鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

「ハンニバル」

2007-09-14 17:12:58 | 映画(ホラー)
「ハンニバル」 2001年
監督:リドリー・スコット
出演:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ゲイリー・オールドマンほか

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ハンニバル・ライジングがDVDレンタル開始ということで、イキツケのレンタル屋では、
レクター博士の棚ができておりましたっすぅ。
若レクターはまだ1泊2日料金なので(笑)とりあえず「脳喰らい」のシーンが物議を醸した
「ハンニバル」を借りてきましたよん。

ハンニバル・レクター博士の強烈なカリスマの前に、世の殺人鬼は誰も敵いませんね!
いまだかつて、こんなに魅力的かつカッコ良い殺人鬼がスクリーンに存在したでしょうか(ため息)
いや、ビジュアルは中年のオッサンですがね。行動がいちいち美学があってカッコ良くて。
「食べるときは世に野放しになっている無礼な連中を食らう」とか。
無礼! そう、博士は礼儀知らずが嫌いなのです。

しかし、普通、嫌いな相手なんか食べたくないですよねぇ。
「食べちゃいたいほどかわいい」って言葉があるように、カニバリズム的な考えから照らせば、
好きな相手とか、自分より能力が上のもの、尊敬できる部分のある相手を
喰いたいもんじゃないかと思うんですが。
そうじゃないところが、彼の生き様ですね~
儀式的な要素はまるでなく、単なる食肉としてしか見ていないのでしょう。

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FBIのクラリスは、麻薬組織の女ボスを捕えるための張り込みの最中、
暴走した部下の判断ミスにより、街中で銃撃戦に巻き込まれる。
結果、一般人に多くの死者を出し、クラリス自身も、赤ん坊を抱いていた女ボスを射殺してしまう。
それは多くの批判を呼び、クラリスは仕事の上で窮地に立たされることになった。

しかし、そんなクラリスのもとに、大富豪メイスン・ヴァージャーから、
ハンニバル・レクターについての重要な情報を提供したい、という申し出が。
メイスンは、もともと倒錯した性的嗜好を持つ人物だったが、精神科医をしていたレクターによって
自らの顔の皮を剥ぎ、愛犬に食べさせられる、という被害に遭っていた。
メイスンは、レクターに対し強い執着心を持っており、かつてレクターがただ一人興味を示し、
協力したクラリスを使って、レクターを誘き出そうとしていたのだ。
そして、クラリスが銃撃事件で非難されていると知ったレクターから、彼女のもとへ、
励ましてでもいるかのような手紙が届く。

そのころレクターはフェル博士と名前を変え、フィレンツェで歴史的に高い価値のある図書館の
史書として迎えられようとしていた。
前任の史書は、失踪したとされていたが、実はレクターの手で殺されていたのだ。
この史書の失踪事件を調べていたパッツィ刑事は、やがて彼がレクターであると知り、
その首にかけられた懸賞金目当てに、メイスンに情報を売ってしまう。
そして、その見返りは、パッツィ自身の命で支払うこととなるのだった。

レクターが今もクラリスに興味を抱いていると知り、メイスンは彼女を罠にかけようと画策する。
それに気付いたレクターは、素早くアメリカに帰国。クラリスの窮地を救い、その代わりに、
自分がメイスンに囚われてしまう。
クラリスはレクターを救うべく、メイスンの家へ向かう…

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ものすごい猟奇的で残酷なのに、不思議と、全然邪悪な感じがしないんですよね。
肉食獣が獲物を屠るのに、一体どんな理由や躊躇いがいるというのか? って印象。
すごいなー、アンソニー・ホプキンス。
本人は、自分に纏いついたレクター博士の影に辟易しているようですが、
彼の演技なくして、超人ハンニバル・レクター博士は存在しない。

「強欲の罪は首括りと相場が決まっている」
と暗に自分を賞金目当てで売ろうとしている刑事を指したセリフも気が利いてるし、
ハンニバルに粘着(愛かしら?)している大金持ちメイスン・ヴァージャーに陥れられ、
人食い豚の餌にされそうなシーンの時も格好よかったわ~。
粘着メイスンの車椅子を押す、いつも主人にナイガシロにされていた主治医コデールに言った言葉。
「コデール、突き落とせ。私のせいにしろ」
この人の心の弱みを突く、悪魔の誘惑っぷり! なんて潔くて素敵なんでしょう~

