住みたい習志野

市内の情報を中心に掲載します。伝わりにくい情報も提供して行きます。

ハンコの廃止、本当に「よいこと」?(読者投稿)

2020-10-23 00:53:27 | 投稿

(ブログ読者の方からの投稿です)

ハンコの廃止、本当に「よいこと」?

役所に手続きに行って「しまった、ハンコを忘れた」という経験は誰しもでしょう。いったん文房具屋に行って、三文判を買ってきたという人も多いはず。新内閣は行政改革の目玉として、ハンコの廃止を打ち出しています。一見「よいこと」だと思えますが、さてどんなものでしょうか。

印鑑は「虚偽文書ではない」あかし(最高裁判例)

新聞は「ハンコ文化の旧弊」といった書き方をしていますが、単なる文化ではなく、法的な保護もされています。
民事訴訟法228条4項には、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」という規定があります(ここで「推定」とは、反証がない限りそれが真正だとされることです)。
「署名又は押印」と言っていますが、次の最高裁判例は、押印があるものにはさらに特別の効果を与えています。私文書に印がある場合には、立証責任が転換されるのです。
「私文書の作成名義人の印影が、その名義人の印によって押印された事実が確定された場合には、反証がない限り、その印影は本人の意思または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は民事訴訟法にいう「本人又は其の代理人の捺印あるとき」の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることになるのである」(最高裁昭和39年5月12日判決)


だから印鑑を押した文書の偽造(有印文書偽造)は重く処罰される

つまり、押されているのが本人の印鑑であることさえ立証できれば、本人の意思に基づき作成された真正な文書と推定されるのです。相手方がこれを覆すには、権限のない者が引き出しを開けて勝手に押印したのだとか、本人の意思に基づかない偽造された文書だといったことを立証しなければなりません。この反証は実際には容易なことではないでしょう。したがって、実印が押され印鑑証明書が添えられてあれば、まず虚偽文書ではない、安心して取引が出来る、ということになるのです。
そして、ハンコにこういう効力が認められているからこそ、犯罪という面からも、有印文書偽造は単なる文書偽造より重く処罰されるようになっているのです。

日本では印鑑証明、欧米ではサイン証明
一方、欧米のサイン社会では、それぞれが芸能人のサインのような、他人に真似されないサインを工夫していますし、印鑑証明のようにサインの証明の制度もあります。

Signature Certificate:(日本の印鑑証明書にあたる)サイン証明書



サイン証明制度もない日本で印鑑を廃止したら、いくらでも偽造ができる

しかし、それがない日本で、いきなり「サインでOK」としてしまったら、どういうことになるのか。早い話、何者かがあなたの名前をサインして、役所に虚偽の申請書を出してしまったら、それが偽りだという証明をあなたがしなければならないのでしょうか? それとも、適正な申請を受理したと主張する役所側がしなければならないのでしょうか。

マイナンバーは詐欺の温床
そこで役所が持ち出してくるのが「マイナンバー」です。マイナンバーが正しく書かれていれば、ハンコがなくても真正な文書だ、ということですね。
「国民総背番号制反対」などという声も今は昔。現在ではマイナンバーカードを取得しない人は変わり者だと言わんばかりの世の中になってしまいました。マイナンバーをバーコードにして焼き印を押したり、ICチップを埋め込んで、AI(人工知能)が人間を、家畜のように支配する日が来るのではないか。信じるか信じないかはあなた次第です、といったSFのような話はさておくとしても、オレオレ詐偽にキャッシュカードを盗られた、クレジットカードを渡してしまったという事件が絶えない今日、マイナンバーカードは果して大丈夫なのでしょうか。高齢者がマイナンバーカードをだまし盗られてしまった。本人の筆跡とは似ても似つかないサインでもマイナンバーが合っていたので、気がついたら家屋敷まで取られてしまった、などという事件がその内起きるのではないか。心配でなりません。

(共通番号いらないネット)
http://www.bango-iranai.net/library/libraryList.php#lib36

(リーフレット「危険で不便なマイナンバー制度」)
http://www.bango-iranai.net/library/pdf/40-leaf820200430Color.pdf

