イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

マンチェスターが誇る多様性の祭典、参加はしなかったけどマンチェスターには当日行った!

2023年08月31日 07時00分00秒 | 英国の、生活のひとコマ

今年も8月25日(金曜日)から28日(月曜日)までのサマー・バンクホリデー・ウィークエンド(28日月曜日は公休日)にマンチェスター・ゲイ・プライド・フェスティバル Manchester Gay pride Festival が「ゲイ・ビレッジ」を中心に開催されました。

ルール違反ですが、一番最初の写真は地元新聞の記事から無断転載しました(1枚だけでもイベントスポットの写真を載せたかったものですから)

もともとは同性愛者の市民権運動からスタートした「意識高揚イベント」だったマンチェスター・プライドです。今では「LGBTQ+」であらわされるすべての性的少数者 への支援、連帯を表明するマンチェスターの夏最大のお祭りイベントです。

性的少数者ではない一般の人たちも参加して大いに盛り上がります。

LGBTQ+とは...

L=レズビアン(Lesbian)、G=ゲイ(Gay)、B=両性愛者(Bisexual)、T=トランスジェンダー(Transgender 本来の性と自認する性が異なる) 、Q=クイア(Queer)、+=その他 (Plus)

「奇妙な」と言う意味のクイアはゲイの男性への蔑称でもあったそうです。現在は性的マイノリティ全てを総称する言葉としてLGBTQ+の人たちが自らををそう呼ぶようです。その他とは、上記のカテゴリーに当てはまらない性的指向や性自認(自分は男か女か)です。

 

日曜日、マンチェスターのシティセンターにラーメンを食べに行きました。(ラーメンの件は以前の記事を参照です)

国際都市トーキョーをイメージ、英国の日本グルメ事情、マンチェスターにて

 

バスの窓から、その日のメイン・イベントであるパレードを見終わったらしい人たちがゲイビレッジから出てくるところが見えました。

 

写真は、LGBTQ+への支援を表明するレインボーカラーで彩られた町と、ショッピングエリアで見かけたマンチェスター・プライド参加者(の隠し撮り)です。

シティ・オブ・マンチェスターがマンチェスター・プライドを市の公的行事と認定したのは1985年だそうです。ゲイ・コミュニティへの支援を公的機関(市)が表明した国際的にも早い一例です。

 

英国のゲイ・コミュニティのメッカ、マンチェスター(とその近辺)に定住すること30余年、1990年代をマンチェスターで過ごした私には、ゲイ・カルチャーはすっかりおなじみでしたが、ストックポートに移って以来のここ20年以上ごぶさたです。

90年代には何回か、パレードを見物しました。

当時はマンチェスター・マルディ・グラと言われるパレードが中心でしたっけ。個々のバーやクラブに集まってお開きになるのが通例でした。

現在はチケット(基金への寄付の£2-50)を購入して所定のエリアに入場すれば、コンサートその他数多くのパフォーマンスや意識高揚ラリーなどに自由に参加できるなど高度にオーガナイズドされた大掛かりなイベントになっているようです。

LGBTQ+への関心が国際的にかつてないほど高まっている今、このお祭りイベントへの注目度は私がマンチェスターに住んでいた時とはくらべものにならないほど高いようです。

 

今年のテーマは(今調べました)Queerly Beloved 愛すべき性的少数者(?)

同名の有名な小説(花嫁の付き添い役をよく依頼されるレスビアンの女性のラブストーリー)があるそうです。

ちょうど10年前に同性愛者同士の結婚が英国で正式に認められたのでした。それ以前の、同性同士でも異性婚と同様の権利が得られる「シヴィル・パートナーシップ」制度から昇格した完全な同性結婚制度です。今年は異性結婚制度が制定されて10年目、LGBTQ+コミュニティにとって重要な年だったようです。

