してしまいます。この結果、飛行や歩行に障害を起こすことがあるのです。
幸いなことに、このような症状を呈した個体にビタミンB1を注射したところ、すぐに元気になり、訓練を再開できたとのことした。
※1 アノイリナーゼ(チアミナーゼ):ビタミンB1(チアミン)分解酵素で、淡水魚(コイ、フナ、ドジョウなど)、二枚貝(アサリ、ハマグリ、シジミなど)、シダ類(ワラビ、ゼンマイなど)に含まれるが、加熱により分解される
※2 脚気:ビタミンB1欠乏症の一つで、ビタミンB1の欠乏によって全身の倦怠感、食欲不振、むくみ、しびれなどをきたす病気である。症状として、下肢(脚)の「むくみ」・「しびれ」・「腱反射の低下」などが起きることから「脚気」の名で呼ばれる。心臓機能の低下・不全を起こしたときは「脚気衝心(かっけしょうしん)」と呼ばれる。
食生活を見直してみよう
この脚気、昔は人間においてもよく見られたもので、日本では江戸時代に「江戸わずらい」として、また大正時代には2万人以上の死者がでて「国民病」とまでいわれました。しかしながら、その原因がビタミンB1の欠乏であることが突き止められ、フルスルチアミンをはじめとするビタミンB1誘導体の普及によって、現在ではほとんど見かけることはなくなりました。
ただ、栄養が十分になった現代でもビタミンB1の潜在性欠乏(脚気まではいかないがその手前の状態)があるといわれています。その症状は「疲れやすい」や「朝起きるのがつらい」といったものがありますので、そのような症状がある場合には、食生活を見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
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