マイナンバー先進国が被った甚大な盗用リスク「国民が黙っていると政府は適用範囲を拡大したがる」 - 社会 - ニュース

マイナンバー、個人情報流出急増が深刻化…ほぼ全国民が2回被害、番号取引し悪用も

ハンコ不要で本当にいいの?朝三暮四(ちょうさんぼし)の猿のようにダマされてはいけない

昔、中国の大臣が、飼っている猿にエサを与えるのに、朝に3つ、暮れに4つやると言うと猿が少ないと怒った。そこで、では朝に4つ、暮れに3つやろうと言ったら、猿はたいそう喜んだということです(朝三暮四)。
ハンコ不要、サインでOK。それが本当に便利な社会なのかどうか、改めて考えてみたいと思われてなりません。

 

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更級日記千年記念して文学賞 市原市が創設(10月22日付朝日新聞)

2020-10-22 18:24:36 | 報道

今年は「更級(さらしな)日記」(市原から京都に戻る旅の日記)千年を記念して市原市で記念行事が行われ、文学賞を創設したそうです。

更級日記千年記念して文学賞
市原市が創設 作品募集 

 平安時代に書かれた「更級日記」の作者、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が市原市にあった上総国府を出発した1020年から千年を記念し、市原市が「更級日記千年紀文学賞」をつくった。市の地名や人物、歴史、行事などを織り交ぜた小説や紀行文、エッセーを募集し、大賞には30万円を贈る。
 更級日記は、作者が13歳のとき、父の転勤に伴い、現市原市から京都への旅の場面から始まる。源氏物語の主人公・光源氏が織りなす恋の物語に没頭した少女期や、その後の結婚や宮仕えの記録が書かれている。「平安時代中期の中流貴族の娘の生活様式がわかる書物」(市ふるさと文化課)という。
 市は更級日記にちなんだPR活動を続けており、文学賞もその一環。「一般の部」は、小説は400字詰め原稿用紙30枚程度、紀行文やエッセーは同30枚以内。作家の椎名誠さんが選考委員を務め、市原市在住の作家で翻訳家の岸本静江さんや市内で更級日記について講演会を開いてきたエッセイストの加賀美幸子さん、出版社の編集者らが選考委員になる。「小中学生の部」では更級日記も扱った家族をテーマとした短歌を募集する。
 小出譲治市長は「国府が置かれていた歴史がある一方でコンビナートと共に成長してきた街。市原に興味をもって、その魅力を存分に書き出してほしい」と話した。

(以上、朝日新聞10月22日の記事からの引用)

 

日記に登場する「浮島」は習志野市の鷺沼

更級日記に登場する「浮島」は習志野市の鷺沼、という記事がこのブログにも載りました。

OGPイメージ

習志野歴史散歩:平安時代の「更科(さらしな)日記」に習志野市が出てくる - 住みたい習志野

今年は「更科日記」1000周年今からちょうど1000年前、ある旅の一行が習志野市内を西に向って通り過ぎて行きました。上総(かずさ)国の国司(...

習志野歴史散歩:平安時代の「更科(さらしな)日記」に習志野市が出てくる - 住みたい習志野

 

 

OGPイメージ

八五郎の時空旅行:古代の「浮島」って鷺沼? - 住みたい習志野

古代の「浮島」って鷺沼?※今回の投稿は「習志野歴史散歩」の投稿とテーマが重なりますので、下記の投稿も合わせてご参照ください。習志野歴史散歩:...

八五郎の時空旅行:古代の「浮島」って鷺沼? - 住みたい習志野

 

文学賞、皆さんも応募されてはいかがでしょうか?

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今度は「パチンコのまち習志野」?

2020-10-21 11:36:43 | 行政

文教住宅都市なのにギャンブル場?習志野市の「ギャンブル行政」に対する市民の批判、疑問の声に押され、コロナの影響もあって、ボートピア習志野が、ついに撤退しました。

ボートピア習志野が撤退!ギャンブル行政に幕 - 住みたい習志野

今度は「パチンコのまち習志野」?

