降版時間だ!原稿を早goo!

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「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★アノ人も登場、若杉冽さん告発ノベル❷

2014年12月12日 | エンターテインメント

【きのう12月11日付の続きです】
なんとしても「2014年12月10日」前に刊行しなければならなかったのではないだろーか、現役キャリア官僚の若杉冽さんは。
12月10日は特定秘密保護法施行日。

『東京ブラックアウト』(若杉冽さん、講談社刊、本体1,600円=写真右)を読んでいる。
我が身と立身出世しか考えない集団だろーな霞が関は、と思っていたけど、それ以上の体たらく。品性劣悪なり(←多少は誇張して書いていらっしゃるのだろーけど)。
読んでいて、ハラが立つハラが立つハラ辰徳。
原発再稼動に急ぐ政権と暗躍する関東電力、近い将来必ず来るであろう大地震と火山噴火をかんがえたら、震える震える震えるうえにハラが辰徳。

第5章「天皇と首相夫人と原発と」には唸ってしまった。
若杉さんは御所に行かれたことがあるのだろう、御所内インテリアと来客接遇メニューが実に詳細(→調べれば分かるのかしらん)。
以下、本文から引用しました。

陛下が私的旅行として足尾銅山の跡地を訪問されたことも、原子力災害を二度と繰り返すことのないようにとの陛下の強い意志の表れである。
(中略)
「ときに井桁さん」(僕註=原子力規制庁長官・井桁勝彦)
と、陛下は微笑みを浮かべながらも、それでもどこか寂しそうな表情で、井桁長官に声をおかけになった。
テーブルの上には、ウェッジウッドのワイルドストロベリーに注がれた紅茶のそばに、角砂糖、ミルク、レモンスライス、そしてプティフールがいくつか添えられている。
御所での来客への接遇は、大衆が想像するよりも遥かに質素で、ありふれたものなのである。

(中略)
「原発でフクシマ以上の事故が起きたときに、災害対策本部が立ち上がり、総理が本部長として指揮を執ることが法律には書いてありますね。
しかし結局のところ、いったい誰が責任を持って事故を収めることになるのですか?」
井桁は、この陛下のシンプルなご質問に答えられない。

(中略)
陛下の目の焦点は相変わらず遠くで結ばれたままだ。陛下の疑問は、井桁ではなく、井桁の背後に潜む、戦前から連綿と続く官僚制、そのものに対して問いかけられているのだろう。
(中略)
「もうよい、井桁さん」
陛下は悲しそうなお顔で、その視線の焦点を、ようやく井桁に合わされた。
「........これは、警察と自衛隊の縄張り争いの話ではありませんよ」

(後略)

描写が巧いなぁ、と思う。
自衛隊法、原子力災害対策措置法改正、警察、消防などのデータを駆使して、法の不備と縦割り官僚制の危うさを突いていく。
前作『原発ホワイトアウト』と同様に、首相や夫人、代議士、電力会社が〝分かりやすい〟表記で出てくるからいいのだけど、
なおさら若杉さんの身辺が心配になってしまう。
................長くなったので、再び続く。