緊急メッセージ ー 新型コロナウィルス感染症と文化人類学
ひとつの病気が世界をみるみるうちに変えていっています。昨年末に中国武漢で発生した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)です。これは世界的に感染拡大をするパンデミックであり、各国が緊急事態宣言、国境封鎖、都市封鎖(ロックダウン)、外出自粛(ステイホーム)、休業要請、そして社会的距離などの防止対策を打ち出し、人々の生活は大きく影響を受 . . . 本文を読む
私たちがあたりまえだと思っていることは、単にそう思い込まされているだけかもしれない。オリンピックやFIFAワールドカップは、国ごとに競うことになっているが、国という単位で地球を分けるようになったのは、ここ百年ほどの間のことだ。人類の長い歴史の中で、国というしばりのもとで生きるようになったのは、一瞬よりも短い。今とは違う世界は長らくあったし、振り返ってみれば、私たちの生活のベーシックなレベルには、 . . . 本文を読む
文部科学省が「国立大学」の人文社会科学系(文系)学部の「廃止」!を打ち出している(もう「国立大学」ではなくて、独立行政法人なんだけどなあ)。その背景のひとつは経済至上主義的な世界観だ。大学の(すでに進んでいる)企業化をさらに推し進めるということになるだろう。それは「儲かるかどうか」でものごとを判断し、そうでなければ切って捨てるという発想だ。目先の経済的利益を追い求める路線が、福島原発事故に行き着 . . . 本文を読む
(北海道新聞夕刊<魚眼図>2011年12月22日掲載)
人類はアフリカで生まれた。
この見方が、近年の人類学では定説となっている。言うなれば、アフリカが地球上に生きる全ての人間の故里(ふるさと)というわけだ。念願かなって、今年僕はそこに「里帰り」することができた。
現時点で最古とされる人類の化石は、中央アフリカで発見された約700万年前のものだ。けれども集中的に古い人類の化石が見つかる . . . 本文を読む
新しい本が刊行されました!
波平恵美子先生編集の『文化人類学(第3版)』(医学書院)です。
私は「第2章 文化人類学と質的研究」の担当です。
他に、「人間と文化」、「個人・家族・コミュニティ」、「人生と通過儀礼」、「宗教と世界観」、「健康・病気・医療」、「人間と死」の章が収録されています。
他の章の筆者の皆さんから、たくさんの刺激と学びをいただきました。
これが文化人類学に関 . . . 本文を読む
本日、『新版 質的研究入門』(フリック著、小田監訳、小田・山本・春日・宮地訳、春秋社)が刊行されたようです!
「ようです」というのは、僕自身まだ手にとっていないものの、ジュンク堂書店さんのサイトをみるとすでに店頭に並んでいるようだからです。しかし、北海道の支店にはまだ届いていないみたいです。
初版の刊行は2002年10月30日でした。あれから9年目。すでにドイツ語版も英語版も改訂を重 . . . 本文を読む
『エスノグラフィー入門』いよいよ発売開始となりました!
今日のところ、札幌の書店では見かけませんでしたが、アマゾンなどのインターネット書店ではすでに「在庫あり」に切り替わりました。
「役に立つ本」「使える本」を目指して、ある程度実現できたと自負しています。
さっそく自分の授業で教科書として使い始めました。その現場でさらに磨き上げていきたいです。 . . . 本文を読む
『エスノグラフィー入門』を補強する、特設ウェブページを本日開設しました。
題して「エスノグラフィー入門・プラス」!
これから内容を書き込んでいきます。本の訂正だけでなく、文献ガイドなど役に立つ情報を公開していきます。 . . . 本文を読む
4月になって、心なしか札幌の根雪がゆるみはじめ、空の青も濃くなったように感じます。北大の正門から入る道沿いには、サークル部員たちが立ち並び、新入生を勧誘しています。これを見ると新年度の実感がわきますね。
製作中の本のこと。
『エスノグラフィー入門―〈現場〉を質的研究する』と副題も決まりました。
索引項目のページ番号を拾い出すという作業を明日までにやります。これで全ての仕事が完了。
. . . 本文を読む
『「女の仕事」のエスノグラフィー―バリ島の布・儀礼・ジェンダー』、中谷文美著、世界思想社、2003年
これは現代的エスノグラフィーの優れた実例です。エスノグラフィー入門者にはお手本として、ぜひ読むことを勧めます。
著者は、現代日本で「働く女性」に向けられがちな問いからこの本をスタートさせます。
「あなたは、なぜ働くのですか。」
この問いは男性には向けられません。働くことが当たり前 . . . 本文を読む
あけましておめでとうございます。
といってももう1月3日。僕はふだんじっくりできないまとまった原稿書きや読書をして過ごしています。その中で読んだ一冊をミニ書評します。
尹慧瑛(ゆん へよん)さんによる 『暴力と和解のあいだ―北アイルランド紛争を生きる人々』です(法政大学出版局、2007年)。これは2002年に一橋大学に提出した博士論文(『北アイルランドのユニオニズムにおける自己表象:「包 . . . 本文を読む
自宅のポストに『人類学で世界をみる―医療・生活・政治・経済』(ミネルヴァ書房)が届いていました。できたてホヤホヤの本です。じきに一般書店にも並ぶでしょう。
春日直樹さん編集による、人類学者のいわば「実技集」。
この本のコンセプトは、帯のコピーに表れています。
人類学は「人類学すること」を学ぶときにだけみつかる。
つまり(文化)人類学は、学説をまとめたような教科書を通して身につくもの . . . 本文を読む
(北海道新聞夕刊<魚眼図>2007年11月26日掲載)
青い海原の上を帆走する、木製のカヌーの群れ。ここは西太平洋のトロブリアンド諸島。現地の言葉で「クラ」をするための航海だ。クラとは貝でできた首飾りと腕輪を、島々の間で交換していくことだ。面白いのは、これが実用のためではない点。木のカヌーでの航海は命の危険すら伴う。それでも現地の人びとはそこに大きな意味を見いだす。ある島の長老は「クラは人生 . . . 本文を読む
NHKのBS特集 未来への提言 特別編「リサ・ランドール 異次元への招待」(午後10時10分から11時)が面白かった。
特に、「理論」ということについて考えるヒントになった。
ランドール教授(ハーヴァード大学、理論物理学)は5次元理論というのを唱えて世界的に注目されているのだそうだ。
その理論の出発点は、現実に観察されるが既存の理論では説明できない矛盾に着眼したことだった。
例え . . . 本文を読む
関西であるフォーラムに参加した。「公共哲学京都フォーラム」という。「フォーラム」とは「公共の問題に関する討論会」といった意味だ。公共哲学を追求するということが主旨だから、まさにそれにかなった命名となっている。
その趣向がすこぶるユニークだった。
(1)まったく専門の違う研究者が集うという点。
臨床心理学、哲学、メディア研究、フランス文学、音楽、その末席に文化人類学の僕がつらなった。通 . . . 本文を読む