ようやく「ギャンブルのまち習志野」の汚名返上?と思ったのもつかの間、今度は、静岡県のイトーという会社が習志野市に新たな大型パチンコ店を作る(12月施工)というニュースが届きました。

OGPイメージ

イトーで12月着工/エフェクトの習志野市遊技場 | 建設通信新聞Digital

 エフェクト(浜松市)は、千葉県習志野市に駐車場付き遊技場(パチンコ店)を建設する。イトー(静岡県磐田市)の施工で12月上旬に着工し、202...

建設通信新聞Digital

 

場所は、東習志野の「ロイヤルホームセンター習志野」店の向かいにあったショッピングモール「ジェームス東習志野店」の跡地のようです。
リサイクルショップがあったり、レストランがあったり、家族で楽しめるエリアでしたが…

近くには実花小学校もあります。

 

東習志野ショッピングモールの「ジェームス東習志野店」が閉店、他店舗も移転閉店してる | 鎌ケ谷船橋あたり

読者の方から情報提供がありました。 <情報> 東習志野ショッピングモールがたいへんです。お店が全然ありません! 気になるのでぜひいってみてく...

鎌ケ谷船橋あたり

 

実籾高校のすぐそばにパチンコ店を誘致した時も大問題になりました

県立実籾高校のすぐそばに大規模パチンコ店「マルハン」を誘致した時も大問題になりました。

習志野市「マルハン」問題が市長の“不正選挙・癒着疑惑”に発展『宮本市長とパチンコ利権』の怪文書も……

「ギャンブル依存症」に関するこんな動画もあります。



ギャンブル依存症から抜け出せない習志野市

ボートピアが撤退した、と思ったら、今度は大規模パチンコ店!
「文教住宅都市」という看板にいつわりあり?
習志野市、なかなかギャンブル依存症から抜け出せないようです。

11月3日(火:祝日)午後2時から、実花小学校で、大規模パチンコ店出店について地元説明会があるそうです。

 

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これはスゴい!女子大生が大久保をディープに探検

2020-10-20 08:37:24 | 投稿

(ブログ読者の投稿です)

今年7月、こんなスゴい「大久保」探検記を書いてくれた女子大生のサイトを見つけました。

京成大久保駅周辺の歴史。軍隊の街と商店街の「カフェ」の関係性

今回は「京成大久保駅」周辺を散策。なぜ、京成大久保なのかって?それは軍隊の街だから。この場所に限らず、軍隊の街というのは […...

Deepランド

 

京成大久保駅周辺の歴史。軍隊の街と商店街の「カフェ」の関係性

というタイトルの投稿の中に、こんな面白いことが書いてあります。

軍隊とカフェ

カフェやビリヤード場などは、兵士だけでなく地元の青年も楽しんだ場所だったようだ。

カフェ

兵士の外出には制限があり、管外に出る場合には、特別に申請して外出許可をもらわなければならなかった。通常の外出は限られた場所であったが、兵士たちは自由を求めて勇んで外出した。

こうした兵士たちの心の慰めになる近道のひとつは、やはり飲食店であった。それらの店は「大久保銀座通り」に沢山あった。特に営内に居住する下士官には兵士と異なった心情があったようで、出入りの承認が営内で夕食後に開く酒保では物足りず、まちのカフェなどに消灯までの時を過ごす人も多かったようである。また、こうしてカフェは近隣の若者の憩いの場でもあった。

兵士たちは、憩いを求めてカフェに夜な夜な出かけていたらしい。カフェが青線的な役割を果たしていたのかは不明だが、兵士たちの規則の厳しさを考えると、夜遅くまで営業はしていなかったのかもしれない。

当時を知る人たち

当時を知る方にお話を伺った。やはり、カフェが多く点在していた付近には女給のような方が多く、近寄っていはいけない雰囲気があったらしい。お祭りの神輿が商店街を通ると、カフェのあたりで立ち止まる。それはカフェで働いている方が他の場所よりも余裕があり、お金を落としていたからだ。

少ししか聞くことができなかったため、今度もう一度お話を伺って追記しようと思う。

先ほどの銀巴里も、カフェの関係だったのではないか。習志野の騎兵軍を美しい歴史でとどめておこうと、敢えてカフェなどの情報は隠しているのかもしれない。

(以上、ブログ「Deepランド」より引用させていただきました)

