独断偏見妄言録 China's Threat

中国は人類の命運を左右する21世紀最大の不安定要因

三橋貴明氏の間違い

2010年06月20日 11時45分44秒 | 日本
最初にお断りしておきますが、私は三橋氏の支持者です。ささやかながら献金させていただきました。三橋氏が無事に当選され、フレッシュな感性と正しい経済政策により日本の再生に貢献されることを願っています。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/

ただ、三橋氏が支持されているリチャード・クー氏のバランスシート不況説は間違いではないかと考えます。間違った学説に基づいた政策は国民を不幸にします。

バブルとは山を登ることであり、バブル崩壊とは山を下ることであるとすれば、山に登って下れば元に戻るだけであり、マクロに見てバランスシートの大きな毀損はないはずです。
つまり、バブル崩壊に伴なうバランスシートの毀損が不況の原因とするリチャード・クー氏は根本のところで間違っているのです。山を登る過程で大儲けしたものがいることをすっかり忘れているのです。

不況そのものは事実ですが、その原因の説明がきちんとなされないまま、カンフル剤的な効果しか期待できない財政出動が繰り返され、巨大な財政赤字が残っただけの今日の日本があるのではないでしょうか。

たまたまバブル崩壊とほぼ同時期にグローバリゼーションが叫ばれ、大企業の海外進出による国内産業の空洞化が急速に進行しました。これこそが不況の根本原因ではないかと私は考えています。

産業空洞化とは、国民が受け取るべき賃金が海外に持ち出されて国内から消失することです。他方では、安値品の大量流入によって国内企業が苦境に立たされ、それがさらに賃金の低下をもたらしました。低賃金にあえぐ若者は結婚もままならず少子化が進行し、これらが合わさってデフレスパイラルへと転落した、と考えればこれまでの出来事を矛盾なく説明できます。

900兆円に迫る財政赤字が積み上げられましたが、いまだにデフレ脱却の道筋が見えないという事実は、財政出動が足りないということではなく、バランスシート不況説が本質から外れていることの証拠と見るべきでしょう。

では、どういう対処が正しいのか。
手がかりは反グローバリズムにあります。

スティグリッツの「世界を不幸にしたグローバリズムの正体 」はずいぶん前に出版されましたが、彼は発展途上国の悲惨のみを問題にしていました。今やグローバリズムの害毒は米国をはじめとする先進国を蝕み始めているのです。
米国は自ら主導したグローバリズムによって今まさに窒息しようとしているのです。

あのルーピー鳩山はただひとつだけ正しいことを言いました。
昨年の衆院選直前にNYT紙に掲載されたルーピー鳩山論文の冒頭部分を思い出してください。
In the post-Cold War period, Japan has been continually buffeted by the winds of market fundamentalism in a U.S.-led movement that is more usually called globalization. In the fundamentalist pursuit of capitalism people are treated not as an end but as a means. Consequently, human dignity is lost.

ルーピー鳩山が犯した間違いは、反グローバリズムを掲げながら、グローバリズムにより最大の恩恵を受けて一人勝ち状態の中国に接近しようとしたことです。

今の日本の問題は欧米にも共通する問題であり、それこそが世界経済が危機的状況に陥っている理由であると考えます。グローバリズムは一部の巨大企業と中国に繁栄をもたらしましたが、日本を含む世界の大部分の国家と国民を不幸にしたのです。

G20などの首脳会議が開催されるたびに反グローバリズムを叫ぶ過激派があばれますが、彼らを単なる過激派と見なして排除するのではなく、彼らの主張にもよく耳をかたむけるべきです。
グローバリズムは決して天から授かった絶対不変の大原則ではありません。不都合があれば修正すればいいのです。

世界は今一度グローバリズムの利害得失を熟慮し、中国一人勝ち状態を修正するべく行動しなければならないと考えます。

新しい世界経済秩序においては、野放図なグローバリズムの横行が制限され、保護主義的な要素が取り入れられなければなりません。


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3 コメント

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初めてコメントします。 (Caesar)
2010-07-22 10:26:33
初めまして、三橋さんの理論に強く惹かれているものです。

リチャード・クー氏の理論への批判のところで、「バブルとは山を登ることであり、バブル崩壊とは山を下ることであるとすれば、山に登って下れば元に戻るだけであり、マクロに見てバランスシートの大きな毀損はないはずです。
」の箇所が気になったので、コメントを書かせていただきます。

僕はやはり毀損すると考えてます。
山を登って降りるなら一緒でしょう?といわれますが、それは株で損した人と得した人の合計額は一緒であるという前提に立たれているのではないでしょうか。
たとえば、ある株(土地でもいいです)を100円で買ったAが、200円でBに売り、下落により20円でAが買い戻した場合、Aが1株持っていることは同じですが、Bは180円の損、Aは100円の得することになります。
株を資産として二人の資産を計算すると、Aは100円の株→200円+20円=220円、Bは200円の現金→20円の現金ですから、A+Bは300円→240円となります。
つまりAは得しているけれども、ABのトータルではマイナスになっており、損のほうが大きいことになります。そうすると、得した人もいるから関係ないとは言い切れないのではないでしょうか。

まだ経済学の初心者の意見なので、何か間違いがあれば指摘してください。
バランスシート説の間違い (stopchina)
2010-07-22 18:09:20
レスありがとうございます。
三橋氏のブログには五郎というHNでコメントを時々書いています。

まともな反論を初めていただき、喜んでいます。

私も経済の初心者ですが、クー理論は間違いだと確信しています。

あなたの間違いは(失礼)、山を降りたら、バブル前よりはるかに低くなっていた、という前提部分ではないでしょうか。
株については記憶があやふやですが、少なくとも不動産については崩壊後の低下はかなり緩慢でした。バブル前にもどるのに10年以上を要したのではないでしょうか。

クー氏の理論では、バブル崩壊により1000兆円に達するバランスシートの毀損が生じた(数字は不正確)。
だから、その分を財政出動で補うべきだ、ということだったと記憶しています。

現実にはそんなに巨額の毀損は生じていないのではないか、と私は見ています。
銀行の不良債権はたかだか数十兆円でした。

この20年間で900兆円に達する財政赤字が積み上がりましたが、依然としてデフレが続いています。

つまり、日本の経済不振の原因をバブル崩壊に求めるのは無理があるということではないでしょうか。

原因は別にあるはずであり、それはグローバリズムだと私は考えています。

欧米の経済不振の原因も同じでありましょう。米国はそのことを内心では理解しており、中国に人民元切上げを要求しているわけです。しかし、グローバリズムを主導した手前、それを全面的に否定することができない、というジレンマに陥っているのではないでしょうか。
株価・地価の変遷 (stopchina)
2010-07-23 00:50:03
http://www.nara-su.ac.jp/econ/PDF/yamamoto.pdf

バブル崩壊後の株価と地価の下落ですが、もとの水準まで戻るのはおよそ10年後であることが上記リンクでわかります。

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