自分の信念に従って、体を張って生きていく、そんな勇気を持ちたいと思う。
こんな歳になっても、まだ間に合うのだとしたら、そんな「生き様」で日々を送ってみたいものだ。
「既に報道されていますが、昨日(11月7日)、東京高裁で、元都立特区別支援学校の河原井純子さんの差し戻し控訴審判決がありました。それによると<停職1月の処分>に対し、
・「裁量範囲を超えるものとして違法」、
・「処分により・・被った精神的苦痛に対する慰謝料は、30万円とするのが相当」、とする判決を下しました。
判決文を読むと、大きく以下のような特徴があったと思います。 ①基本的には昨年6月と今年1月に出された 最高裁判決を土台にして書かれていること、 ②しかし、今回の判決では、「日の丸・君が代」法制化時(1999年) の政府答弁がかなり大きな判断材料とされていること、 ③教育実践との関係で損害賠償を認めたこと、などです。①についての判決文紹介は省略します。②については、次のような組立で 当時の政府答弁が紹介されています。
(ア)国旗・国歌の法制化の意義について
(イ)法制化による、今後の学校における指導について
(ウ)児童・生徒の内心の自由との関係について
(エ)指導に係る教職員の職務と内心の自由との関係について
(オ)教職員への職務命令や処分について以下順番に、それぞれの資料を紹介します。
(ア)「政府としては、今回の法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や 変化が生ずることとはならないと考えている」(1999,6,29 内閣総理大臣)
(イ)「法制化に伴い、学校教育における国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではないと考えており、今後とも、 各学校における適切な指導を期待するものであります。」(同日 内閣総理大臣 同旨文部大臣)
(ウ)二つありますが、内閣総理大臣の答弁(1999,7,21)は省略。「単に従わなかった、あるいは単に起立をしなかった、あるいは歌わなかったといったようなことのみをもって、何らかの不利益をこうむるようなことが学校内で行われたり、あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導が行われるということはあってはならない。」(同日 政府委員)
(エ)「教員は、関係の法令や上司の職務上の命令に従いまして教育指導を行わなければならないものでございまして、各学校においては、法規としての性質を有する学習指導要領を基準といたしまして、校長が教育課程を編成し、これに基づいて教員は国旗・国歌に関する指導を含め教育指導を実施するという職務上の責務を負うものでございます。・・・これ(本法案)によって国旗・国歌の指導にかかわる教員の職務上の責務について変更を加えるものではございません。」(1999,8,2 文部大臣)
(オ)ここには四つの資料が紹介されています。「(前半略)・・校長は、学校運営の責任者として学習指導要領の趣旨を実現するために、必要に応じ教員に対し職務命令を発することもあり得るものでございます。」(同日 政府委員)「職務命令というのは最後のことでありまして、その前に、さまざまな努力ということはしていかなきゃならないと思っています。」(同月6日 文部大臣)「(前半略)・・実際の処分を行うかどうか、処分を行う場合にどの程度の処分にするかにつきましては,基本的には任命権者でございます都道府県教育委員会の裁量にゆだねられているものでございまして、任命権者である都道府県におきまして、個々の事案に応じ、問題となる行為の性質、対応、結果、影響等を総合的に考慮して適切に判断すべきものでございます。・・・なお、処分につきましては、その裁量権が乱用されることがあってはならない」(同日 政府委員)「教育の現場というのは信頼関係でございますので、・・・処分であるとかそういうものはもう本当に最終段階、万やむを得ないとき というふうに考えております。このことは、国旗・国歌が法制化された時にも全く同じ考えでございます。」(同日 文部大臣)
その上で判決文では以下のように述べています。
「国会では、教員の職務上の責務については変更は加えられないこと、 処分は、問題となる行為の性質、対応、結果、影響等を総合的に考慮し 適切に判断すべきこと、処分は、万やむを得ないときに行われるべきことが 答弁されていたのであるから、機械的、一律的な加重は慎重であることが 要請されていたということができる。・・不起立行為に対して戒告、減給から 停職処分へと機械的、一律的に加重していくことは、教員が2,3年間不起立を することにより、それだけで停職処分を受けることとなるのであり、 その結果、自己の歴史観ないし世界観に忠実な教員にとっては、 不利益の増大を受忍するか、自らの信条を捨てるかの選択を 迫られる状況に追いやられることも考慮すべきである。」こうした判断から、判決文では次のように述べています。(ここでは、「国家賠償法上も違法」ということが付け加えられてます。) 「停職処分を選択した都教委の判断は、停職期間の長短にかかわらず、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当性を欠き、 上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法である。この違法は、停職処分を取り消すべき違法であるのみならず、不起立行為の性質、実質的影響、停職処分の不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に 違反しているというべきであり、国家賠償法上も違法である。」