カフェーと純喫茶の違い

「純喫茶」の「純」って何だろう?と思ったことありませんか?もっとも若い方たちにとっては「純喫茶」という言葉自体、聞きなれない「死語」になっているかも知れません。

Wikipediaにこういう説明があります。

 明治時代には「ミルクホール」が知識人たちの社交の場であった。明治末期にはコーヒーを中心に提供する「カフェー」と名乗る店舗が誕生したが、接客係の女給を置いたことから、夜には主に酒類を出し、隣に座る女性に客がチップを払うといった、現在のスナックやクラブのような業態へと変質していった。こうしたカフェーは喫茶店とも呼ばれ、関東大震災以降に隆盛を見るようになったが、一方で酒類を扱わない本来の意味での喫茶店も一般的な存在となっていった。

 こうした風俗営業的なカフェー、喫茶店は1929年(昭和4年)の「カフェバー等取締要項」、1933年(昭和8年)の「特殊飲食店取締規則」により規制の対象となり、酒類とホステスによるサービスを主とする業態を「特殊喫茶」、接客の伴わない喫茶店を「純喫茶」と区別するようになった。

あっぱれ!女子大生

 女給さんがお酒の酌(しゃく)をする風俗営業の喫茶店が「特殊喫茶」、接客を伴わない「純粋な」喫茶店を「純喫茶」と呼んで区別した、その「純喫茶」という呼び方が今も残っている、ということなんですね。面白い!

銀座喫茶「麗人相競う喫茶の殿堂!」(「銀座カフェー興亡史」より)

  「兵士たちは、憩いを求めてカフェに夜な夜な出かけていたらしい。習志野の騎兵軍を美しい歴史でとどめておこうと、敢えてカフェなどの情報は隠しているのかもしれない。」とブログには書かれていますが、軍隊相手の店ともなれば、裏であやしげなサービスまでやる店が少なくなかったでしょうね。

 そんなDeepなところにまで目をつけてこんなブログを書いた女子大生、あっぱれです。

 

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習志野歴史散歩(番外編):習志野市に郷土資料館はないけれど…

2020-10-20 00:47:31 | 歴史

習志野歴史散歩(番外編)
習志野市に郷土資料館はないけれど…

 習志野歴史散歩(全20回)、幸いご好評をいただいたようです。「日頃、知ってるつもりだったが、自分のまちの歴史を知らなかった」といった声を皆さんからお寄せいただきました。その中に、「自分でもいろいろ調べてみたいと思うのだが、習志野市には郷土資料館がないから…。文教住宅都市の看板を掲げているのに、恥ずかしい」と嘆く声もいくつか聞こえてきました。

(他市の郷土資料館)

八千代市立郷土博物館
https://www.yachiyo.ed.jp/yachiyo/sosiki/rekisi/

船橋市郷土資料館
郷土資料館

市川歴史博物館
http://www.city.ichikawa.lg.jp/edu15/111100000.html

鎌ヶ谷市郷土資料館
http://www.city.kamagaya.chiba.jp/sisetsu/kyoudo_2/kyoudo/index.html

千葉市立郷土博物館
https://www.city.chiba.jp/kyodo/index.html

 確かに、他市にはあるのに、なぜか習志野市には郷土資料館がありませんし、作る予定もないようです。残念なことです。20回にわたる「習志野歴史散歩」シリーズでご紹介したとおり、習志野市は歴史の宝庫なのにもったいない話です。

図書館のレファレンス・サービスを活用する、という手があります

 しかし、郷土資料館がないから郷土資料の調査が出来ないと思うのは早計です。今日は、図書館のレファレンス・サービスをフル活用する方法をお知らせしたいと思います。

https://www.narashino-lib.jp/toshow/asp/index.aspx

 習志野市立図書館は今回、大久保図書館が新しい建物になっただけでなく、運営がガラッと変わりました。
従来は市の直営図書館5館(大久保、藤崎、東習志野、新習志野、谷津)がありましたが、藤崎図書館は廃止されてしまい、習志野市直営は中央図書館のみとなりました。その中央図書館が他の3館(指定管理者・株式会社図書館流通センターが運営)を統括する、という形になりました。