「羊」が好きな人には、「ハンニバル」は人気イマイチらしいんだけど、私は好きですね。
人間味を多少感じさせたと思うと、次の瞬間、信じられないような残虐性を見せる、
そこが「ヒトの形をしながら、ヒトの範疇に収まらないもの」とかいう感じで、超いいぞー。

人食い豚(私の目には猪に見える)が、博士のことは襲わずにスルーする部分があるのですが、
野生の動物は、自分よりも強いものを襲わないようにできていると聞きます。
豚どもの目には、レクターは自分たちよりも凶暴な存在に見えていたのでしょうか。
彼は「人間を捕食するもの」であり、そういう意味では「食物連鎖の頂点」でもあるわけですかねー
ちなみにこのシーン、ゼラチンで人形作って、実際に豚に食わせてるらしいですよ。
ああ、そいえば「脳喰らい」のシーンでは、ロボット&CGを使ってるんだとか。
それを聞いたあと、しみじみ見ましたが、良く出来てますよね!

原作では、どうやらレクター博士が何故、ああいう人物になったかが紐解かれ、
しかもクラリスはレクターと共に生きる道を選ぶらしい…
あらすじだけで作品の良し悪しはわからないけど、私は映画のラストのほうが好み。
映画も、ちょっとクラリスに執着しすぎてる感じはあるけど。
二人に和解は似合わないですよ。
クラリスはレクターにとっての聖女のまま、正義街道を突っ走ってもらいたいし、
レクターはクラリスと敵対して命のやりとりをしながらも、時に気紛れで彼女を助けてみたりとか。
そういうのが好きだなー。

ええと…グロ度ですが。「羊」と違って、これはグロいシーン多いですよ。
見ていて「イタい、イタい、イタいから!」ってとこもあるしー、
「うげーーー」「ひょーーー」ってシーンもある。(この描写わけわからんわ)

レクター博士のカリスマっぷりはぜひとも万人にお見せしたいんですが…
誰でも平気で見られるってものではないでしょうね。
ラストの、子供にアレを一口振舞う場面…あそこも、人によってはダメかも
私は、あの子自身に「自分に近い何か」を感じたからこそ、博士はああしたのではないかと思うけど。


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話変わって、ハンニバル・ライジングってどうなの?
あの線の細い若者に、レクター博士の気品と非人間性が出せるのだろうか、とちと心配。
レビュ見る限りでは、キャストへの不満はそれほど多くないけど…
それに、レディ・ムラサキって…一体何事?
いきなり剣道やってたり、なんちゃってなキモノ姿があったり…
うううう、これは……今までのレクターとはベツモノとして見たほうがいいのかな?

とりあえず、若ハンニバルがわざわざ『修行』するとこって見たくないかなぁ
レクター博士には、産まれながらの怪物&捕食者であって欲しいです。

「グリーンマイル」

2007-09-14 11:20:16 | 本(小説)
「グリーンマイル」全6巻 
スティーブン・キング 著
新潮文庫

映画「グリーンマイル」
公式サイト(日本版はすでに無いので米公式)
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最初、この本を本屋で見かけたとき「…なんだこの大量の薄い本は?」とひたすら疑問でした。
全6巻…背表紙の厚みは5ミリほど。しかも、一冊一冊がマンガ本なみの価格。
全部で…2600円、くらい?

