降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★74年前の焼き込みに驚いた=東京日日篇❺

2014年12月23日 | 新聞


【きのう12月22日付の続きです】
ついつい最近(1990年代前半)まで、鉛活字と凸版(とっぱん)、黒インクを使って活版で組みあげていた新聞。
僕たち新聞社整理部から見た、活版鉛活字組み版から第1期CTS(コンピューター組み版・編集)までを後世に書き遺しておこうかな、と。

お断り=紙面は「激動の昭和史を読む/太平洋戦争の記憶」(アシェット・コレクションズ・ジャパン発行)の毎号コレクションズから。
当時の社会情勢や政情などには言及せず、ただ単に
「60年以上前の、昭和初期の鉛活字組み活版新聞紙面はどーなっていたのだ?アーン?」
に注目しました。
「倍」「凸版」など新聞製作で使う用語は、繰り返し(クドイかもしれないけど )注釈をつけました。
というわけで、復刻新聞紙面を見た・読んだ第48回。


昭和15(1940)年9月26日付・復刻版「夕刊東京日日新聞」篇❺
とても74年前の新聞とは思えない(←そりゃまぁ、記事や見出しの文字づかいを見れば一目瞭然だけど)。
重ねて書くけど、これだけの小さな鉛活字(*1)を一本一本すべて手で拾って組んでいたことに、
「はぁ~~~」
ため息が出てしまうし、
4段ハコ(紙面上から2段目)を見て
「ほぉ~~~~、これはこれは……」
と感心してしまう。

【凸焼き込み・切り込みは大変なのだ】
2段目4段・全角グニャリケイ(*2)巻き
描き文字カット「景風新の街」(→街の新風景)
3倍M体「會組隣で屋呂風たい空」(→空いた風呂屋で隣組會)Mは明朝体

天地35倍・左右49倍写真に、「街の新風景②」が焼き込んである。
………これ、どうやったんだろう?
①凸写真板に、整理面担が糸ノコでギーコギーコして描き文字カットを組み入れたのか。
あるいは、
②写真製版時に、同時に焼き込みをしたのだろうか。
たぶん①だろうけど、これ、とても大変だし、誤って手を切ってしまうおそれもあるのだ(→活版組み版時代、先輩整理が大組み台でギーコギーコと苦労しているのを見たから、僕はやらなかった、笑)。

【さらに、鉛活字を組み込みしているし!】
描き文字カットの余白に合わせて、鉛活字を組み込みしているのも、ビックリ。
芸が細かい。
記事は「25日」のことで、掲載は「26日付」だから、作り置き(*3)ではなさそう。
あらためて、人の力だけでつくる凸製版技術と、当時の活版組み版技術にため息をついてしまった。

(*1)小さな鉛活字
1倍活字で、天地88ミルス・左右110ミルス。1段(1行)には15字入った。
1倍=全角=88ミルス=CTSの8U(Uはユニットの略)
すべて文選手拾いで、はやい文選工だと1分間に4~5行は活字を拾ったと聞いた。

(*2)全角グニャリケイ
波打つようなケイ。
正式なケイ名(ケイ番号)があるのかもしれないけど、整理部から「全角グニャリケイで巻いといてね!」と指定すれば、小組みで同ケイが入っていたから、まぁいいのかぁ、だった(笑)。

(*3)作り置き
ニュースものは当日つくって掲載するけど、
速報性がなく日付がさほど重要ではない「このほどモノ」「季節・企画モノ」は数個作り置きし、製作局活版部の大組み台下の棚で保管していた。
ただ、ナンバリングに気をつけないといけなく、僕は何回掲載番号を間違えたことか…… (>_<)