僕らのあやまちを、大地は見ているよ
というフレーズからはじまる歌に導かれて、広田奈津子さんは南海の島へと旅立った。その島の名はティモール。その東半分の東ティモールが2002年に独立を果たすまでに、この島の人々は幾多の苦難を経験しなければならなかった。ポルトガルの植民地支配、日本軍の占領、そしてインドネシアの軍事侵攻。そのインドネシアを日本政府が支援し続けたことも忘れてはならない。
広田さんは島の人々の声に真摯(しんし)に耳を傾けて、ここで起きた凄惨(せいさん)な暴力に直面する。しかしそればかりでなく、この島の人と人、人と大地の深い絆を経験していく。それはまた自身の内なる自然とのつながりに気づく道のりであった。このプロセスを映画「カンタ!ティモール」は描き出している。これは一つの歌からはじまる縁によって紡ぎ出された珠玉の作品だ。
私はこの映画をこれまでに何度も見たけれど、その度に新しい気づきがある。自然について、いのちについて、そして平和について。特に広田さんが現地の「神社」(ウマルリック)で受け取るメッセージ「大地を敬い、自然の力を敬いなさい、そうすれば人は結ばれていく」は、日本の私たちにも通じる。それはいのちある大地に根差した暮らしから、深い平和は生まれるということだ。
この映画の上映会を6月23日午後1時から北大学術交流会館で企画している(入場無料、申し込み不要)。広田監督とアイヌ民族のゲストもお招きする予定だ。東ティモールの世界から、ここ北海道-ヤウンモシㇼの大地へと立ちかえる、そんな旅となることだろう。
(小田博志・北大大学院教授=人類学)
(北海道新聞朝刊〈魚眼図〉2024年4月16日掲載)
というフレーズからはじまる歌に導かれて、広田奈津子さんは南海の島へと旅立った。その島の名はティモール。その東半分の東ティモールが2002年に独立を果たすまでに、この島の人々は幾多の苦難を経験しなければならなかった。ポルトガルの植民地支配、日本軍の占領、そしてインドネシアの軍事侵攻。そのインドネシアを日本政府が支援し続けたことも忘れてはならない。
広田さんは島の人々の声に真摯(しんし)に耳を傾けて、ここで起きた凄惨(せいさん)な暴力に直面する。しかしそればかりでなく、この島の人と人、人と大地の深い絆を経験していく。それはまた自身の内なる自然とのつながりに気づく道のりであった。このプロセスを映画「カンタ!ティモール」は描き出している。これは一つの歌からはじまる縁によって紡ぎ出された珠玉の作品だ。
私はこの映画をこれまでに何度も見たけれど、その度に新しい気づきがある。自然について、いのちについて、そして平和について。特に広田さんが現地の「神社」(ウマルリック)で受け取るメッセージ「大地を敬い、自然の力を敬いなさい、そうすれば人は結ばれていく」は、日本の私たちにも通じる。それはいのちある大地に根差した暮らしから、深い平和は生まれるということだ。
この映画の上映会を6月23日午後1時から北大学術交流会館で企画している(入場無料、申し込み不要)。広田監督とアイヌ民族のゲストもお招きする予定だ。東ティモールの世界から、ここ北海道-ヤウンモシㇼの大地へと立ちかえる、そんな旅となることだろう。
(小田博志・北大大学院教授=人類学)
(北海道新聞朝刊〈魚眼図〉2024年4月16日掲載)
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