 図書館法では公共図書館に、「司書」という専門職を置くことになっています。司書(ライブラリアン)とは、図書館資料の収集、整理、保管や、他の図書館との連携・協力、そして利用者にレファレンス・サービスを行う専門家です。医師がいない市立病院などあり得ないのと同様、司書がいない公共図書館などありません。そして、司書の専門的能力が強く問われるのがレファレンス、つまり利用者の資料調査に的確な情報を提供する支援サービスなのです。

 日本ではなぜか、図書館を「無料貸本屋」だと思っている人がたくさんいます。「半沢直樹」はいつになったら入るのと、話題の新刊本にばかりリクエストが集中してしまいます。「放課後の子どもの居場所」や「ひまつぶしの場」だと思っている人もいます。どれも決して間違いではないでしょう。しかし、レファレンス・サービスをうまく使いこなさなくては、実はたいへんな「宝の持ち腐れ」なのです。また、土史に関することなど、郷土資料館はなくとも図書館のレファレンスによって、かなりのことが調べられるのです。目指す資料が習志野市立図書館になくても、他市や県立、あるいは大学の図書館から取り寄せてもらうことができます。しかも無料で…。これを活用しない手はありませんね。

 レファレンスできる情報には限定はありません(但し、個人情報に関わることなどは制限されます)。別に郷土史に限ったことではなく、どの本を調べれば目指す答に行きつくのかわからない、ということはすべてレファレンス・サービスが受けられます。但し、必ず書籍・雑誌・新聞等の「検索」という形で行わなければなりません。例えば司書に「これから値上がりしそうな株の銘柄を教えてください」と聞いても、これは教えてもらえません。しかし、「これから値上がりしそうな株がわかる本や雑誌を教えて」ということであれば、蔵書の中から判断材料になりそうな本や雑誌を紹介してもらえるでしょう。

徳島県立図書館の例

レファレンスサービスの利用方法

新宿区立図書館の例

調べものに役立つ図書館活用方法(レファレンスと蔵書検索)

 では、郷土史の話に絞ってみましょう。あなたが「習志野という地名は『篠原に見習え』から付けられた、という話は本当なのだろうか?」と思ったとします。図書館のカウンターに行って「すみません。『篠原に見習え』という話は本当ですか? ウソですか?」という聞き方をしても、これでは答に行き着きません。「『篠原に見習え』という話が登場するのは、いつの何という本からでしょうか?」と、本に結び付けて尋ねるのが上手な聞き方です。なお、このように文字資料の上に初めてその話が記録されたのがいつ、どんな形でなのかということを「初出(しょしゅつ)」といいます。初出に遡(さかのぼ)って出典を調べるのは歴史の基本で、初出を調べずに、ある話が本当だ、いやウソだと言ってみても話になりません。『篠原に見習え』であれば、例えば大正何年のこういう本に、その著者が明治何年に誰々からそう聞いたと書いてある、などということかも知れないし、文字資料として現れるのは意外に新しく、昭和も戦後のことだ、などということかも知れません。もちろん戦後だからウソだということにはなりませんが、さらに考証を進めていく手掛かりにはなるはずです。こうして一歩一歩、謎解きしていくことが、郷土史を知る醍醐味(だいごみ)ですね。

全国の図書館で「習志野」について、こんなにレファレンスがあります

 最近ではこうして利用者のレファレンスに答えた後、図書館側でもこれをネット上のデータベースに蓄積しています。他の図書館でも同じような問い合わせを受けたとき、参考になるからです。

レファレンス協同データベース(レファ協)

https://crd.ndl.go.jp/reference/

因(ちな)みに、ここに「習志野」と入れて検索してみましょう。全国の図書館で「習志野」について、利用者からどんなレファレンスが出ているのか、見ることができます。いくつか拾ってみると、

〇修学旅行の始まりはどのようなものであったのか。(岡山県立図書館)

修学旅行の始まりはどのようなものであったのか。 | レファレンス協同データベース

修学旅行の始まりは、明治19年2月に東京高等師範学校が行った「長途遠足」。11泊12日、全行程260キロメートル余に及び、千葉県銚子港方面を見て回った後、習志野練兵場において2日間の野外演習を行った。


〇習志野市や佐倉市のロシア捕虜収容所について調べている。ロシア人捕虜が列車で送られてくる様子が書かれた千葉県の新聞記事や、佐倉でロシア人が街中を歩いていたという記事を探している。(千葉県立中央図書館)

