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『パラレル同窓会』岐路の分だけ

2023年12月30日 00時58分04秒 | こんな本を読みました
『絶望書店』頭木弘樹 河出書房新社に収録
1500+悪税
藤子-F-不二雄作
人生の岐路の数だけ、世界が存在しているという想定。
その数限りない世界の「同窓会」で、未来の「私」と出会うというストーリー。おそらく、「人生の岐路」については、例外なく誰もが持つにちがいない。本来ならば、その数など、無限であるに違いない。
昨日1日を考えてみれば、「朝、目覚ましで起きなかった場合、私の未来はどう変わっていたのか」「起きたその足でセブンイレブンに行き、朝刊とホットコーヒーを買わなかったら」「アイスコーヒーだったら、どう変わっていたのか」「いや、セブンイレブンでなく、少し離れたローソンに行っていたら」「間違えて休みのはずの学校に行ったら」
きりがないくらいの「岐路」による未来の数があるはずだ。
「人生の岐路」としても、その尺度は曖昧で、かなり自分勝手なものだ。
まあ、そんな厳格には考えずに、楽しく読むことにしよう。

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おすすめ二冊

2023年12月28日 23時27分58秒 | こんな本を読みました
だらだら寝ていて読んだ二冊。
どちらも、いい出会いだと、幸せな心地になれたもの。ぜひ、どうぞ。
『サキの忘れ物』津村記久子 新潮文庫 590+悪税
短編集、心が浄化される、なんて書いたら誉めすぎかもしれないが、私には『小僧の神様』と同じくらい素敵な作品群であった。

『環と周』よしながふみ 集英社
748+悪税
コミック。こちらもよくできた五つの物語。「周」と「環」の二人が主人公だが、話ごとに、時代も設定も異なり、したがって人物も違う。表紙に「さまざまな関係性 好きのかたち」とあるように、この二人の関わりを描いている。こちらも、心理描写に優れ、二話では目に涙を溜め込んでしまった。コミックで泣いたことなんかなかったのに。

どちらも、よかったですよ!
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『自分以外全員他人』西村亨

2023年12月27日 14時40分32秒 | こんな本を読みました
紋切り型の「良心的」小説でなく、主人公の柳田の、発作的な「人にやさしくしたい」という思い、それと同じくらいに生じる「怒り」「暴力性」「違和感」「孤独感」「自己嫌悪」。そのどれもが、読者に、「あ、それ、そうそう」「自分しか思ってないと感じてた」と共感させる筆力を持つ。私も然り。
柳田とともに、145ページの行間を歩いた。
だから、だからこそ、「破滅」で終わらせてほしくなかった。
希望の光を照らすのは、「ダサい」のだろうか。
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「日本の冤罪」尾﨑美代子

2023年11月04日 23時30分07秒 | こんな本を読みました
大阪の居酒屋のオーナーの、「紙の爆弾」に連載された記事をまとめたもの。
その正義感や、取材への執念には、学ぶべきものが多い。
しかも、大学の後輩ではないか。5歳年下の彼女であるから、学内で会うことはなかったが、できれば一年でも重なっていてほしかった。彼女は「中退」とあるので、なおさら、そう感じるのかもしれない。
湖東記念病院事件、東住吉事件、布川事件、日野町事件、泉大津コンビニ窃盗事件など、16の冤罪事件について、国、警察、検察、裁判所のウソ、すり替え、隠蔽を暴いてみせる。
甘く見てはいけない権力の恐しさを暴露したものとして、たくさんの方に読んでほしいと願う。

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「KUNIO VAN PRUISSEN」乙川優三郎

2023年10月29日 21時45分37秒 | こんな本を読みました
 残り10ページとなり、いったん本を閉じてしまった。
 久しぶりの感覚である。
 主人公の青年期から晩年(と言うのには無理があるが)までを、たった221ページに収めるには、重く、多彩すぎる内容である。
 本の中では、中年の記述が少なく、すぐに「死」を意識する齢となる。それが唯一の不満な点である。
 
 いつも書いていることだが、人の一生をどれだけ重く、また唯一無二のものとして書いてくれるか。私はいつも小説に期待していることである。
 その点からすれば、乙川氏の小説は、それを満たしてくれるし、読後に、私の心を重くしてくれもする。
 