私の娘は、男の子として生まれ、自分は女性だと15歳ごろに認識した「トランス女性」です。恋愛対象は男女どちらも当てはまるそうです。

幸運なことに、性自認を公言する以前から女の子らしい容姿で、成人した現在も体毛が一切なく、なめらかできれいな肌をしています。

声と少年のような体つきを女性らしくするために国家が無償で提供する、ホルモン治療を受けています。

この国の多くのトランスジェンダー男女と同様、性転換手術を受けるつもりは今のところないようです。男性の体のまま、正式に女性として市民登録をし直す準備をしています。

同性同士の法的なパートナーシップが認められず、性転換手術を受けなければ望む性での市民登録が許されないという日本から見れば「すすんでいる」ということができるでしょう。

しかし、英国ではLGBTQ+に対するヘイト行為が後を絶たないそうです。少数者の権利を表立って要求し、認められてきた実績があるからこそ黙っていられない、何かにうっぷん晴らしをしてやらないと気が済まない差別主義者の気持ちをうっかりつついてしまうのだと私は思います。

昔からどこの国にも自分と人種や信条などが違う少数者を貶める発言をしていい気持ちになっている人々は一定数いますよね。

マンチェスター・プライドのその日のお開き時にはおびただしい数の警官が町のすみずみに配置されていました。

翌日が法定休日(バンクホリデー)のため、遅くまで飲酒を伴うお祭り騒ぎに興じるフェスティバル参加者同士がトラブルを引き起こさないように...でもあるのでしょう。実際は「ホモフォービア homophobia(同性愛嫌悪者)」と言われる野蛮人のヘイト行為を未然に徹底阻止する目的なのは明らかです。

性的少数者への偏見がごく最近までけっこう容認されてきた背景には、宗教的なタブーの対象であったことと無関係ではないと思います。人種差別的発言を大っぴらにする人はごく稀かもしれませんが性的少数者への嘲笑はまだまだ至る所で目にします。この国でも!

長い髪をポニーテールにして、男性用のチノパンツと靴に、女の子っぽいティーシャツを愛用する娘は今まで3回もごく普通の同年代の男性から面白半分に「きみは女なの、男なの?」と聞かれたことがあるそうです。イヤな思いをして「女だよ」と答える娘にそれ以上何も言ってこないそうですが、絡む人が今後現れないとも限りません。

私は「その人たちはとても失礼で無知なだけで悪意は無いのではないか」と言ったところ息子に糾弾されました。この私の考えは現代の偏見撲滅社会にはそぐわないそうです。

トランスであるのが明らかな人にそれを指摘する行為は社会から疎外しようとする第一歩だとか...「ヘイト」だと決めつけるには微妙なところですが、言われた本人を委縮させる効果は充分です。

 

娘はふつう外出先で女性用のお手洗いを使用しますが、とがめられたことはないそうです。ただし、女性用に列ができている場合、躊躇なくすいていることが多い男性用を使用するそうです。トランス女性の女性用のお手洗いや更衣室の使用を認めさせるや否やという議論にはあまり関心がないようです。

現在、娘は女性とも男性ともとれる容姿や身なりをしているため、気にする人の目をひいてしまうことはたしかにあるようです。好意的な目であれば、気にせず受け入れるしかないと親である私は思っています。

身内にLGBTQ+当事者がいるために性的少数者への偏見や無理解にはとりわけ敏感にならざるを得ない私ですが、ヘイトのみならず、すべての面において、少数者や異端者に居心地の悪い思いをさせる風潮を決して許してはならないと心から思います。

 

できれば来年、重い腰を上げて(人が大勢集まる場所はコロナと無関係に昔からニガテなのです...)家族で参加したいです、マンチェスター・プライド!

家族が当事者であってもなくても...多様性の祭典を40年間も開催しているグレーター・マンチェスターの住民であることは私の誇りなのです。

そう言えば、私と子供2人は人種的少数者なのでした。この国では。

 

地元紙からの秀逸写真を、もう一枚だけ借用します☟

 

 

 

コメント (13)
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