習志野市や佐倉市のロシア捕虜収容所について調べている。ロシア人捕虜が列車で送られてくる様子が書かれた... | レファレンス協同データベース

 

〇明治41年(1908)に千葉県の習志野や下志津などで陸軍の軍事演習があったが、当時陸軍士官学校に在籍していた東久邇宮稔彦王・北白川宮成久王・朝香宮鳩彦王の3人がそこを訪れたという新聞記事を探している。(千葉県立中央図書館)

1908(明治41)年3月から4月に、千葉県の習志野や下志津などで陸軍の軍事演習があったが、そこを当... | レファレンス協同データベース

〇大正4年頃、東本願寺(浅草)にドイツの俘虜(捕虜)が短期間捕われていた時の写真あるいは新聞が見たい。(台東区立中央図書館)

大正4年頃、東本願寺(浅草)にドイツの俘虜(捕虜)が短期間捕われていた時の写真あるいは新聞が見たい。 | レファレンス協同データベース  

〇第一次世界大戦当時スペイン風邪が流行し、ドイツ人捕虜の多くが習志野にいた4年間に死亡したことが記載されている新聞が見たい。(台東区立中央図書館)

当時スペイン風邪が流行し、ドイツ人捕虜の多くが死亡したことが記載されている新聞が見たい(習志野にいる... | レファレンス協同データベース

〇谷津干潟について、昭和30年頃の地図や、昔の様子がわかる資料が見たい。潮干狩りができた等と聞いたことがある。(千葉県立西部図書館)

谷津干潟について、昭和30年頃の地図や、昔の様子がわかる資料が見たい。潮干狩りができた等と聞いたこと... | レファレンス協同データベース

〇昭和33年の習志野市の電話帳を閲覧したい。(千葉県立中央図書館)

昭和33年習志野市の電話帳を閲覧したい。 | レファレンス協同データベース

〇千葉県内にあった3つの百貨店(松屋船橋店、銚子十字屋、津田沼高島屋)の開店・閉店について記事や広告を探したい。(千葉県立中央図書館)

千葉県内3つの百貨店(松屋船橋店、銚子十字屋、津田沼高島屋の店舗)の開店・閉店について記事や広告(開... | レファレンス協同データベース

〔松屋船橋店というのがあったんですね。現在の、本町セントラルビルだそうです〕

 どうでしょう。「こんなことを聞いても、かまわないんだ」と思われたのではないでしょうか。例えば、JR津田沼駅北口が区画整理される前の地図が見たい。サンポー(三宝)ショッピングセンターは、今のどこにあったのだろう、などという質問も立派なレファレンスになります。

(「津田沼の今昔」より)

図書館は情報の宝庫、使わないと「損」

 まさに図書館とは「情報の宝庫」なのです。「どうせわからないだろう」「こんなことを聞いては笑われるのではないか」などと尻込みしてはもったいない。充分に活用すべきなのです。

 なお、司書にも得意分野、不得意分野があります。場合によっては、すぐその場でいい答が出ないかも知れません。しかしその場合、他の司書と相談したり、他市の図書館にその分野が得意な人がいれば問い合わせてくれたりするものです。また、若い司書であれば、そうやって経験を積むことで腕を上げていく。言い換えれば、利用者が司書を育てるといった側面もあるのです。そういう意味でも、「公営無料貸本屋」としか思っていない、などということは実に「損」なことなのです。

 最後に、図書館のホームページにはこんな情報も出ています。

習志野市立図書館/デジタルアーカイブ「昔の写真で見る習志野の歴史」

習志野市立図書館/デジタルアーカイブ「昔の写真で見る習志野の歴史」

 

 

 

