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文豪の魂光る「文学の城

2021年10月29日 | 妙法

フランス ビクトル・ユゴー文学記念館が開館30周年 文豪の魂光る「文学の城」2021年10月29日

  • ユゴー「戦闘の最後の勝利は、常にもぎとるようにして勝ち得られるものなのだ」
フランスのビエーブル市に立つビクトル・ユゴー文学記念館。淡いピンク色に彩られた姿が青空に映える。記念館の周りには風情ある庭が広がり、地域の憩いの場として親しまれている
フランスのビエーブル市に立つビクトル・ユゴー文学記念館。淡いピンク色に彩られた姿が青空に映える。記念館の周りには風情ある庭が広がり、地域の憩いの場として親しまれている

 池田先生によって創立され、1991年に開館した「ビクトル・ユゴー文学記念館」(フランス・ビエーブル市)。本年6月に誕生から30周年を迎え、記念の図録が刊行された。ここでは、世界的文豪の人間主義の大光を現代に広げる同記念館の概要と、フランス文化省文化財保護局のドゥニ・ラヴァル名誉総監査官、同記念館のフィリップ・モワンヌ館長の声を紹介する。

ビクトル・ユゴー文学記念館の開館30周年を記念して刊行された図録
ビクトル・ユゴー文学記念館の開館30周年を記念して刊行された図録

 パリから車で約30分。フランスが誇る文豪が愛してやまなかったビエーブルに、「ビクトル・ユゴー文学記念館」はたたずむ。
 
 敷地内の景色は四季折々に表情を変える。とりわけ万物が躍動する春が巡り来ると、思わず息をのむような景観が広がる。
 
 一面を覆う緑の絨毯に、黄色や白の鮮やかな彩りを加える花々。心地よく響き渡る鳥のさえずり――自然に包まれた歴史と文化の館は、おとぎ話の世界を彷彿とさせる。このほど刊行された記念の図録にも、随所にこの百花繚乱の絶景が紹介されている。
 
 同記念館の前身は「ロシュの館」と呼ばれ、多くの才能ある青年らが芸術や文学を語り合うサロンのような場所だった。この館の所有者と親交があった青年期のユゴーも、家族と共に幾度か足を運んだという。ロシュの館は詩人が心を癒やすとともに、創作に向けて詩想を練る場所でもあった。
 
 1991年6月21日、この美しき館に続々と人々が集まり、にぎわいを見せた。装いを新たにしたビクトル・ユゴー文学記念館の開館式である。これには、美術史家のルネ・ユイグ氏ら多数の来賓が出席。フランス大統領から祝福のメッセージも寄せられた。
 
 開館式に出席した池田先生は語った。「この記念館が、『自由』と『平等』と『友愛』の高貴なるフランスの魂を、世界へ、未来へ送りゆく『エスプリ(精神)の灯台』たることを祈ってやみません」
 
 没後130年以上を経た今もなお、小説や詩など、ユゴーが遺した情熱ほとばしる言々句々は、人々の心を奮い立たせてやまない。

ビクトル・ユゴー文学記念館を訪れた池田先生ご夫妻(1991年6月21日)。民衆を苦しめる悪と戦い、ペンを武器に正義を叫び続けた文豪の偉大な生涯に思いをはせた
ビクトル・ユゴー文学記念館を訪れた池田先生ご夫妻(1991年6月21日)。民衆を苦しめる悪と戦い、ペンを武器に正義を叫び続けた文豪の偉大な生涯に思いをはせた

 池田先生は若き日より、ユゴーの名著を繙いてきた。ある対談の折、その思いを語っている。「激動の19世紀を生きぬいた、最高峰の文豪を、青春時代、私は何回も読みました。魂の共鳴盤を激しくたたかれたような感動、衝撃は、今もって覚えています」
 
 先生が共鳴したもの――それは迫害を物ともせず、民衆に勇気を送り続けたユゴーの“正義のエスプリ(精神)”にほかならない。
 
 ユゴーは49歳の時に国外に追放され、その後、19年にも及ぶ亡命生活を送った。しかし、彼は決して立ち止まらなかった。苦境の渦中で、創作への炎はいやまして燃えた。世界中で愛される長編小説『レ・ミゼラブル』、邪悪と戦う『懲罰詩集』は亡命先で生み出されている。
 
 何よりユゴーの慈愛のまなざしは、社会の片隅に追いやられた人々に向けられていた。庶民を苦しめる悪とは断固として戦う! ペンを武器に、正義を叫び続けた。
 
 ユゴーの気迫は烈々たるものだった。小説『九十三年』の中で、文豪は訴える。「戦闘の最後の勝利は、つねにもぎとるようにしてかちえられるものなのだ」(辻昶訳『ヴィクトル・ユゴー文学館 第6巻』所収、潮出版社)と。
 
