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絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

テーマと作品 続1

2010-09-15 | 絵のこと
テーマのない絵はないと言っていいでしょうか?

どんな絵にも、絵を描きたいと思った動機があるわけだから、それが絵のテーマであるはずです。そう考えたら、テーマのない絵はないのかなと思ったりします。

しかし、私が人に対して、何かテーマのある物を描いた方がいいですよと言うのですから、テーマ性を感じる物と、あまり感じない絵があるんだなと思いつきます。

要するに、絵とは広々とした気持ちのいい風景を描くものだと思って描いているような平凡な絵を見るとそう思うのだなと思います。また誰もが描くようなものをほとんど何も考えずに先生が与えてくれたモチーフで、ただ描いているだけに見える絵の場合、テーマが見えてこないと感じるようです。

だから、言いかえると、他の人が描かないような自分独自のテーマを見つけよということです。そうしたものが感じられるとき、テーマ性があると言っているようです。

自分がなぜ、そんなことを言うのかと分析してみると、そういう意味なのです。
もっと言えば、「平凡でなく、自分独自の描く物を見つけてください」と言っているのです。

ーーーーー
この文章を描きだしたきっかけは、テーマと作品でした。

やっと、前置きを終えて、今一番考えてみたいことに入れます。

テーマが設定されて、それが見る人に伝わる。これが最も良いことです。
そして、その伝える手段が絵画である。と考えてみます。

では、絵は伝達手段なのか?

ある種の絵画はおそらくそうでした。例えば宗教画です。
これは、文字が読めない人に伝えるには、最高の手段でした。
昔は文盲の人がたくさんいました。だから、聖書を見せても読めないのです。
その点、絵画は世界共通語です。だから、説明をするのにとても都合の良い物でした。
この意味では、絵画は手段です。絵の良し悪しは関係ありません。
もちろん、きれいで上手な絵の方が、印象に残ったり、伝わりやすいでしょう。
だから、絵の印象は大切ですが、最も重要なことではなかったのです。

しかし、現代の絵画はそうではありません。それは、写真の発明から違ってきました。
絵の代わりが簡単にできる写真の登場によって、伝達手段としての絵画の役割は減りました。
しかし、テーマが絵そのものではなく、背景に隠れた政治的意図であったり、抽象的なテーマであったりする場合には、絵が手段になっている場合もあります。

しかし、絵が良いか悪いかという価値判断をする場合には、そのテーマがよく伝わるかどうかは、別問題になることもあります。
なぜなら、絵の良い悪いは、抽象的に見るからです。
色が良いかどうかは、抽象的な問題です。構図が良いかどうかも造形要素に照らして、バランスがいいとか、調和が取れているとか、リズムがいいとか、アクセントが聞いているなどという抽象的な問題なのです。
色と形の問題が絵の質の高さを決めます。

だから、この絵は、背景に戦争があって、ピカソがナチスドイツに対して怒って描いたのだというゲルニカは、そう説明されなければ、全く分からない訳です。
何も言わなくても、あの絵を見ただけで分かる人がいたら、天才でしょう。

確かに、なにか異様ではあります。しかし、少しひょうきんな感じがしたり、漫画的であったりするので、それが、そのような深い意味を持った絵であることに私は説明されるまで、気づきませんでした。

むしろ、テーマを伝えると言うことからしたら、言葉の方がよほど伝わりやすい場合があります。ただ、言葉は消えてしまうし、文字にされても外国語では読めないという人が多いでしょう。しかし、絵にした場合には、だれでも見えます。そして残ります。しかもそのことをあのように8メートルもの大きさで描いたということもインパクトがあります。
後から、説明をきいて改めて見直すと、それの持つ意味が言葉よりも何倍も強い印象として残ります。そういう意味では、唯見ただけではわからないものでも、その後の影響力はとても強いということが言えますね。

だから文字ではなく、敢えて絵に描くという意味が生まれます。
伝達手段としての絵画と言っても、馬鹿に出来ない役割です。

ーーーーー

では、絵はテーマを伝えるための伝達手段なのか?ともう一度考えてみます。

もちろん、そういう側面を持つことは否定できませんが、テーマを抜きにしても絵の価値というものがあるということを言いたいと思います。

絵の展覧会で審査をする場合を考えてみると、大抵の場合、その良し悪しの判断は、抽象的です。色や形、造形要素で見ています。テーマが強く感じられる絵は、テーマも作品の評価の要素になりますが、絵の質の高さと言った場合には、ほとんどが抽象的な見方です。

