降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★ヤスオさんより『国境』(今は)。

2014年12月05日 | 新聞/小説

この手が、あったか!.......と思った。
僕より上の世代の作家(*1)のデビュー小説(*2)ぐらいは昔読んだけど、当時の印象は
「ほぉ、そーですかぁ。いーですねぇ」
ぐらいだった。

それから、33年。
薄いブルー(*3)のジャケットに、オビただしい文字のオビがついた新刊が、
書店一等地に平積みされていたので、買った。
河出書房新社『33年後のなんとなく、クリスタル』本体1,600円=写真右
この手があったか、2度おいしいぞ。
もとクリは1980年(*4)、第17回文藝賞を受賞した『なんとなく、クリスタル』(現在、河出文庫収録)で、新刊は〝いまクリ〟とか。

「いまクリ」書き出し。
2013年7月、東京。
夕方、トイプードルのロッタを散歩に出掛けたヤスオさんが、水玉模様のブラウスに枇杷茶色(*5)のスカートを合わせた年配の女性に会うシーンから始まる。
年配の女性に
「投票の帰りなの」
と言われ、ヤスオさんは戸惑ってしまう。
その後、33年の年月を経て50代になった由利と出会い、2人はムニャムニャ(←言えません).........。

「いまクリ」カバー折り返しには、可愛いトイプードル・ロッタが微笑むカラー写真。
「みんな読んでね♡ロッタ♡」
とあり、読者サービスは相変わらず万全でございます(♡マークにはガックリきた。相変わらずなヤッシーさんでございます)。


ということはさておき、今は国境なのだ。
僕は、きのう4日発売した黒川博行さんの文庫新刊
『国境』(文春文庫12月刊、上下巻)=写真左
を急ぎ再読(*6)しはじめたのであります!
北朝鮮潜入という疫病神シリーズ最高の超弩級スケールだから、もう一度読みたい!待っていましたよん!
文庫解説は〝イオリン〟藤原伊織さんだし!(*7)
(いかんいかん「!」アマダレ連発になってしまった)


いまクリに負けず、たくさんの註をつけてみた。
(*1、2)上の世代、デビュー小説
著者・田中康夫さんは1956年生まれ。元衆院議員(新党日本代表)。
1980年、一橋大在学中『なんとなく、クリスタル』を執筆、第17回文藝賞受賞し、ミリオンセラーとなった。
※1980年=山口百恵さん引退。ジョン・レノンさん自宅前で射殺される。
日本の自動車生産台数が世界一になり、米大統領選でレーガンが当選。
主なベストセラーは、向田邦子さん『思い出トランプ』山口百恵さん『蒼い時』など。

(*3)薄いブルー
C.M.Y.K(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)は分かりません(笑)。

(*4)「もとクリ」
もとクリはロバート・キャンベルさんがつけたとか。

(*5)枇杷茶色
C=0,M=29,Y=55,K=32。
黄褐色は、C=0,M=31,Y=91,K=59。
..........と、「もとクリ」と同様に巻末注に記してございます。

(*6)『国境』再読
黒川博行さんが第151回直木賞受賞後も、講談社文庫だけは増刷をかけていなかった。
受賞作絡みで角川文庫かな、と思ったけど、『後妻業』で文春。
講談社単行本は2001年刊、同社文庫には2003年に入った。
僕は、ぶ厚い講談社文庫版で読んだ。

(*7)イオリン・藤原伊織さん
藤原伊織さんは2007年5月死去。
黒川さんは11月30日付日経新聞・読書欄で
「(イオリンは)わたしのいちばん親しかった作家であり、もっとも頻繁に卓を囲み、酒を飲んだ作家だったから、ことあるごとに彼のことを思い出す。」
と記していた。
こんどの文春文庫版に、講談社版の伊織さん解説(2003年9月)を載せるなんて、
(黒川さんからの要請もあったのだろうけど)文春編集担当の粋な配慮に拍手。