習志野市の歴史に関する基本的資料

https://www.narashino-lib.jp/TOSHOW/pdf/narashinoshi%20rekisi.pdf

習志野市に関する新聞記事見出し(平成14年4月分から)

https://www.narashino-lib.jp/TOSHOW/html/kyoudo_gyousei.html#kg02

 図書館を上手に活用して、あなたも習志野の歴史を発掘してみませんか。そして、面白い史実がわかったら、ぜひ「住みたい習志野」に投稿してください。お待ちしています。

〔実践例〕
大久保の「馬頭観音」について調べてみると…

大久保の八幡公園にある軍馬慰霊碑の中に「馬頭観世音 坂西謹書」と書かれているものがあります。「坂西」とは誰なのでしょうか。

 まず、陸軍将官総覧といった類の本を見て、坂西という将軍(碑の揮毫きごうを頼まれるような人は高級将校でしょう)を探してみます。すると、坂西は「ばんざい」で、坂西利八郎(陸軍中将、1871~1950)、坂西一良(陸軍中将、1891~1946)という人が見つかります。さらに読み進めると、一良は利八郎の養子であるとか、利八郎は砲兵科出身、一良は歩兵であるといった情報が集まります。しかし、二人とも騎兵ではなく、習志野にいた部隊に勤務した様子もありません。

 「馬頭観世音」と書いてあるのですから、軍馬の慰霊碑でしょう。そこで今度は、坂西という軍人で馬に関する著作がある人はいないかとレファレンスをしてみると、次のような古い児童書が見つかりました。

戦時絵本 馬ノオヒタチ 吉澤廉三郎他画/坂西平八(陸軍少尉)文 (株)日本保育館 昭和18年 | 古書 古群洞 kogundou@jcom.zaq.ne.jp

戦時絵本 馬ノオヒタチ 吉澤廉三郎他画/坂西平八(陸軍少尉)文 (株)日本保育館昭和18年 ¥15,000海老根駿堂/澤井一三郎/立野道正/...

古書 古群洞 kogundou@jcom.zaq.ne.jp

 

戦時絵本 馬ノオヒタチ 指導・陸軍省馬政課・農林省馬政局・日本馬事会、画・吉澤廉三郎他/文・坂西平八(陸軍少将) (株)日本保育館 昭和18年

 今度は、この著者・坂西平八の経歴を調べてみましょう。坂西利八郎中将の弟です。

明治38年 陸軍士官学校卒業(17期)、砲兵少尉

昭和6年 砲兵大佐、独立山砲兵第1連隊長

昭和8年 野砲兵第26連隊長

昭和11年 陸軍少将、野戦重砲兵第1旅団長(国府台)

昭和13年 予備役

 兄・利八郎と同じく砲兵科で、騎兵ではありません。また、習志野にいた様子はありませんが、国府台に勤務しています。ここで、砲兵もまた、重い砲車を引かせるのに馬が必要だったことが思い出されます。馬だから騎兵、と思うのは早計というものでしょう。

 こうした材料から、「馬頭観世音」の碑は坂西平八少将が揮毫したのだろうと推理されます。なぜ、国府台にいた坂西少将の筆になる碑が習志野にあるのか。それはさらに調べていかなければなりませんが、もしかするとこの碑は八幡公園に移される前、騎砲兵連隊にあったのかも知れません。そうであれば、砲兵科の坂西少将に揮毫を頼んだということもあり得ないことではないのではないか。そんなことも考えられるのです。

 公園の片隅にある碑が、誰の書か。そんなどうでもいいようなことでも、郷土史を復元していくジグソー・パズルの一コマです。そして、古い書籍の情報からそんなことを推理することも出来るのです。面白いと思いませんか?

またお会いしましょう

さて、これまで習志野歴史散歩の記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。20回にわたる歴史散歩シリーズを一覧でご紹介したいと思います。また皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。(ニート太公望)

第1回
習志野歴史散歩:谷津球場、巨人軍発祥の地 - 住みたい習志野
第2回
習志野歴史散歩:寅さんと谷津遊園の大観覧車 - 住みたい習志野
第3回
習志野歴史散歩:谷津遊園の中にお城みたいな映画撮影所があった - 住みたい習志野
第4回
習志野歴史散歩:戦争中、習志野にB29が墜落していた - 住みたい習志野
第5回
習志野歴史散歩:「習志野」の由来と宮本武蔵 - 住みたい習志野
第6回
習志野歴史散歩:袖ヶ浦東小学校のSLは大正生まれのドイツ製 - 住みたい習志野
第7回
習志野歴史散歩:平安時代の「更科(さらしな)日記」に習志野市が出てくる - 住みたい習志野
第8回
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