 ユゴーは民衆勝利を信じ抜く「行動の人」「不屈の人」だった。それは、池田先生の信念でもある。両者には、一人の人間の限りない可能性を信じる「人間主義の精神」が強く響き合う。

ビクトル・ユゴー文学記念館の図書室。大文豪の“精神の結晶”ともいうべき資料が収集されている
ビクトル・ユゴー文学記念館の図書室。大文豪の“精神の結晶”ともいうべき資料が収集されている
国宝5点など約7000点の資料を所蔵

 ビクトル・ユゴー文学記念館は現在、文化法人「フランス創価文化協会」が所有し、公益事業として運営。国内外に散逸していたユゴーゆかりの品々を収集する。
 
 記念の図録にも多くの資料が紹介されているが、同記念館では『レ・ミゼラブル』の直筆校正刷り全8冊など、フランスの国宝5点をはじめとする約7000点を所蔵。来館者は、ユゴーが滞在した当時の雰囲気を感じながら展示を鑑賞することができ、“文豪の魂との語らいのひととき”を持つことができる。
 
 また、偉人の人生を伝える展覧会や、学生の授業の一環としての団体来館も好評である。貴重な歴史的建造物として各種メディアで紹介されるなどして、反響を呼んでいる。
 
 開館から30年。同記念館はこれからも、文豪の魂の大光を社会に広げる「文学の城」として、一段と輝きを放つだろう。

ベルタル「ビクトル・ユゴーの肖像」(1867年、ビクトル・ユゴー文学記念館蔵)
ベルタル「ビクトル・ユゴーの肖像」(1867年、ビクトル・ユゴー文学記念館蔵)
ユゴー直筆の『レ・ミゼラブル』の校正刷り。フランス国宝(同記念館蔵)。創作に魂を注いだ文豪の息遣いを今に伝える
ユゴー直筆の『レ・ミゼラブル』の校正刷り。フランス国宝(同記念館蔵)。創作に魂を注いだ文豪の息遣いを今に伝える
哲学的叙情詩の最高傑作として知られるユゴー直筆の『静観詩集』の校正刷り。フランス国宝(同記念館蔵)
哲学的叙情詩の最高傑作として知られるユゴー直筆の『静観詩集』の校正刷り。フランス国宝(同記念館蔵)
フランス文化省文化財保護局 ドゥニ・ラヴァル名誉総監査官 二人の哲学は世界の希望

 ビクトル・ユゴー文学記念館の特徴の一つは、ユゴーの精神など内面を重視している点です。ユゴーの業績の歴史的事実を知ることも必要ですが、彼の民衆を救おうとする人間主義の魂を学ぶことは、さらに重要なのです。
 
 例えば、同記念館が開催した“偉人展”シリーズは、ユゴーと他の哲学者を比べることで、来館者が偉人たちの精神性を、より深く学べるものでした。
 
 この素晴らしい施設を、日本人である池田博士がフランスに創立されたことで、両国友好の懸け橋になったと感じます。
 
 また、池田博士とユゴーは、多くの共通する哲学を有しています。特筆すべきは、両者が人間の無限の可能性に焦点を当てていることです。
 
 博士は人間革命の思想を強調し、個人の精神の改革が社会の変革をもたらすと主張しました。ユゴーも、一人一人の庶民がもつ力を発揮させるために筆を執り、民衆を鼓舞しました。
 
 二人の文豪に共通する人間への愛情、不正義と戦う情熱は今後の世界を照らす“希望の光”となるでしょう。
 
 これからも、記念館がユゴーの精神の力を、多くの人に広めていかれることを期待しています。

ビクトル・ユゴー文学記念館 フィリップ・モワンヌ館長 地域貢献に高い評価の声

 ビクトル・ユゴー文学記念館には、美術史家のルネ・ユイグ氏らフランス各界の著名人や世界の識者をはじめ、約28万人が来館しています。
 
 私を含めスタッフは、この30年、来館した一人一人に丁寧な対応を心掛けてきました。また、所蔵品を国内外の美術館や博物館、図書館に貸し出すなど、ユゴー関連の展示の開催にも協力してきました。こうした積み重ねによって信頼は広がり、地元ビエーブル市からも“記念館が地域の発展に貢献している”と高く評価されています。
 
 当館の使命は、来館者に大文豪ユゴーの人間主義の精神を伝えることにあります。そのために、代表作品の初版本や直筆書簡などを展示しています。なかでもユゴーが逝去3日前に記した「愛するとは、行動することである」との直筆草稿は、フランスの国宝に指定されています。
 
 訪れた方からは、「偉大な文学者と対話をした気持ちになれました」などの感動の声が寄せられています。
 
 池田先生は開館式で「時代はいやまして、ユゴーの人間主義の炎を必要としております」と語られました。ユゴーと先生が共有する理想の実現へ、記念館の発展に尽力してまいります。


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