『これ、一冊に纏めてくれたら、もっと安上がりなのに!!』
という気持ちが強くて、手に取る気にならなかった…というか。
先に映画のほうを見てスジを知り、しかもそっちが今までのキング作品映画化と比べても、
なかなかにデキが良かったので、それほど文章ベースに拘らなかった…というか。
そんな感じで…読んでなかったのですよね。

で、今回それが纏めて古本屋に出ているのを見て、一括購入。
一度読み出したら、どうせ、最後まで一気に読みたくなるに決まっているし。
しかもこんな薄べったい本…私の読む速度では多分、1冊1時間かからない。
とりあえず纏め買いして~…結局その日に全部読んじゃったよ!(笑)

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1935年のコールド・マウンテン州刑務所。
そこには「オールド・スパーキー」と呼ばれる電気椅子が置かれていた。

老人のための施設に入所しているポール・エッジコムは、かつてコールドマウンテン刑務所の
Eブロック看守主任を務めていた。
Eブロック…それは、死刑囚が、最後の短い余生を過ごす場所である。
そこで1935年に起こった出来事…一人の死刑囚にまつわる奇跡と真実について、
ポールは拙い記憶を手繰り寄せながら、記録にとどめていく。

巨大な黒人の凶悪犯罪者、ジョン・コーフィ。
知能もそれほど高くないらしいこの男の罪は、いたいけな双子の少女を強姦し虐殺したことだった。
ポールは、最初からこの黒人がそれほど凶悪な犯罪を犯すようには見えない、と感じていたが、
自分の病気を、コーフィが不思議なちからで直してくれたのを切欠に、さらにその疑いを強める。
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感想は「映画版は本当に内容・イメージ共、原作に忠実に作ったんだなぁ」と。

超有名な「シャイニング」「キャリー」「ペットセメタリー」「バトルランナー」
「炎の少女チャーリー」「スタンド・バイ・ミー」「クリスティーン」「ミザリー」「IT」
「痩せゆく男」「ドリームキャッチャー」等々!
今まで、キング原作で映画化した作品は山ほどあれど。
一部のものを除いて、その多くは「なんでやねん!」と文句つけたくなるような…
とくにバトルランナーなんかは、原作と読み比べると、その差にガクゼンとしますよ~

でも、小説家スティーブン・キングはやっぱり好きですね。
本当にストーリーテラーと呼ぶに相応しい作家は、現代において、彼だけなのではないでしょうか。
容赦なく「人間」というものをありのままとらえる視点、残酷な描写とスパイスの効いた風刺。
強烈な皮肉と当てこすりは、そのまま「お前はそれを許すのか?」と読者へ向けた問題定義へ。
そして、その裏側に流れる、静かな優しさ。うわっつらだけではない、本当の友情や信頼。
時に作中に垣間見る、諦観にも似た思いやり。
読んだ人間ごとに全く違う感想が出てくるだろう、懐の深さもさすがー。

主人公・ポールを助けてワキを固めるブルータスを初めとした看守たちが、またカッコいいのさー。
そして、それらの善なる人たちと対照的な、戦慄するような悪役たち。
正直、凶悪殺人犯であるエディより、パーシーのほうが余程邪悪に感じるのは何故でしょう?
そして、案外世の中、こういうタイプ多そうだよなー、なんて思ってみたり。

もちろん、キング作品ですから、いろいろ容赦ない残酷描写もあるわけですが
(映画を見た人は、その辺わかってるよね?)それを超えても読んで欲しいなーと。

で、最初に文句ぶーぶー言っていた分冊の経緯は、1巻の最初で書かれているのですが、
それならそれで! もっと装丁に力を入れてくれればいいのに!!
ふつーのペーパーバックと同じカタチであの薄さ・あの分冊はあんまりざんす。
もっと安っぽい、読み捨てっぽい感じの装丁で(こんな要求すんの私だけ?)
その分値段安くしてくれよー。

本編には関係ないけど。 ちょっと好きな話。
キング自身がシャレが通じる方でもあるようで、今回のグリーン・マイルの序文には、
彼の執筆途中の長編「ダーク・タワー」の続編を急かすファンレターについて書かれた一文が。

『…鎖で縛られたテディベアのポラロイド写真を同封したものがあった。
添えられた手紙には、新聞の見出しや雑誌の表紙から切り取った文字をを組み合わせて、
こう記されていた…「いますぐ暗黒の塔の続巻を出版しろ。さもないとこの熊の命はないぞ」』

…このファンレター(?)を送った人間サイコー!