絵の世界がどのように構築されているかという見方をします。
それには、モチーフの統一、リアルさの統一、光の統一、空間の統一なども質の高さにつながります。そして、活き活きした色彩、リズム感、補色の使い方、黄金分割なども要素として入ってきます。これらは、全てテーマが何であるかということとは別の話です。


結論は、

テーマと作品は、価値として別個に考えることができる。一致している物と一致しない物がある。絵の良し悪しは、見ればわかるけれど、テーマは説明されないとわからないものがある。説明をしないで、見る人に考えさせるものもある。気がついた時ハッとすることもある。

別個なので、テーマがなくてもいいかと問われると、テーマ性の弱い絵は、インパクトが弱くて、つまらない気がする。

だから、私が勧める絵は、絵の質が高くて、しかもテーマ性があるもの、見る人がそのテーマに気づいた時、作品そのものの質の高さがさらに高く感じられるような状態になっているものならいいと思う。そういうものを私はみなさんにお勧めします。





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テーマと作品

2010-09-15 | 絵のこと
テーマと作品

私がよく生徒に言っていたことは、ただ見える通りに描くというだけでなく、
何かテーマ性のあるものを描いてみようということでした。

では、そのテーマとは何か?
例えば、一つの物にスポットを当てるというか、何かをクローズアップしてそれだけが目立つようにするというような意味で言っていました。

具体的に言えば、いろいろな物を平均的に描くのではなく、一番主張したいものを大きく目立つように描くということも一つの方法でした。
他には、それだけに光を当てて、他の物を暗い影の中に入れてしまうということもその一つでした。

簡単に言えば、そのくらいの意味で話していました。
今も同じことを言っています。

ーーーーーー
テーマという事を考えると体系的に全てをまとめるのは、結構大変です。

例えば、モネの睡蓮、ゴッホのひまわり、ドガの踊り子,セザンヌのリンゴなどが思いつきます。
これらもその画家にとって、一つのテーマです。
自分が気にいった一つの物を設定して、それを何枚も描く。そういう場合、一つのテーマを追いかけていると言われます。自分の代表作となるような一つの物を見つけて描き続けることもテーマ設定の一つです。この場合は物ですね。

また、印象派の画家と言った場合には、ゴッホは少し違いますが、モネやピサロやシスレーなどは、光を追究しました。本当の光を描こうとしたのです。
だから、この場合は、何か物というより光です。言い換えると空気かもしれません。
光や空気は、一つでは見えません。しかし、時間によって、天気によって、季節によって、その場の雰囲気を変えます。これもテーマです。

ピカソのゲルニカは戦争に対する怒りでした。泣く女という絵もありますが、喜怒哀楽もテーマの一つになります。

ムンクの絵からは、無常感というものを感じます。死を見つめて、人生とは?というテーマが見えます。

ミレーの落ち穂拾いを見ると、農民の苦しさを感じます。労働の尊さを感じるという人もいます。そして、それが政治に利用されました。ゴッホはミレーに引かれて、同じテーマで描いています。

そして、ヨーロッパでは、最もよく描かれたのが、宗教画や神話画です。これこそ最も代表的なテーマです。

現代になると、絵そのものがテーマになって、平面を追究するというステラのようなテーマもあります。

スーラのように点描という技法そのものがテーマになった人もいます。

ピカソが形を解放してキュービズムも、色を解放したマチスもどちらもそのこと自体がテーマでした。

こう考えて行くと、随分いろいろなテーマがあるものです。(まだまだ、語りきれていませんが)

ーーーーー
つづく
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美術史クイズ 75

2010-09-15 | 美術史クイズ
美術史クイズ 75



第1問 この黄金のマスクは、誰のマスクですか?

第2問 この人は、何歳でファラオになりましたか?

第3問 この人は、何歳で死にましたか?

第4問 この人の墓を発見した人は誰ですか?

第5問 この人の奥さんは何という名前ですか?

第6問 この人の後にファラオになったのは、誰ですか?



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高校生の絵 108

2010-09-15 | 高校生の絵
水彩画の60号です。
県展の会場で撮影しました。
高い所に飾られたので、見上げた写真ですみません。

大きな空に雲がたなびき、送電線の鉄柱があり、広々とした大地にその影を落とす状態を面白く描いてくれました。



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