鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

Alteradio -オルタラジオ-

2018-02-07 00:00:44 | フリーゲーム(ファンタジー)
「Alteradio -オルタラジオ-」
アクションADV・カレッジラジオ
制作者:Achamoth様(Achamoth Potal

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ロック音楽をテーマにした作品群でおなじみの作者様です。
いつも作品を通して、音楽ジャンルに関する独特の世界を垣間見せてくれるので、すごく楽しみなんですよね。
プレイしながら「…へぇ…ほぉ…」と唸りつつ、裏画面で関連用語を検索したりするのででいつもプレイにすごく時間がかかりますが←w 雑学ヲタクの私にとっては、まだ知らない世界について知識を得るのは、とても楽しいことなので…って楽しむポイントが違うか?


さて、今回は、オルタナティブ・ロックと天女と仏教思想と大学生とメディアと悪魔のコンフュージョン?
またずいぶんと面白い組み合わせの世界観だなぁと思って進めていったら、とあるロックバンドの名前が出てきて、なるほど!と思いました。
それで涅槃か…好きな人はもう熱狂的に好きだよね。このバンド。

しかしまぁ…時代的に、ちょうど彼らが旬なころ、私も同世代だったわけですが。
このころ「若者扱い」でオジサンオバサンを馬鹿にしていた輩も、今や立派な中年世代。
まこと、この世は諸行無常でございますな。
…ロックスターは自殺や短命な人が多くて、そのために「伝説」の存在になったりするけれど…それはある意味、必然なのかもしれないねぇ…


天界に住む天女の一人・瑠璃は、ある日、いきなり何者かの声を聴いて倒れてしまった。
「師匠」と呼ばれる天界の仏は、瑠璃には天女の寿命…天人五衰が訪れたのだと告げる。
同じく五衰を迎えた天女・紅緒に、このまま死を迎えれば、畜生道に堕ちて何もわからない動物に転生してしまうが、修行をすれば人間として生まれ変わることができる、と教えられた瑠璃は、「三毒」と呼ばれる場所で「十二因縁」を集める修行をすることにした。
一つ因縁を探すごとに映し出されるのは、地上に生きる、とある青年の物語。
彼の姿は、果たして瑠璃の心に何を呼び起こすのか。


というわけで、物語は天女・瑠璃と、アメリカの大学生・スティーブの視点を行き来して進んでいきます。
瑠璃は「三毒(トリヴィシャ)」で餓鬼を倒しながら十二因縁を探し、見つかった十二因縁を「師匠」に渡すことでスティーブのエピソードを見られます。

スティーブはシアトルの大学生。カレッジラジオに憧れ、大学に入ったら絶対に自分も活動すると決めたものの…目当てのサークルは、部員もヲタクのジョルジュ一人しかおらず、事実上の休止状態。
自分がこのラジオを復活させるのだと決心したスティーブは、DJとして大学の問題児・クリスをヘッドハントし、ジョルジュを含め3人で再び、カレッジラジオを再開します。

…思えば子供のころ、やたらと放送部が人気だったり、深夜のラジオ番組をみんなで聴いて曲をチェックするのが流行りだったりしたのは、このへんの流れを組んでのことだったのかなぁ…


グラフィックは相変わらずオシャレで、遊び心のあるセンスが素敵。
泉の代わりにテレビに乗った仏とか、発想がスゴイよね。
個人的には、三毒のボスキャラのデザインが凄い好きでした。特に手がいっぱい出てくる奴。
あと、河童の姿の敵の名前が「遠野」っていうのはちょっと笑った。

アクション要素は、ごくごく簡単。
装備した黒と白との花珠に合わせて、対極の色の餓鬼に体当たりする、だけです。
素早く次々と倒していくと、連続コンボで良いアイテムが手に入るのでがんばりませう。
ただし相手もチョロチョロ動き回るので、色を意識してタイミングよく当たろうと思うと案外難しいかも。



音楽とサブカルのジャンルの差はあれど、インディーズバンドとカレッジラジオの関係は、今の同人界隈とネットメディアの関係に近い気がしなくもないですね…
それこそフリゲだって、実況や動画をきっかけにブレイクすることも多いですし。また、逆に、それによって潰されてしまう人も…多い、よね。

最初は、ただ好きなものを創ることで満足していたはずなのに、なまじ成功してしまったがために、周囲の声に気を取られて、自分を見失って苦しくなっていってしまうっていうのも…何かわかる気はする。
最初は「自分のため」に作っていたのものが、不特定多数の誰かのため、になっちゃうと、いきなり迷走してしまう感じ…あるある。

スティーブ達やバンドボーカルの彼の個人的な苦悩と、それより大きな「ロック」という音楽ジャンルの変遷の歴史と。ミクロとマクロの視点から同時に語られる物語は、いろいろ感慨深いものがありました。

ロックファンだけでなく、多くの人にプレイしてほしいゲームでした。
おすすめですよ~