昨10月7日、日本学樹会議が推薦した会員候補6名が任命されなかった問題で、初の国会審議が衆議院内閣委員会で行われた。
菅義偉首相が6名を除外した判断の基準や理由が最大の焦点だが、政府側は菅首相が理由に述べた「総合的、俯瞰的」という抽象的な表現を繰り返して、具体的に説明しようとしなかった。
今日8日も、衆議院内閣委員会で論議するが、肝心の首相が出ないで内閣府の三ツ林裕巳副大臣の答弁では同じ答えの繰り返しが続くだろう。
野党側は10月26日から開会される臨時国会で、直接菅首相に説明を求める方針だ。
安倍晋三内閣以前は、学術会議会員の任命は、同会議から推薦される総てについて、時の首相が前例に倣い言わば形式的に任命してきた。
1983年に中曽根康弘首相が、学術会議の独立性の尊重と、政府が同会議の会員を選考する手立てを有していないとの観点から形式的な任命を容認したことによるものだ。
ところが、安倍首相は、日本学術会議は、政府機関の一部で、予算執行もしており、従来からの形式的任命について疑義を持ったようだ。
そのため安倍首相は、2016年に学術会議から欠員補充として3名の任命要請があったが、その内2名に難色を示し欠員の補充ができなかった。
また官邸は、同年、翌年の会員交代で選考状況を事前に説明するよう要請した。2017年6月には、官邸の要請で、会議から推薦候補者110名の名簿を提出、同年秋にその内の105名を任命した。
2018年には欠員補充人事で難色を示したため補充ができなかった。そして同年11月、遂に内閣府が「首相は推薦通り任命する義務はない」とする文書を作成した。
このように、安部首相は数回にわたり、学術会議人事に介入してきたが、菅首相は官房長官としてこの処置に関わってきた可能性があり、今回の任命拒否はその延長上にあるものと考えられる。
学術会議は全国に何千人もいる学術研究者の最高機関で、大西隆前会長によれば、目的は研究成果であり、政治信条は二の次という。
会員の選考は、学問の成果、受賞経験、現在のポストなどを基準に選んでいるとのことだ。ただ、大西前会長は、研究の見地から政治権力への批判に結び付きやすいと述べている。
戦前、学問が政治権力に蹂躙された苦い経験から、学問の自由と政治からの独立性を旨とし、政府もその点を尊重し人事的な介入を避けてきたが、遂に、安倍政権によって変えられた感じだ。
安倍政権を引き継いだ菅首相は、あからさまに任命拒否に手をつけたが、勝手に変えた「形式的任命」という不文律を、「任命する義務がない」としたのであれば、何故、6名に限り、任命しなかったのか、その理由について「総合的、俯瞰的」という抽象的な説明ではなく、もっと具体的に示すべきだ。
真実は、言わずものが分かっている。6名は何らかの形で安倍政権の施策に反対したからだろう。安倍前首相がこれまで何回となく、日本学術会議の人事に拘ってきたのもそのためであったことは明らかだ。「関連:10月7日」