7月4日(木曜日)、英国の総選挙投票日、夜、テレビの開票速報をみながら書いています。
写真は、投票所 Polling Station 2か所。午後ボランティアで行った高級住宅地の中のスカウト・ハットと、うちの近所の小学校です。
朝7時から夜10時までの投票時間が終わって、すぐに開票が始まりました。
第ー野党、労働党の圧勝がすでに確定しています。
英国籍のない私は投票権がありません。
英国に移住(移民ではありません。英国籍を申請していませんから)して以来、最も重要な総選挙の行方をかたずをのんで見守っています。まあ、これを書き終わったら私は寝るつもりですが、夫はー晩開票速報を見て明かすつもりらしいです。
私(たち)にとって何がどう「重要」かというと...
移民排斥の機運におされてフランス、ドイツ、イタリアでは右派、極右勢力が躍進しているようです。他の州先進国の多くでも同じ動きがあるらしい今、移民問題がものすごく深刻なここ英国で(少し)左寄りの中道政党しかも名前がけっこうラディカルな労働党が政権に就くのは特異なことかもしれません。
まだまだ、捨てたものではない、英国。
「移民(国外から移住して英国籍を得た者)」より立場が不安定で、しかも白人ではない私たちのような非常に微妙な存在の他国籍永住者にとってはちょっとひと安心...というか、次の内閣解散までの5年間、息がつけると言ったところです。
日本の皆さんは私のように英国人と正式に結婚して永住権を得て30年以上英国に住んでいる私のような日本人が何を不安に思っているのか不思議に思われるかもしれません。
今回の選挙で議席をのばすであろう、リフォームUK Reform UK のような、露骨に移民排斥を訴える右派勢力が政権をとれば(それでも永住権を理由なくはく奪されるようなことはまだ考えられませんが...!)、「移民(外国人)でていけ」「移民(外国人)のせいで治安が悪くなった」「移民(外国人)に仕事を取られた」など、非寛容な意見を堂々と口にする人がおおぜい出てくることは絶対に間違いありません。
私たちが排斥対象として攻撃の矢面に立たされることが今からしっかりと予想がつきます。
口にするだけではなく、態度に出す人もいるでしょう。断絶と不安定な社会の到来は予測がつきます。
娘が卒業して以来、めったに足を踏み入れることがなかった小学校の正門です。☟学校はもちろん休校です。投票所に使われているのは「ジュニア・スクール (8歳~11歳まで)」の講堂だけなんですけどね。
現在の英国は、30年前マンチェスターの大学に留学していた私が「ー生住みたい」と思った素晴らしい国ではなくなりつつあります。間違いなくブレクシットBrexit (英国のEU離脱)決定の頃あたりから、英国至上主義(他の国はどうでもいい)や「移民や(たとえ英国民であっても)その子孫、ウザい」という差別主義的な意見を口に出してもいいと思うような人が増えてきたように思います。
投票所の講堂入り口に立っているこの男性は、この選挙区で優位な政党リブデムス Lib Dems (自民党 )のボランティア運動員です。日本では考えられないのですが、投票を終えた人に集計予想のために、だれに投票したか聞きだしています。
私が素晴らしいと思った英国は他民族が融合し、お互いの文化や価値観に敬意を払って共存する自由で民主的な国家だったはずなのですが...
小学校の正門から入って、裏門から出ました。ふだんは登下校時以外門が閉鎖されていて通り抜けができません。
実は排斥主義的な人々(はっきり言って人種差別主義者)は昔からけっこういたみたいですね..。
ありがたいことに私はまだ個人的に差別を経験したことはなく(少なくとも自覚はありません)、じゅうぶんに英国社会に融合していたつもりです。社会全体の排斥的な風潮は、報道や身近な人の見聞きした逸話など遠くから少しずつひたひたと忍び寄ってくるようです。
...私の周りの英国人の多くも「たしかに、誰もそんな差別的なこと言わなかったし、思っていてもバレないようにみんな気をつけていたから、自分も今まで気が付かなかっただけで...いたんだよね、そんな人たち」と言い始めています。
件のリフォームUKの選挙運動のボランティアが首相のリシ・スナクを南アジア(パキスタン、インド、バングラデッシュ)人とイスラム教徒に対する最悪の蔑称「パキ」(英語では表記と発言が禁止されている言葉です)と呼んで物議を醸しました。
私はリシ・スナクが大っ嫌いですが(!)彼に対する人種差別発言は絶対に許しません。
移民の子孫であるスナクが首相になる英国を英国民は誇りに思っていいはずなのですが...
今回の選挙と、英国の社会背景について、まだまだ日本の皆さんにお伝えしたいことはあるのですが...とりあえず、おちついて(ねむくなるまで...)開票速報を見るつもりです。
米国の 失敗と
ドイツの 困難な 状況を
海を隔てて 見てますから
英国はだいじょうぶ、かもしれません。
なんとか今回の選挙結果で右傾化はまぬがれました。ただ...欧州全体がだいじょうぶじゃなくなっているかもしれません。英国も油断はできません。人々は歴史や他国からは学ばないものです。排斥するパワーはそれだけ強力です