③については、「国家賠償法」とも関わり、次のような記述があります。 「減給は、戒告と異なり給与上の不利益があり、 停職は、減給とは異なり単に給与上の不利益があるのみならず、一定の期間職務が停止されるという職務上の不利益が存する。 ・・・特に、養護学校では、教諭と児童生徒との人格的触れ合いが 教育活動に欠かすことのできないものであると考えられるところ、証拠(・・)によれば、控訴人(河原井さんのこと)は、児童生徒との触れ合いを特に重視していたと認めされることを考慮すると、財産的損害の回復のみによっては、控訴人の精神的損害が 慰謝されるものでないことは明らかである。」以上のように、今回の判決はまだ最高裁判決の枠<不起立での戒告処分と、根津さんの停職3か月処分についても認めている>を出ていないものの、「日の丸・君が代」法制化時まで戻ったということでは、この間の東京都の多くの仲間たちの闘いの成果であったと言えるでしょう。尖閣諸島購入問題で日中関係を破壊し、戦争の危険性さえもたらした挙句、無責任に都政を投げ出した石原は「暴走老人」と呼ばれ、ようやくその責任追及の声が上がりはじめていますが、今回の判決により、彼と彼の取り巻きに対する批判はさらに強まっていくでしょう。また、今回の判決は「日本維新の会」の橋下大阪市長やそのいいなりになって「日の丸・君が代」を強制する大阪府・市教育委員会に対しても大きな打撃となっていくでしょう。」(レイバー日本・渡部さんのレポート)
「南敏文裁判長が主文・判決理由を読み終わると、満員の傍聴席から期せずして大きな拍手が起きた。今年1月最高裁で1ヶ月の停職処分が取り消され、東京高裁に差し戻されていた河原井純子さん(東京都立特別支援学校元教諭)の損害賠償請求裁判の判決が11月7日出た。南裁判長は、「不起立への処分は、思想・良心の自由に影響を与えるもので、機械的、一律的に行うべきではない」として都教委の過失を認めた。また、「養護学校では、教諭と児童生徒の人格的触れ合いが教育活動には欠かすことができず」、河原井さんは特にこのことを重視していた。停職処分による精神的苦痛は、未払い給与の支払いだけではすまされないとして30万円の賠償を都に命じた。「君が代」裁判で損害賠償が認められたのは初めて。思想・良心の自由、また教育実践への影響に踏み込んだ判決は、注目すべきだ。
判決後、河原井さんは、「35年間、おかしいことはおかしいと言おうとこどもたちに言ってきた。だから起立の強制には服従できなかった。いま教育の現場ではものを言う自由がなくなっている。今日の判決が、教員たちの背中を押すきっかけになればといい」と語った。」(レイバー日本・佐々木有美)
こんな歳になっても、まだ間に合うのだとしたら、そんな「生き様」で日々を送ってみたいものだ。
「既に報道されていますが、昨日(11月7日)、東京高裁で、元都立特区別支援学校の河原井純子さんの差し戻し控訴審判決がありました。それによると<停職1月の処分>に対し、
・「裁量範囲を超えるものとして違法」、
・「処分により・・被った精神的苦痛に対する慰謝料は、30万円とするのが相当」、とする判決を下しました。
判決文を読むと、大きく以下のような特徴があったと思います。 ①基本的には昨年6月と今年1月に出された 最高裁判決を土台にして書かれていること、 ②しかし、今回の判決では、「日の丸・君が代」法制化時(1999年) の政府答弁がかなり大きな判断材料とされていること、 ③教育実践との関係で損害賠償を認めたこと、などです。①についての判決文紹介は省略します。②については、次のような組立で 当時の政府答弁が紹介されています。
(ア)国旗・国歌の法制化の意義について
(イ)法制化による、今後の学校における指導について
(ウ)児童・生徒の内心の自由との関係について
(エ)指導に係る教職員の職務と内心の自由との関係について
(オ)教職員への職務命令や処分について以下順番に、それぞれの資料を紹介します。
(ア)「政府としては、今回の法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務付けを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や 変化が生ずることとはならないと考えている」(1999,6,29 内閣総理大臣)
(イ)「法制化に伴い、学校教育における国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではないと考えており、今後とも、 各学校における適切な指導を期待するものであります。」(同日 内閣総理大臣 同旨文部大臣)
(ウ)二つありますが、内閣総理大臣の答弁(1999,7,21)は省略。「単に従わなかった、あるいは単に起立をしなかった、あるいは歌わなかったといったようなことのみをもって、何らかの不利益をこうむるようなことが学校内で行われたり、あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導が行われるということはあってはならない。」(同日 政府委員)
(エ)「教員は、関係の法令や上司の職務上の命令に従いまして教育指導を行わなければならないものでございまして、各学校においては、法規としての性質を有する学習指導要領を基準といたしまして、校長が教育課程を編成し、これに基づいて教員は国旗・国歌に関する指導を含め教育指導を実施するという職務上の責務を負うものでございます。・・・これ(本法案)によって国旗・国歌の指導にかかわる教員の職務上の責務について変更を加えるものではございません。」(1999,8,2 文部大臣)
