ドイツにおいて「過去の克服」だとか「記憶のポリティクス」といえば、まずナチスの戦争犯罪が関連づけられる。しかし近年、東ドイツの「国家保安省Stasi」もそこに加えられている。
Stasiの建物は現在では記念館となって開放されている(Stasi-Museum)。このような転用の仕方自体、現代ドイツの記憶のポリティクスの一面として興味深い。
このStasiを正面からテーマに据えたのが、映画「 . . . 本文を読む
二風谷を訪れるのはもう5度目だ。
はじめての訪問は、大学を卒業して大学院に入るあいだの春休みだった。
舞鶴から船に乗って小樽に着いた。道内はJRの青春18きっぷを使って各駅停車で回った。その旅の中で、アイヌ民族が多く住む日高郡平取町二風谷に立ち寄ったのだった。
そのときに目を引いたものがあった。高野民芸店で見たマキリだった。マキリとはアイヌ民族のナイフのことだ。山に入るときも、コタン . . . 本文を読む
NHKのBS特集 未来への提言 特別編「リサ・ランドール 異次元への招待」(午後10時10分から11時)が面白かった。
特に、「理論」ということについて考えるヒントになった。
ランドール教授(ハーヴァード大学、理論物理学)は5次元理論というのを唱えて世界的に注目されているのだそうだ。
その理論の出発点は、現実に観察されるが既存の理論では説明できない矛盾に着眼したことだった。
例え . . . 本文を読む
円空は江戸時代初期の僧で、生涯に十二万体の仏像を彫り上げた。
各地への旅に明け暮れた、遊行僧であった。
その足跡は、当時の蝦夷地/アイヌモシリにも刻まれている。
このことを今日のテレビ番組「美の巨人たち」(テレビ東京系、午後10時から10時半)で知って、興味をかきたてられた。
円空はアイヌ民族とも交わって、仏像を彫ったのだという。
アイヌモシリ滞在後の円空仏には変化が見られる . . . 本文を読む
マンガ「夕凪の街 桜の国」の解説(p.100)で、原爆ドームの項目があり、次のように書かれていました。このまんがを描くにあたって気付いたのは、被爆直後からの写真を追うにつれ、原爆ドームが崩れ、小さくなっていた事でした。あの日の惨状を思い出すので壊して欲しい、という声も多かったのですが、結局核兵器の惨禍を後世に伝えるという使命を帯びて保存される事が、昭和四十一年に決まりました。 現在では世界遺産と . . . 本文を読む
こうの史代のマンガ「夕凪の街 桜の国」のことを知ったのは、たしか2年前に提出されたある学生のレポートを通してだった。
「人類学と平和」という授業のその年のレポート課題は、「平和について独自の問いを立て、それについて調べ考察したことをまとめよ」というものだった。それで(後から聞いたところによると漫画家志望の)その学生は、被爆者の体験についてそのマンガ作品を通して考察しようとしたのだ。
以 . . . 本文を読む
スティーヴン・オカザキが作り上げた「ヒロシマナガサキ」(原題:White Light / Black Rain: The Destruction of Hiroshima and Nagasaki)は、原爆投下と被爆体験の映像化として画期をなすものだ。
それは米国側の視点を知りつつも、被爆者の痛みに近づけるという日系アメリカ人の強みが発揮されているからだ。この映画は日米の間にある「記憶の溝」 . . . 本文を読む
映画評論家の佐藤忠男氏に『映画で読み解く「世界の戦争」』という著書がある(KKベストセラーズ、2001年)。
これは戦争を題材にした映画を、社会的・時代的文脈の中で読み解いた興味深い批評だ。記憶論としても面白い。
長崎で原爆投下の日を過ごして、この本の中の「原爆をめぐる理解と誤解」を読むとなおのこと考えさせられた。
1991年に黒澤明が「八月の狂詩曲」を作ったとき、その試写を観た米国 . . . 本文を読む
対馬に行く人にとってはちょっとお役立ち情報かもしれません。
厳原町の中心部、市役所のほど近くに「志まもと」という料理店があります。地元では知られた店です。郷土料理が主力です。
去年、ここで「ろくべえ」というものをいただきました。ネーミングからして野暮ったい。かけそばのようなものを連想していただくとよろしいでしょう。しかし麺は茶色ながらやや透けていて、こしがなくて、すぐにぶつぶつと切れてし . . . 本文を読む
縁あって、長崎のカトリックの方にキリスト教会を案内していただいた。
外海(そとめ)地方という長崎市郊外の沿岸部にある古い教会堂を訪れた。
まず行ったのが黒崎教会。レンガ造りの堂々とした建築。瓦屋根であるところが面白い。大正9(1920)年に完成したのだそうだ。近くには枯松神社といって、カトリックの聖人を祭神として祭っている神社がある。
出津(しつ)教会はフランスから来たド・ロ神父によ . . . 本文を読む
対馬から長崎へは小型のプロペラ機で飛んだ。オリエンタルエアブリッジという長崎ローカルの会社。一方で、福岡‐対馬間は全日空がジェット機を就航させている。これを見てもやはり対馬は福岡と生活圏を共にしているようだ。行政上は長崎県に属しているのだけれど。対馬ではこれまで「転県運動」というのが行なわれてきた。転県とは長崎県から福岡県へと所属を転じるということ。最近表立ってはないようだが、その感情は対馬島民 . . . 本文を読む
昨日が対馬アリラン祭の本祭だった。今年は午後4時から朝鮮通信使行列があった。
昼ごろ交流センター3階に行くと、庄野さんとばったりと会い、準備スタッフの方の昼食の場へ誘っていただいた。午後2時には出演者が入ってきて、衣装の着付けが行なわれた。山本会長の指揮のもと、非常に手際よく進められていく。3時過ぎてビジターハウス前に集合、それから行進順に櫓門のところに並んでいく。高校生に対して「旗を垂直に . . . 本文を読む
二日間ある「厳原港まつり・対馬アリラン祭」の今日は初日。
港の横にメイン会場が設えられていて、「ゲキレンジャーショー」だとか「ビール早飲み大会」だとかをやっている。舞台の前にブルーシートを何枚も広げて、そこに自由に座って見るという、かなりくだけた雰囲気。
夜はユン・ヘヨンさんのミニ・コンサートを聴いた。
在日三世の若い女性歌手。夏川りみさんにも似た透明感のある歌声の持ち主。いいお声で . . . 本文を読む
今、対馬の厳原にいる。
台風の影響だろう、たいへん蒸し暑い。札幌も昨日から湿度が高かったが、こちらはそれに輪をかけた感じだ。空港バスから降りた途端、メガネが湿気で曇ってしまった。冬のラーメン屋じゃあるまいし、こんなこと初めてだ。
福岡から対馬まで飛行機で30分。飛行機から見下ろすと、ここは山がちの島だなあと改めて思った。
島民にとって飛行機は船と並んで福岡に出るための日常的な交通手段 . . . 本文を読む