イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

大詰めに入った英国にとって重要な総選挙、引き続きスナク首相のズレまくり

2024年06月26日 03時46分01秒 | 英国の、生活のひとコマ

...天皇陛下ご夫妻がいらしているなんて、夕方のニュースではじめて知りました。

今日の話題は総選挙 General election 2024 、7月4日木曜日の投票日まで2週間を切りました。

写真はすべて、2日間にわたって近所で撮った党員が投票する党を表明する家の前にたてる看板です。この地域は第三政党、現在は第二政党の労働党に次ぐ議席数をもつリブデムス LibDems ( liberal democrats =自民党)の地盤なのです。通常、労働党は表立った選挙活動を控えていると言われています。リブデムスが議席を取れば保守党の議席数をおさえることになりますから。実際、労働党への支持を表立って表明する家庭はこの選挙区ではほとんど見なかったのですが...今年は違います!けっこう見かけました。ロイヤル・ブルーに木のシンボルの保守党の立て看板がひとつも見当たりませーん!

ストックポート日報 3度目のレポートです。14年間にわたって政権を担ってきた保守党 Conservative Party の敗北はいまや明らかです。労働党 Labour Party の圧倒的なリードです。

14年間の失策、無策と並びスナク首相の壊滅的なリーダシップの欠如と不人気に原因があることは言うまでもありません。

保守党の公約の、必ず実現させるとスナクが確約した、実現は絶望的な天下の悪法「兵役 Natinal Service 」の義務復活案...(もう今あまり話題になっていませんが)の以下、詳細です。

18歳の男女すべてが1年間の兵役 military service か、1か月に1回、週末に(年間25日間)社会奉仕活動 civill service を強要されます。

社会奉仕活動とは医療保健サービス、介護、消防あるいは地域で要請のある活動のいずれかの,社会性の高い要するにボランティアです(兵役よりラクそう)。それにしてもすでにそういう仕事についている人はどうするのか、週末2日に無償で働けということなのか...?!

英国では一般に若者のボランティア活動は盛んです。義務として強制させられるのに抵抗のある人も多いでしょう、兵役は言わずもがな...

義務教育修了試験終了後やギャップイヤーと言われる大学の休学中に、海外でボランティアや旅行してまわるのも兵役か社会奉仕の義務が終わるまで禁止です。兵役のために休学したり職場を離れたりされたら教育界や産業界の混乱は並大抵のことではなさそうです!

多くの欧州諸国は2,000年前後に評判が悪かった兵役の義務を廃止しています。(例外やロシアの脅威から復活している国もあり)冷戦の終結後、意味がなくなったのと、ものすごい税金の無駄遣いだったそうですので。

英国を含む多くの欧米諸国では、「職業軍人」を擁する志願制の軍隊でうまく回っているようです。志願者から選抜した、やる気と素質のある少数の若者をお金と時間をかけて訓練した方が絶対に効率がいいのです!

たしかに、隣国と緊張状態にあるとか戦争中とかならなりふり構わず徴兵しなきゃならないのでしょうけど。備えあれば憂いなし、ヘタな鉄砲も数うちゃ当たると言いますし。

で、今のところ全面戦争に巻き込まれるんおそれが極端に少ない英国で、メチャクチャに税金を無駄につぎ込んで「予備兵力」を強化させる意義はあるかというと...ないみたいです、ぜんぜん。

総選挙で突飛な公約をぶち上げるのは悪手中の悪手だそうですし、スナク首相は頭がヘンになっちゃったのかと思いますよね。

有識者の解説によると、1949年から1960年まで賛否両論のもとに施行された「旧兵役の義務」の復活は、ある特定の層に強烈にアピールするそうです。ー部の高齢者と、もちろん右派の人々です。まあ、少数にウケても大した票にはならなそうですけどね。

