鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

「姑獲鳥の夏」

2006-02-02 10:32:35 | 映画(邦画)

「姑獲鳥の夏」 2004年
監督:実相寺昭雄
出演:堤真一、永瀬正敏、阿部寛、宮迫博之、原田知世

公式ページ

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うぶめの夏、を見ました。
んー、んー……ごめん、B級…

いや、B級にはB級の良さもありますし、マイナーな映画でも好きなの一杯ありますが、
この映画は…いわばB’級といいますか。
なんていうかねぇ。作り手の愛が感じられない映画でしたね。
この物語を映画化して、一体何をしたかったんですか?と聞きたい出来でありました。

まず、原作を読んでいないひとには何がなんだかわからないだろう展開。
そして読んでいる人には、耐えられないのではと思われる、映像の軽さとチャチさ。

もともと、京極堂シリーズの一番の見せ所は「言霊の魅力」です。
京極堂の喋りだけではなく、あの本の厚みと同じだけの、膨大な薀蓄(笑)
でも、書き言葉である書籍だからこそ、あの厚みでまだ済むのであって、
あれを喋り言葉で理解できるように変換したら、あの倍では済まないんじゃないかと思うのです。
ふつーに喋ってる時、私たち、そんなに難しい単語を使わないですよね。
しかも、会話の殆どは、「あー、そうそう」「そうかな?」「○○って?」といった、
相槌や、理解を補完する言葉が多いような気がする。
つまり、読んで理解するのと、聞いて理解するのでは、聞くほうがはるかに能率悪くて時間がかかる。

そして、書き言葉でもあの厚みの京極堂を、映画…しかも、2時間くらいのワクに押し込めようというのだから、
無理がかかるのはある意味当然なのかもしれません。
結果、喋り続けて、その言葉を理解するより先に進んでいってしまう物語、って感じになってしまったような。

とはいえ、原作ファンなら、そもそも粗筋を知ってますから、…それでもついていけるでしょうが…
それならそれで、もっと画像をマニア向けにしてくれたら良かったのに(笑)
眩暈坂の夜のシーンなんかは、一昔前の牡丹灯篭もかくやという安っぽい感じで…。
最近は、CGの画像処理も進んでいて、現実に居ない者さえさも居るように見せられる時代です。それなのに、現実にありそうな坂道ひとつでこれなのか、と泣きたい気分になりまする(泣)

キャストについては…頑張ってるだけに、なんだか気の毒に見えました。
あの長いくどい理屈っぽい長セリフを、ロングでえんえん演じ続けた堤さんには素直に拍手。
逆に、役にぴったりじゃないかなーと思っていた阿部さんは、なんというか浮いて、いた、かも(笑)

何故かわかりませんが、この映画、登場人物が妙にバラバラに見えたんですよね。
原作では、個性的過ぎる面々を全編に渡って包み込む「同じ空気」みたいなものがあって、
どんな異常な状況も、その「場」の中では普通に有り得ることになってしまうような、
強い雰囲気があるんですが、映画にはそれが無いんだな。
だから、登場人物が全員、ただの変人揃いに見えてしまって(汗)
そう…例えるなら、昼の光の中でお化け屋敷を見ているような、ちぐはぐな感じだった。

うー、もし、今回の映画で京極堂が納得のいく出来なら、
「御手洗潔」映像化もアリかと思ったんですが。
…やっぱりこれは無理かもしれないな…

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今回、これを書くのに検索したら、田中麗奈主演で、
「玩具修理者」映像化していたのですね!
前に、原作をレビューした時は気付きませんでしたよ…
これは、是非見なくちゃ! ツタ○にあるかな…。