 しばらくは、私は「クニオ」として生きていくだろう。
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『父を焼く』山本おさむ

2023年10月20日 22時08分13秒 | こんな本を読みました
親子ものには、めっぽう弱い。
現在の自分は、両親が築いた生活が土台により育まれたものであり、誰しもそこからは逃れることはできない。
だからこそ、感謝も、悲哀も、同時に生まれてくるのだ。しかも、その感情は、まったく個々、十人十色であり、それを理解できるのは本人しか存在しない。
本書もしかり、内容的には、私と同期、共鳴する箇所は、半々というところか。
本書の父親の顔が、私の父に似ていたことが、一番の共鳴部分。
悪くはないが、私には、少しばかり隔たりが大きすぎた。
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「水曜の朝、午前三時」蓮見圭一

2023年10月01日 06時34分06秒 | こんな本を読みました
サイモンとガーファンクルの同名。歌詞と小説のシンクロを意識したものであろうが、私にはピンと来なかった。アルフィーにも同名の曲があったような。
別の題名でもよかったのに。
小説自体は、三日で読み終えるほど引き込まれた。大阪万博は、私が高一で長野の「学生村」に同級の荒木くんと行ったときに開かれていたもの。
興味はあったが、行くことはなかった。
「別れる」ことと「別れられない」思いは、恋愛小説の王道なのだろうが、その切なさは、誰しも似たような経験があるから、なおさら切なく読めるのだろう。
今回は、登場人物と自分と重ねて読んだせいか、読後感は「疲れた」(笑)
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『美しき人生』蓮見圭一

2023年09月18日 07時00分26秒 | こんな本を読みました
こんな恋愛ができたら素敵だなという典型的小説。素直に読み、素直に感動。
もちろん不満もある。
やはり相手の死を結末にしてほしくなかった。それとも関連するが、生きた者同士の成長物語にして欲しかった。二人は離れて暮らす、さらに最後の永遠の別離。もっとどろどろとしながら、関係を深めて欲しかった。(ネタバレすみません)
ついでに言うと、「現在のパートナー」。そうあってもしかるべきだが、やはり経過の記述がないので、無理があるかな。
いくつかの不満はありながら、読後感はよかった。
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窪美澄「タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース」

2022年12月27日 06時10分07秒 | こんな本を読みました
人と繋がることが、救いとなり、また強くもなれる。
なんて優しい心をもった小説だろう。
老朽化した団地を舞台に、それぞれ弱みや過去をもった四人が、結びつき、守りあい、強くなっていく。
今年最後に読む小説となるだろうが、読みきってよかった。
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「灰色の瞳」佐川光晴

2022年08月01日 21時19分21秒 | こんな本を読みました
 3日ほどで読み終えたが、そしてよく取材されたと感銘を受けるものの、最後の展開が、私の嫌うものであったために、後味の悪い印象を残したままで、本棚に戻すこととなった。もちろん最後まで読んでの上で。
 最後は光を照らしてほしかった。
 千明と礼子をぶつけてほしかった。
 逃げて余韻、を結末にしてほしくなかった。
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十勝子ども白書をぜひ

2022年07月30日 05時48分35秒 | こんな本を読みました
すてきな本と出会った。
十勝子ども白書2021。
地に足がついているとでも言うのだろうか、執筆者の意気込みと、問題意識の鋭さに脱帽してしまう。
コロナ関連では、一斉休校についてのアンケート、学校対応などが、ていねいにまとめられている。児童憲章や権利条約にある、子どもの生きる権利や育つ権利、守られる権利、参加する権利を基調とする編集の姿勢も共感。
十勝管内の自治体における子ども支援策の一覧などは、学校の下請け機関に成り下がっている、うちのPTAがやればいいのにと切に思う内容だ。
教員にも、親にも、薦めたい本との出合い。
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「彼女が知らない隣人たち」あさのあつこ

