DREAM/ING 111

私の中の「ま、いいか」なブラック&ホワイトホール

マイ・バック・ページ★6/1 吉祥寺バウスシアター

2011-06-01 | ドラマ・映画・演劇・アート
マイ・バック・ページ ★★★★☆
見てきました。面白かった!

入学式。
赤いヘルメット、黒いヘルメット、青いヘルメット。白いヘルメット・・・
ヘルメットの色はきっとあとの体験で補正されているだろう。

入り口には、見たことのない書体で、書かれたなんとなく不穏な
大きな看板。

同じ書体で書かれたビラを受け取る。

入学式自体の記憶はほとんどないのに、
キャンパスの緑と、学生会館と、図書館、そして
立看(というのだと、すぐ知ることになる)とヘルメットの印象だけが
残っている。

学生時代、授業もよく中断した。
ヘルメットをかぶり角棒をもった数名が前の入り口から教壇につめよると
先生はさっさと授業をやめて出ていく。
私やクラスメイトも「またか」、ともすれば「ラッキー」に近い感覚で
教室を出る。
別に誰一人とがめられることもなく・・・

美術系サークルだったので(?)、大学7年生とかへんな先輩も多く、
飲み会などでは、都市伝説のように
「オレの下宿の隣のヤツは逮捕歴があって」とか、
「この間、青ヘルをかくまって」とか「警察に追いかけられて」とか、
セクト、ノンセクト、反体制、闘争、逃走・・・えとせとら。

ベトナム戦争は「ありえない」「非人道的」と思ったけど
それは遠い国の物語。LOVE&PIECE。
反戦ソングも、ただの「好きな曲・キライな曲」のどちらかで
たまに聞きかじった付け焼き刃のメッセージに
煽られるものの、平和な日常のスパイスでしかなく・・・
知識でしかなかった安田講堂は、どこまでも遠く、
ベトナムと同じくらい無関係だった。
そんな4年間。

マイ・バック・ページは、まだまだ安田講堂が生活の中にあって
やらなければ、
かえなければ、
という思いが、挫折の中でうねっていた時代
思想が命に先んじて、価値をもっていた時代
ジャーナリズム、マスメディア。
誰もが自分が社会を作る、変える、と思えることができた時代の物語。

川本三郎を演じる妻夫木聡の演技に、共感を感じて、一気に引き込まれました。
わが(?)松山ケンイチくんは、どうも作品に恵まれない気がしてたんですが、今回はものすごくぴったり!!頭はそれなりにいいけれど、傲慢で、微妙な野心と売名行為に燃え、そのために平気でウソをつき、ヒトを陥れる。そのある種歪んだ情熱に巻き込まれてしまう人たち。革命家気取りの身の程知らずな山師感がバリバリでした。
取り調べ室でのいい加減感、最高!!他人を口先1つで不幸の鈍底に叩き込んでも、悪びれない(いるよなぁ、こういう非道で外道なヤツ)。

松山くんって、かなり負けず嫌いだと思うのだけど、1人で主演を貼るよりは、いい役者と組むほうが力が出る気がする。今回、妻夫木くんとの共演で、またなにか深まった気がする。

妻夫木くんは「悪人」もすごかったけど、今回も見事。
なりきる、というか、役を呼吸している感じ。
観客がシンクロしやすい“すき間”をたくさん用意できる、
感情移入しやすい(ってすごい!)役者さんだなぁ、と思いました。

若手ジャーナリスト・沢田と革命を目指す学生活動家・梅山の出会いのシーン。
沢田の自宅での会見後、ギターを見つけた梅山が
「どんな音楽が好きですか?」「ロック」・・・
そこで梅山・ケンイチがCCRの「雨をみたかい」を口ずさむ・・・
「この雨って、ナパーム弾のことなんですってね・・・」
(Wikiによれば、違ったようですが)
そのあと2人でハモる。
2人の(少なくても沢田の)気持ちが絡んだ瞬間がよく出ていました。

そしてラストに流れるこの曲。
Ah, but I was so much older then,
I'm younger than that now.


「彼ら」は2010年を進行形で生きている。・・・
思いはどこに行ってしまったんだろう?

Bob Dylan, George Harrison, Neil Young, Roger McGuinn, Tom Petty, Eric Clapton
・・・なんか同窓会ソングみたいー。
でも楽しそうです。

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ストーリー

元・朝日新聞社記者の川本三郎によるノンフィクションを、妻夫木聡、松山ケンイチの若手演技派初共演で映画化した社会派青春ドラマ。1960年代後半の学生運動を舞台に、理想に燃える若手ジャーナリスト・沢田と、革命を目指す学生活動家・梅山との出会い、立場の異なる2人がそれぞれの理想を追い求めて葛藤(かっとう)し、激動する時代を駆け抜けていく姿を描く。監督は「リンダリンダリンダ」「天然コケッコー」の山下敦弘。

キャスト:妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、石橋杏奈、韓英恵、中村蒼、長塚圭史、山内圭哉、古舘寛治、あがた森魚、三浦友和
監督:山下敦弘
プロデューサー:青木竹彦、根岸洋之、定井勇二
原作:川本三郎
脚本:向井康介
撮影:近藤龍人
音楽:ミト、きだしゅんすけ
美術:安宅紀史
主題歌:真心ブラザーズ、奥田民生


参考:
『マイ・バック・ページ』映画批評
相いれない評価も多いけど、今回は共感できる点の多い内容でした。

間違って力をもってしまった正義は、たやすく悪に転落するのだよなー

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