イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

ナシのキューポラのある名物ミル建築に見る古い建物の利用法

2023年08月11日 08時00分00秒 | ストックポートとその周辺

洋ナシ形のキューポラのある元製糸工場、続きです。

きのうの記事のリンクです。

ナシのキューポラのある町、栄光の歴史の最後を飾るお茶目建築今は人気の商業施設

20世紀初頭に創業した、製糸工場の建物を上手に利用した「商業施設」です。

うちの娘と友人3人がウォール・クライミング(2時間コース)をしている間、私と夫は Stockport Vintage Emporium というお手頃骨董市場に入ってみました。

「お手頃骨董」は便宜上私が勝手につけた呼び名です。

骨董(アンティーク)というほどの値打ちもない年季の行った日用品を売っているブースが100近くある、常設マーケットみたいな施設です。ヴィンテージと言えば、聞こえがいい...まあ、欲しがる人もいるガラクタ屋の集合体とでもいった方がいいのかもしれません。

ペア・ミルのウェッブサイトを見てみたら、けっこう人気のある観光スポットらしいことがわかりました。

各ブースに、経営者は常駐していません。製品には全て、店名と値段が書かれた札が取り付けられています。メインの会計所に買いたいものをもっていって支払いをすればいい仕組みです。

「ガラクタ屋やセカンドハンドショップ、あるいは骨董屋では売り手と買い手の値段の駆け引きも買い物の楽しみ」と言う人も多いようですが、ここでは一切、値切れません。このシステムは気に入りました。私は値切るのは苦手ですし、かといって自分が必要以上に吹っかけてある値段を払って損した気になるのもイヤなのです。

 

衣類が充実していました。

 

びっくり顔のサカナの置物、Bewrick Leaping Trout に先月行った、ベリックの名前を見つけました。

ベリックは知る人ぞ知る、豪華な釣りツアースポットでもあるそうです。一区画を借り切ってトロウト(シャケの一種)フィッシングができるそうです。

 

草間彌生の古いポスターを見つけました。

いわゆる「骨董」らしい品物と言えば、対になったキング・チャールス・スパニエルの陶器の置物でしょうか。

19世紀に、新興中流階級がこぞって買い求めて暖炉の上に飾ったという成金インテリア・アイテムです。対で揃っているものはけっこう貴重らしいです。かわいくも美しくもなんともない俗っぽい置物ですが、よく見たら愛嬌があるような...(40ポンド前後、安いのか高いのか?)

18世紀のドイツで開発されて、20世紀に大人気だったというウラニウム入りの妖しく光るガラスの食器!

「安全性は問題なし」とわざわざ書かれていました。

 

...結局、何も買いませんでした。不要なモノを増やさないように極力気をつけているつもりです。

 

このヴィンテージ・エンポーリアムの呼び物は、一番奥のこの、ティールームらしいです。

 

椅子や食器類が何一つとして揃っていません。

さすがは「ガラクタ屋」のティールームです。

 

私たちは家では飲めないエスプレッソ・マシーンで淹れるアメリカーノを注文しました。おいしかったです。

紅茶の種類が多く、変わった形のティーポットから飲んでみたいと一瞬思ったのですが...やめました。

うちの夫はものすごーく紅茶にうるさいのです。オンライン販売で入手したリーフ・ティを自分でブレンドしてピッタリの量のお湯を沸騰させてティーポットで蒸らせて毎朝飲んでいます。私ももちろんお相伴しますが、ほとんどすべての英国人と同じように自分で淹れて一日に何杯も飲むティーバッグの紅茶との違いがよく分かりません!

うちで凝った紅茶を飲む自称エキスパートの夫が、出先のティールームで3ポンドも出して紅茶を飲みたがることなんてあまりないんですよね。

 

英国伝統のケーキ類の多さに目を見張ります。

 

大き目の1切れが3ポンド80ペンス(698円)は、おいしかったのでボッタクリとまではいいませんが,高すぎのような気がします。2人でオレンジ・チョコレート・ケーキ1切れを分けて食べました。

 

...帰ってから、マンチェスターのコットン・ミルに関してリサーチしてみました。

18世紀以降に創業され、現グレーター・マンチェスター内で稼働していたコットン・ミルは20世紀初頭には少なくとも2,400を下らなかったそうです。(学術資料を引用している郷土史家の2020年のブログを見つけました)

マンチェスターが世界の綿工業の中心地であったのは、第二次大戦ごろまで。戦時中は軍事需要におわれ、戦後は英国から独立したインドなどの、人件費の安い新興国にその地位を奪われ、全廃業に追い込まれました。

数多く残ったのが、用途のなくなった頑丈で立派なレンガ造りの建物です。取り壊すのも大ごとです。

1985年の調査時に残っていたコットン・ミルの建物は半分以下の1,112軒。その後、現在まで残っているのはそのうち半分にも満たないだろうとのことです。

現存のミルの多くは、広大なインドア・スペースを何かに利用されているはずです。

内装にかまわなくてもよい倉庫や、アーティストに貸し出す共有のアトリエ、ミュージシャンのリハーサル施設...などの他、ナイトクラブや、ワインバーなど古い工場である特徴を生かした粗削りな内装がおしゃれな利用法も注目されているようです。

大手の不動産デベロッパーが介入して、多額の資金をつぎ込まれて改装されたモダンなオフィスや天井の高い豪華なアパートメントとして分譲、賃貸されているミルも実際、多く見かけます。

 

ペア・ミルのように商業施設として、スペースが広いわりには家賃が安そうな店舗としての利用も、ここストックポートでも多数見られます。そう言えばペア・ミルは内装、改装にお金をかけた形跡はほとんどありません。各テナントそれぞれ必要最小限度に手を入れているようですね。

広大な上階スペースはほぼ空き部屋で、工場が廃業し、機械類が取り去られた後のボロっちさをかなりしっかりととどめているのではないかと推察されます。保存指定建築ですので、状態が劣化しないような措置が義務付けられているはずです。公的基金の補助もあるでしょう。

 

 

 

 

 

コメント (2)
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