2022年06月29日 01時03分49秒 | こんな本を読みました
角川書店
久しぶりに1日で一気読み。
かつて大学時代に、恋愛論議を熱く繰り返したことを思い出す。「恋愛は、互いに見つめ合うことではなく、同じ方向を見ることだ」。そんなことを私はひたすら唱えていたように思う。そしてそれは、今も変わらない思いでいる。少し変化はしたかな。not butではなく、andへ。 
男女として(今はパートナーとして、と言う方がより正しいのかも知れない)惹かれ合うとともに、やはり価値観も共有したい、または互いに成長し、共感できる関係を続けていきたい。
社会的な存在として生きていく上で、せめて世の中を見る目、この世の中でどう生きていくかについては、共有したものを持っていたいと思う。
たやすく別れないで、恋愛を続けていく必要条件だと思い続けてきた。

この小説は、親子関係、夫婦、難民、パートの雇用、ヘイト、同調圧力などの現代的なテーマが散りばめられ、「あなたならどう考える?どうする?」と突きつけられる場面が山ほど読者に迫る。
展開の最後には、光が垣間見え、救われる結末なのだが、現実にはこのような終わり方はまずないだろう。
あさのさんの善意が生み出した「幕」。おそらくは、まだ幕は下りないまま、現世は複雑に展開していくのだろう。
うまくまとまらない感想。
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「未練」 佐藤洋二郎

2022年06月24日 19時48分21秒 | こんな本を読みました
 16の短編からなる。
 2冊続けて、歳を重ねた登場人物にまつわるものとなってしまった。
 妻にラインで、「適当に、私の座っているあたりに積まれてある中から」選んでほしいと頼んだのだから、偶然なのだろう。
 いや、すでに私の座席の周りには、この類の書籍が多数を占めてきているのかもしれない。高い確率の結果か。
 (私が一つの部屋に籠って、3日目となっている。厄介なものが私の中に入り込んだからだ)

 どの短編にも、「煙草」が登場する。名脇役である。
 どれも、味わい深く、展開が妙である。
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「疼くひと」松井久子

2022年06月24日 05時03分27秒 | こんな本を読みました
「女のままでいたい。たとえどんなに孤独でも。」「高齢社会は新しい文学ジャンルを切り拓いた。 上野千鶴子さん」「いやらしい言葉にちょっと疼きました。みんな心の中では恋に溺れたいと思っているのだから。76歳-女性」など、帯に宣伝コピーが溢れている。
私の読後感は、それほどの衝撃でもなかったが。
確かに、70という女性の主人公が繰り広げる性愛や、それを自ら選択していくことなどは、これまでの老人像とは大きく異なるだろうし、それはそれで「飛躍」「冒険」だとしてもいいのかもしれない。
ただ、この齢に近い私としては、性差はあるにせよ、この小説の設定に近く、似たように生きている女性が山ほどいるだけに、「やっと現実に追いた小説が現れた」くらいかなとも。
死んだ父を5年も追い越した今でさえ、私は枯れていない。それは、厄介なものだが、また生きているという証でもある。
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「あの胸が岬のように遠かった 河野裕子との青春」 永田和宏  

2022年05月08日 22時11分00秒 | こんな本を読みました
「あの胸が岬のように遠かった 河野裕子との青春」 永田和宏
 衝撃を受けつつも、一気に読了する。泣けて泣けて、それでも足りないほど泣けた。
私にも、似たような青春があり、永遠を誓った恋人があり、毎日毎日、尽きることもないおしゃべりや、言い争いや、すれ違い。それこそ、拙いながらも、真剣に、真摯に想い合った時期があったのだ。この二人にも負けてはいなかったと自負できるほどの恋愛だったと思う。
 それを成就できなかったのは、もっぱら私の責任である。今思い返せば、なんと愚かな選択をしてしまったのだろうか。なんと彼女を絶望の淵に追い込んでしまったのだろうか。
 河野裕子に重なって、彼女の表情、言葉、そして肌のぬくもりが、虚しく蘇る。
 過去に遡って、もし、選択を誤ることがなければ、息子たちも、献身的な妻の存在のない、また別の世界が展開されたことだろう。
 もう後戻りのできない世界に生きているからこそ、この思いは、私だけのものにしていかなければならない。今を大切にしていくこと。それだけだ。
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