イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

黄色いジャケットを着たハチの王国のつかの間の盛衰。我が家で起こった殺戮の記録

2023年07月28日 07時00分02秒 | 英国の、生活のひとコマ

1週間ほど前から、玄関横の窓の周りをハチがぶんぶん飛びまわり始めました。

「ワスプ wasp 」と呼ばれる怖い顔をした獰猛なハチです。

(Wikkipedia から勝手に借りた写真です)

いちばん上の写真のフワフワ毛が生えていてコロッとした形の愛くるしい「バンブル・ビー bumble bee (マルハナバチ)」と違って、ちまたの評判はよくありません。

...日本語は「狩バチ」(厳密には差異があるそうですが)だそうです。

「狩バチ」も「ワスプ」も獲物の昆虫に麻酔をかけて動けなくして、生きたままエサにするというおぞましい特性を持った多くの種類のハチの総称だそうです。「ワスプ」という種類のハチだとずっと思っていました。「狩バチ」なんて和名も初耳です。

そのワスプ(俗称、イエロー・ジャケットという種類だそうです)が玄関わきの...

壁の内側に巣を作ったようなのです。

レンガひとつひとつの角が少し欠けてすき間があるでしょう?

そこのすべてが出入り口らしく、ワスプが次々と出たり入ったり。その数が日増しに増えてきています。

ワスプの王国が空洞のレンガ壁の内部で形成、発展しつつあるようです。

一昨日、夫が市の害虫駆除 pest control 担当に連絡をして地域のハチ専門駆除業者の連絡先を教えてもらい、その日のうちに来てくれるよう依頼しました。

1時間半後、約束の時間ほぼピッタリにハチ退治の男性が普通の自家用車でやってきました。

簡単なワスプの生態に関するレクチャーを一席ぶって、さっそくハチ退治にかかりました。家の中に入っているように私たちに指示して...

ゴーストバスターのような防御服をジムに行くようなスポーツウェアの上に手早く身に着け、霧のように噴出するおっかない白い粉を穴のひとつに吹き込む処置をしてくれました。

1分もかからないうちに、作業は終了。

人畜無害、ハチにだけ効く特殊な毒薬だそうです。葉っぱが一部白く染まった20年モノのバラの木も無事です。今までどこにいたんだろう、と思われるようなものすごい数の、外に出ていた兵隊バチが自宅の一大事を感知して戻ってきました。巣穴のそばは飛び回るハチでいっぱいです。

ハチはものすごく怒っているようでした。私たちがこっそりワスプマンと呼んだハチ退治人(wasp controller) の顔を総攻撃していました。

巣の中の女王様と卵と幼虫は即死です。

駆けつけた自宅入口で毒の霧を浴びたワスプたちも時を置かず死亡します。外出していて難を免れたワスプたちも帰るべき王国を失えば路頭に迷ってそのうち死んでしまうそうです。

王国(コロニー)を形成できるのは女王バチだけだそうです。

王国壊滅の悲劇です。

これだけ群れたらそのうち人が刺されてひどいことになるという理由で依頼したハチ退治ですが、特に何も悪いことをしていないハチにひどく申し訳ないことをした気になりました。

 

毒薬注入後、10分ほどたって怒るハチたちがだいぶ分散した後そっと外に出て様子を見てみました。

翌日になってもまだ帰宅バチが2匹バラの木の周りを寂しそうに飛んでいました。本当にごめんなさい、ハチたち。

ミツバチも狩バチも、ハチは全てコロニーを作って生活します。

何千匹もいるコロニーのメンバーは全てメス、姉妹なのです。母親は女王バチ。じゃあみんな「お姫様バチ」なのじゃないかって...違うみたいですね。ほとんどのハチは下っ端身分なのです。

王家のメンバーとして威張っているのは数匹の雄バチだけ。数が多ければ兄弟で殺し合いをして残った1~2匹が王子様として女王バチ(実母)と夏のあいだずっと交尾して妹バチたちの父親としてコロニーの人口増産に力を尽くします。その威張っていた王子様も夏の終わりには母親である女王に食べられてしまいます。

ワスプがイモムシやハエ、クモなどの昆虫を生きたまま巣に持ち込むのは幼虫に食べさせるためだそうです。

成長したワスプはミツバチのように糖分を食料とするそうです。花の蜜を吸うよりも、果物にたかり、パブの屋外席で客のビールを失敬しに来るウザい生態がよく知られているのも嫌われる要因のようです。

他の昆虫に対するどう猛さで知られていますが、むやみに人を刺すようなことはないそうです。

(ここ数年間の、花盛りの頃の家の前の花壇の写真を探して載せてみました)

ちなみに、駆除の料金は消費税込みで60ポンド(10,678円)。

モーターバイクのヘルメットでもかぶって店で買ってきた殺虫剤を自分で壁の穴に噴射したら安上がりではないか、と思ったのですが、効果バツグン人畜無害のこのハチ殺しの毒薬はハチ退治の免許をもっている特定業者しか買えないそうです。夫が市の担当者に電話をかけた時、確認しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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犬と暮らせば (浅井洋)
2023-07-28 20:30:23
何時も何時も
 知らない事を
  画像の解説付きで
 教えて頂き
  感謝です
返信する
Bee (H.W.)
2023-07-29 10:21:24
丸っこくて可愛いBumblebeeは日本語では「マルハナバチ」というようです。ドイツ語ではHummelというのですが(スポーツ用品のブランド名にもありますね)、私はそれをずっと「熊蜂」だと思い込んでいて、ある時ちゃんと調べてみて「マルハナバチ」だと知りました。「ミツバチ」(Honey)Beeとは異なります。
私が住む所は結構田舎なので、Waspスズメバチもミツバチもマルハナバチも沢山います。Waspよりも更に危険なHornetも時々見かけます。
Waspはミツバチやマルハナバチと違って受粉をしてくれるわけではなく、ただ危ないだけのように見られている嫌われ者ですが、アブラムシを捕食してくれたりもするので、ウチ(の庭や特に温室)では許容されています。
ただ、Wasp(に限らずハチ)は確かに無闇に人を刺すようなことはしませんが、一度何かの拍子にうっかり刺されてしまうと、2度目以降にアナフィラシーショックを起こす可能性が増すそうです。それとWaspはいろんな所に巣を作るので、家屋で見つけたら早めに対処しないと面倒なことになるかも知れませんね。でも60ポンドって... うーん、安くはないですね。
お庭、綺麗ですね!花を咲かせるいろんな植物が植わっていて、「イギリスのお庭」という感じがします。
最初の写真、チャイブでしょうか?私は花もサラダなんかに“ふりかけて”食べてます。
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H.W.さんへ (江里)
2023-07-31 06:15:54
H.W.さん、そう「マルハナバチ」でした。ご指摘ありがとうございます。訳語、訂正します。
ホーネットはたしか、日本語でスズメバチでしたよね?オーストリアにもいますか?英語名があるぐらいなので英国にもいるらしいのですが(たぶん)見たことがありません。
日本のホーネットに関する自然ドキュメンタリーをテレビでやっていました。小さかった子供が「怖いから日本に行きたくない」というほど衝撃的に危険なハチだというレポートでした。
チャイブです。一番育てやすく、役に立つハーブですね
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