小田博志研究室

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里山再生プロジェクト in 牟礼 (1)

2015-01-14 | 自然

 香川県牟礼町の実家には、猫の額ほどの山がある。山の斜面の一部、と言った方がいいか。(ちなみに香川県のまたの名はうどん県で、四国の右上の県のことね。)

 幼い頃、祖母とたけのこを掘りに行ったり、松葉をかいて(集めて)来て、風呂の焚きつけにしたりしていた。つまり里山だ。(「里山」という言葉は、たぶんNHKのテレビ番組の影響で日本全国的に使われるようになってきたもので、以前、地元では聞いたことがなかった。)

 一昨年くらいだったか、ずいぶん久しぶりに行ってみると、なんと、

 竹のジャングルに変わっていた(-_-;) 日も射しこまないほどの密生ぶり。下草はほとんどない。昔は生えていたはずの木が、日光不足で立ち枯れている。竹というのは、根がどんどん伸びていき、先々でまずたけのことして顔を出す。そしてあっというまに青竹になって、上層部で葉を茂らせ日光をひとり占めしてしまう。地上を見ると別々でも、地下では一体なのだ。その生命力たるやすさまじく、山全体を覆い尽くすこともあるとか。

 たけのこも採りに行かなくなって、ずいぶん経つからなあ。他の持ち主も同様らしく、昔は山の上まで通じていた道が荒れて、分からなくなっていた。

 あれっと思ったのは、誰かが掘り返したような穴があちこちに開いていること。どうもこれはイノシシが、たけのこを食べるために掘ったようだ。このイノシシの増加もここら辺で問題になっているが、生態系の妙なバランスというやつで、イノシシ君、竹のそれ以上の増加を抑える役割を果たしてくれている。

 それにしても、この大量の竹、どうしたらいいものか、と考えていたら、意外な方策があるものだ。1昨年の夏に参加した、中国山西省大同市での緑化協力ツアーで、「無煙炭化器」なるものの存在を聞き知った。なんでもごく簡単に竹炭が作れ、できた炭を畑にすき込むと作物がよく育つようになるらしい。その通りなら、一石二鳥のしろものだ。それを買って、使ってみたのが1年前の年末年始。なにやら巨大な金属バケツの底を抜いたような形をしている。それを土の上に置いて、下から空気が入らないようにして、最初は段ボールの紙で着火する。火が回り出すと、切りたての青竹でもおもしろいように燃える。シューシューいいながら、切れ端から液がしたたりおちる。なめてみると、ちょっと甘みがある。炎が収まると、竹炭ができている。炭窯よりも燃焼温度が低めなためか、元の形を保っていない。

 今回は晴天が続いた。そのために、竹を切ると、切った分、日が差し込んでくることがわかった。覆いが取れて、空が広がっていく解放感を覚える。土も、久々に日に当たって喜んでいる気がする。よくよく見ると、地面のところどころに、広葉樹の幼木が生えている。これにも気づいた。

 

 どこかから種が落ちてきて、そこで自然に芽生えたのだ。「実生(みしょう)」というやつだ。あやまって踏んだりしないよう、ピンクのマーキングテープを結えていった。日が当たるようになると、この実生の木が大きく育つだろう。これならばわざわざ植林をしなくても、森が復元していく可能性を感じる。この自然の力が十分発揮できるような条件を整えることに、人の役割があるのかもしれない。

 前回は手当たり次第に切っていったが、今回は日差しの方角と実生の生育を意識するようになり、日が射してくる南側を重点的に切っていった。やっているうちに得た気づきから、また新しいことを認識するようになるものだ。そして、それに応じて、ものごとのやり方も変わっていくのだな。なるべく竹の根本から切っていたが、日差しを得るのなら、比較的細くて切りやすい上の方を切るのでよさそうだ。次はそうしよう。

 道具について。近所のホームセンターに行ってみると、竹専用のノコギリというのがあった。これが切りやすい。細身で、刃も細かくて、竹がスムースに切れる。手作業では、切れども切れども無くならないほど竹はある。しかし、チェーンソーはうるさいから使わない方針。

 運搬が問題だ。山の入り口までは手で運び出している。それだと切った竹3,4本が限界。それを何往復もする。まとめて背負えるようになると、はかどるだろう。山から出してからは、軽自動車の後部座席を倒して、積み込んでいる。軽トラックがあると便利なのだが。

 わが家のささやかな取り組み。しかし、放置されて、荒れた山は、日本の田舎に共通する問題でもあるので、どんなことになっていくのか楽しみながら続けて、ここでときどき報告しよう。里山の再生が、炭という意外な切り札から、田畑の土の活性化ともリンクしそうだ。山と田畑と生活の循環の回復までいくかどうか。日差しの大切さと、実生の幼木の可能性に気づいたことが今回の収穫だったかな。


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