私がボランティアでお手伝いしているチャリティ・ショップ、オックスファム Oxfam に寄付された大量の中古衣類を整理していた時に見つけた傑作日本語グラフィックのティーシャツです。
この類の奇抜なグラフィックのティーシャツにしては珍しく、丈が短く裾にゴムが通っていてお腹のあたりで中途半端にギャザーがよる、形も奇抜な着こなしにくいデザインです。
「以心伝心 / 一期一会の機械 / お疲れ様でした / 愛 / 東京 / やばい」とあたりかまわず目についた場所から拾ったとりとめのない日本語の羅列... というわりには書体が統一されているのが解せません。
もしかして、デザインに日本人がかかわっている可能性も否定できなくはありません、デザイナーにたのまれて、和訳した日本語をタイプして同じ書体でプリントアウトした人がいるようですから。それも国語能力がかなり低い人です。
「一期一会の機械」って何でしょうか(機会の変換ミスですね)
これらの言葉をひねり出したのは、もしかしたらかなり学習の進んでいる英米人の日本語学習者かもしれませんね。
背面です。
書かれている英文です。
Edition Edition TOKYO
SHIBUYA SHINJUKU
(ETERNITY) the whole of time, /with no begining and no end / 'Eternal' and 'forever' are synonymous, / but there is a subtle difference. /'Forever' refers to an endless or / seemingly period of time/ 'Eternal' means always lasteing without /a beginning or end; think of 'eternal' /as existing outside of time. If something /is eternal, it always is and always was.
The meanings of the lotus flower holds power because it can offer hope and strength to people
...わけありげなことが書いてあります。
でもこのティーシャツを「カッコイイ」と思って着てくれる若者たちに読ませようと思って選んだ文章でもなさそうです。
まあ、コンセプトが日本、日本と言えば仏教/禅、仏教/禅と言えば無限?ついでに日本と言えば東京、渋谷、新宿も外せない...日本にトラはいませんが。...というところでうまくまとめたつもりなんだと思います。
愛、東京、やばい、はバランスをとるため意味なくきいたことのある言葉を並べてみただけとか...?
このティ―シャツを掘り出して大興奮で写真を撮りだした私の肩越しに、いっしょに衣類の整理をしていた店の店長が「そんなに面白いかなぁ」と英文を棒読みし始めました。そして「このシブヤ、シンジュクというのは仏教用語か何かか?」と大真面目に質問しました。
何がウケるのかていねいにわかりやすく説明してあげたのですが、全然わからないようです。夫の反応とほぼ同じです。
漢字の変換ミスに関してはどうしても理解してもらえません。今ではうちの夫は「日本語の同じ音の単語に対応する漢字が何通りもある」ということを完全に理解しているのですが、「どこがどうおもしろいのか」はどんなに正確な英語で説明しても絶対に理解できないようです。
変換ミスがそんなにおかしいわけではなく、製品として大量にプリントしてしまい平気な顔をして販売してしまう、ということの方がおかしいのですが。
左袖には誤変換あるいは国語力の低さのダメ押し。
年末年始にかけて大量に受け取った寄付品がいまだにストックルームの場所をとっています。袋を開けての仕分け作業中はいつもは整理整頓が行き届いているスペースもひどく散らかります。
私がお手伝いしているオックスファムの支店は比較的裕福な人が多く住む、高級住宅街のはずれにあります。
販売する中古品をていねいに吟味してからコンディションを整えて(スチームをかけたり取れかかったボタンをつけなおしたりして)店に出します。売値は他の支店に比べると少し高めです。
ほつれや色褪せ、くたびれた布地や洗濯ではげかかったプリント等がみつかった衣料品はどんどん「廃棄から救おう袋 Waste Saver Sac」に詰めていきます。
残念ながら寄付品の80%は「廃棄から救おう袋」 入りです。
大量の「廃棄から救おう袋 」は繊維をリサイクルする事業や、支援品として発展途上国や難民キャンプに送るため、週に一度本部がよこすトラックで運び出されます。
この「一期一会ティーシャツ」はデイビッド・ベッカムが愛用した怪しげな日本語ロゴが大人気の英国の超人気ブランド、スーパードライ Super Dry の最盛期デザインでした!
現在は経営者が変わってヘンな日本語のぶっ飛び具合がだいぶ緩和されて落ち着いたカジュアルブランドととしてのイメージが定着しています。
よれよれくたびれ具合は気になったものの、メインテナンスして売り場に出すことに決めました。
スーパードライについて書いた以前の記事です☟
人手に渡った怪しげな日本語が入りブランドの英国の人気衣料メーカー、ブランド名変更後に懐かしの不可解ロゴ発見。人知れず無意味な内側のラベルは初見
上記の英文の意訳です;「eternity (無限)とは。eternal(無限の)は forever (終わりのない)と同義語だけど微妙に違う。forever は期限を示唆するけど eternal は時間枠を超えていつも存在する始まりも終わりもない概念である。」
「蓮の花には人々に希望と強さを与える力がある」
...仏教か東洋的な何かの精神性をわかりやすく英文で書いた文章をコピーしたみたいですね。SHIBUYA SHINJUKU がよぶんでした。