強い印象を支持者に残して首相の座を去りたい、要するにかっこよく負けたいというスナクの意思なのでは、ということです。説得力はありませんがなんとなく納得です。

国家への奉仕精神と愛国精神を若い世代に植え付けたいというウケのいい言い方をしていますが、そのスナクは、6月6日にフランスで開催されたノルマンディー上陸作戦 D-Day 80周年記念式典の午前の部(英国人戦没兵士の追悼式)だけ出席して、午後の部(旧連合国の合同式典)を早退して帰国してしまったのです!!民放局のインタビューがあったからです。

式典後、フランスの大統領ほか、旧連合各国首脳と要人、英国王、ゼレンスキー大統領などの出席者が作戦に参加した平均年齢100歳の復員兵に感謝の意を表する歓談会がありました。最大野党労働党の党首、サー・キア・スターマーも出席して最後まで残ったようです。

それを平然とポカしたスナクの「愛国心の欠如」がごうごうたる非難のもとになりました。

こっそりとですが...「戦勝の栄光」の話はもういいよ...と思っている敗戦国の国民である私ですら、英国人ー般にとってノルマンディー上陸を果たして、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を終結に導いた連合軍兵士の功績(と犠牲)がどれほど重要だかはよくわかっているつもりです。それを欧州で戦線をリードした英国の首相が平気でポカす...?そして党内の誰もとめなかった...!?(スケジュールを管理する秘書とかいるでしょうに)

ニュースのインタビューで、長年の保守党支持者のある資産家が「スナクの判断力の欠如は首相として致命的。もう保守党には投票しない」と言っていました。このD-デイ早退事件で国民に明らかになったのは、スナクの「愛国心の欠如」よりもっと重要な「判断力の欠如」でした。問題点がやっと腑に落ちました。

ちなみに、早退してうけたインタビューで、スナクは育った環境のことで突っ込んだ質問をされました。

父は医師、母は薬局を経営する薬剤師のスナク家は裕福な「知的中産階級」の家庭です。スナクは1年間の授業料(現在)が49,152ポンド(約1千万円)もする、スナク家より上の階級の子弟が行く名門私立校ウィンチェスター・カレッジで日本の中高にあたる教育を受けたことで知られています。

「勤勉な両親は自分の教育のために犠牲を払った」といいたいがために、「必要なモノが足らず不自由した」と発言、具体的に何が足りなかったのかと聞かれ、「たくさん。特にスカイTV」と答え、大失笑を買いました。スナクの少年時代(35年ぐらい前?)、スカイTV (有料の衛星放送)が契約できた恵まれた家庭はごく少数でした...!「スカイTVがなかったなんて、なんて恵まれない子供時代だったのでしょう」という皮肉たっぷりの揶揄が飛び交っています。

発言する前に考えがまわらなかったのでしょうか。

2週間近くたった今でも「スナクとスカイTV」を笑いのネタにした数えきれないほどのミームでソーシャルメディアはあふれかえっています。

それに、労働党党首のサー・キア・スターマーとの公開討論会で国家医療保険サービスが機能不全なのは医療従事者のストライキのせいだ、とか産業が低迷しているのは労働組合のせいだとか、政府の無策の責任転嫁発言で会場からブーイングを浴びています。(どちらもYouTubedで視聴できます)

リシ・スナクの日本での評判は押しなべていいようですね。検索してみました。

来日時に広島でお好み焼きを焼いたり、靴を脱ぐ座敷での会談に岸田首相が応援している広島カープの赤い靴下をはいていったり...

そんなどうでもいい親しみやすさを日本なんかでアピールしてどうする...!?お好み焼きはこちらでも報道されましたが、赤い靴下について私は知りませんでした。

最後に、通りに面した窓に小さい支持ポスターを張った、夫が労働党員の私のうちです

前回2本の総選挙記事のリンクです☟☟

ズレた首相が率いる保守党政権、総選挙に何とかなりそうな希望が見えてきた英国の未来

英国にとって特別な意味を持つ今回の総選挙、公約と国民の意識、草が茂る庭とネコのハゲ

 

 

コメント (1)
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