この一滑は絶対無二の一滑なり

シーズン終了。それにしても雪不足で大変なシーズンでしたね!

山足主導・谷足主導の技術論

2011-04-07 20:16:32 | スキーの話題一般
 




以前の記事で、基礎スキー技術を語る際には、内足・外足(図1)という用語よりは山足・谷足(図3)という用語を使った方が技術要素が明確になるというお話をしました。(図は以前の記事のものを再掲したものです。)

そして巷で言われている内足主導なるものが谷足荷重切り替え(谷足主導)という技術に他ならないことも指摘しました。

谷足主導に対する技術として、山足荷重切り替え(山足主導)という技術があります。切り替えにおいて山足への荷重を強めてゆき、山スキーのアウトサイドエッジからインサイドエッジへ角付けの切り替える滑り方です。

アルペン競技選手の滑りをスローでじっくり観察すると、明確にこの山足荷重切り替えを主体にして滑っていることが分かります。つまりスピード対応性や安定性・コントロール性において優れた滑り方であるということです。

これを脚力を必要とする筋力系の滑りという誤解がありますが、筋力を最も効率よく使う滑りであるというのが正しい理解です。ノーマルスキー板からカービングスキー板へと用具の変遷がありましたが、競技スキー・基礎スキーを問わず、この山足主導は昔から変わらないスキーの基本となるベース技術です

たいていの初中級スキーヤーはターン弧の外側の足(外足)だけに荷重するいわゆる外足主導(図1)で滑っています。それを山足への荷重始動を早めるだけで容易に山足主導(図3)へ導くことが出来ます。一般レベルのスキーヤーに対しては、外足主導から山足主導へと導くのがもっとも自然で上達が早い指導方法だと思います。

他方で谷足荷重切り替えの技術は、外への遠心力に耐えている谷足の股関節を緩める運動(いわゆる脱力系運動)によってスキーの向きを下向きに落下させる(いわゆる自然で楽なスキー)なので、一見楽に落下運動および回旋運動を誘発できますように感じます。

確かに、緩斜面のロングターンや中斜面での小回りなど、バーンコンディションが良い状況・滑りに筋力の要らない状況では有効な滑り方だと思います。また、急にスキーを下に向けたいとき(例えばリカバリー時)にもしばしば使われる技術です。

しかしながら山足主導と比べて動かすべき身体箇所が多く、また谷側に重心を移動する必要があるので恐怖心を生じ、習得が難しいという問題があります。そして最大の欠点はスピード耐性や安定性において劣ることです。

ハイスピード滑走時に谷足主導を使うと、山回りで強い負荷が掛かってロックしている谷足のエッジを切り替えるという非常に難しい技術を必要とし、切り替え後に谷スキーがグリップを失うミスが発生しやすくなります。それが原因で谷側への転倒を誘発し、膝などを負傷するリスクが高まります。それを防ぐためには、切り替え時に強い負荷が掛かっている谷スキーにしっかり荷重したままエッジを切り替えられるだけの強い脚力と、支えのない谷側に谷回りで重心を落とせる勇気が必要となります。

このように、谷足荷重切り替えの技術は習得が難しいだけでなく、高速滑走のようなシチュエーションには適さないという点で、一般スキーヤーの習得目標とすることには難点があると思います。

他方で、山足主導を習得しさえすればどんなバーンに行っても安定して滑ることができます。一級レベルまでの一般スキーヤーはまずは山足主導をしっかり身に付けること。その上で余裕があれば谷足主導も使えるようになると滑りの幅が広がると思います。

スキー教師やテク以上の上級スキーヤーにとっては、以上のような技術特性を理解した上で、シチュエーションに応じてそれぞれの技術を使い分けできなくてはなりません。

谷足主導・山足主導、内足主導・外足主導のどちらか一つが技術習得の目標ということではなく、「求められる状況」に応じて自在に使い分けられ表現できることが、上級スキーヤーには必要になると思います。