(オ)ここには四つの資料が紹介されています。「(前半略)・・校長は、学校運営の責任者として学習指導要領の趣旨を実現するために、必要に応じ教員に対し職務命令を発することもあり得るものでございます。」(同日 政府委員)「職務命令というのは最後のことでありまして、その前に、さまざまな努力ということはしていかなきゃならないと思っています。」(同月6日 文部大臣)「(前半略)・・実際の処分を行うかどうか、処分を行う場合にどの程度の処分にするかにつきましては,基本的には任命権者でございます都道府県教育委員会の裁量にゆだねられているものでございまして、任命権者である都道府県におきまして、個々の事案に応じ、問題となる行為の性質、対応、結果、影響等を総合的に考慮して適切に判断すべきものでございます。・・・なお、処分につきましては、その裁量権が乱用されることがあってはならない」(同日 政府委員)「教育の現場というのは信頼関係でございますので、・・・処分であるとかそういうものはもう本当に最終段階、万やむを得ないとき というふうに考えております。このことは、国旗・国歌が法制化された時にも全く同じ考えでございます。」(同日 文部大臣)
その上で判決文では以下のように述べています。
「国会では、教員の職務上の責務については変更は加えられないこと、 処分は、問題となる行為の性質、対応、結果、影響等を総合的に考慮し 適切に判断すべきこと、処分は、万やむを得ないときに行われるべきことが 答弁されていたのであるから、機械的、一律的な加重は慎重であることが 要請されていたということができる。・・不起立行為に対して戒告、減給から 停職処分へと機械的、一律的に加重していくことは、教員が2,3年間不起立を することにより、それだけで停職処分を受けることとなるのであり、 その結果、自己の歴史観ないし世界観に忠実な教員にとっては、 不利益の増大を受忍するか、自らの信条を捨てるかの選択を 迫られる状況に追いやられることも考慮すべきである。」こうした判断から、判決文では次のように述べています。(ここでは、「国家賠償法上も違法」ということが付け加えられてます。) 「停職処分を選択した都教委の判断は、停職期間の長短にかかわらず、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当性を欠き、 上記停職処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法である。この違法は、停職処分を取り消すべき違法であるのみならず、不起立行為の性質、実質的影響、停職処分の不利益に対する考慮が尽くされていないという意味で職務上通常尽くすべき注意義務に 違反しているというべきであり、国家賠償法上も違法である。」③については、「国家賠償法」とも関わり、次のような記述があります。 「減給は、戒告と異なり給与上の不利益があり、 停職は、減給とは異なり単に給与上の不利益があるのみならず、一定の期間職務が停止されるという職務上の不利益が存する。 ・・・特に、養護学校では、教諭と児童生徒との人格的触れ合いが 教育活動に欠かすことのできないものであると考えられるところ、証拠(・・)によれば、控訴人(河原井さんのこと)は、児童生徒との触れ合いを特に重視していたと認めされることを考慮すると、財産的損害の回復のみによっては、控訴人の精神的損害が 慰謝されるものでないことは明らかである。」以上のように、今回の判決はまだ最高裁判決の枠<不起立での戒告処分と、根津さんの停職3か月処分についても認めている>を出ていないものの、「日の丸・君が代」法制化時まで戻ったということでは、この間の東京都の多くの仲間たちの闘いの成果であったと言えるでしょう。尖閣諸島購入問題で日中関係を破壊し、戦争の危険性さえもたらした挙句、無責任に都政を投げ出した石原は「暴走老人」と呼ばれ、ようやくその責任追及の声が上がりはじめていますが、今回の判決により、彼と彼の取り巻きに対する批判はさらに強まっていくでしょう。また、今回の判決は「日本維新の会」の橋下大阪市長やそのいいなりになって「日の丸・君が代」を強制する大阪府・市教育委員会に対しても大きな打撃となっていくでしょう。」(レイバー日本・渡部さんのレポート)
「南敏文裁判長が主文・判決理由を読み終わると、満員の傍聴席から期せずして大きな拍手が起きた。今年1月最高裁で1ヶ月の停職処分が取り消され、東京高裁に差し戻されていた河原井純子さん(東京都立特別支援学校元教諭)の損害賠償請求裁判の判決が11月7日出た。南裁判長は、「不起立への処分は、思想・良心の自由に影響を与えるもので、機械的、一律的に行うべきではない」として都教委の過失を認めた。また、「養護学校では、教諭と児童生徒の人格的触れ合いが教育活動には欠かすことができず」、河原井さんは特にこのことを重視していた。停職処分による精神的苦痛は、未払い給与の支払いだけではすまされないとして30万円の賠償を都に命じた。「君が代」裁判で損害賠償が認められたのは初めて。思想・良心の自由、また教育実践への影響に踏み込んだ判決は、注目すべきだ。
判決後、河原井さんは、「35年間、おかしいことはおかしいと言おうとこどもたちに言ってきた。だから起立の強制には服従できなかった。いま教育の現場ではものを言う自由がなくなっている。今日の判決が、教員たちの背中を押すきっかけになればといい」と語った。」(レイバー日本・佐々木有美)