(北海道新聞夕刊<魚眼図>2013年2月26日掲載)
「円満」を形にするとこうなるのか、と思った。
それは一本の木から彫り出された仏像で、造形はシンプルそのもの。それが、これほどに澄み切ったエネルギーを放っている。まるで生きているかのような柔和な表情。その魅力にひきつけられ、なかなか離れられなかった。
この薬師如来立像と会うことができるのは、東京国立博物館の特別展「飛騨の円空―千光寺 . . . 本文を読む
(北海道新聞夕刊<魚眼図>2013年2月1日掲載)
古来、海は道であった。船によって人とモノが行き来し、島々や沿岸の町が結びつけられて、独自の海域世界が生まれた。地中海しかり、インド洋しかり。
瀬戸内海もまたひとつの海域世界を形づくった。それは単に沿岸地域を結んだだけでなく、江戸時代に朝鮮や琉球からの使節団が通過したように外へも開かれていた。そうした交流の結果、瀬戸の島々はそれぞれ豊かな . . . 本文を読む
(北海道新聞夕刊<魚眼図>2012年10月18日掲載)
ドイツ中部の町カッセルで、5年に1度、現代アートの国際展「ドクメンタ」が開催される。今年で13回目。毎回変わるアーティスティック・ディレクターが展示内容に責任を持ち、その手腕も見どころとなる。今回はイタリア系アメリカ人女性、キャロライン・クリストフ・バカルギエフがディレクターを務めた。
参加アーティストは数百人にのぼり、6月から9月 . . . 本文を読む
(北海道新聞夕刊<魚眼図>2012年6月28日掲載)
JR京都駅からバスに乗り換えて、北西の方向に進む。市街地を抜け、いつしか緑の豊かな山あいの道に入っている。1時間弱で栂ノ尾(とがのお)という停留所に着く。
ここから、高山寺(こうさんじ)の山門まではすぐだ。苔(こけ)むした石畳の道を歩いていくと、お寺の境内というよりも、森の中に入った気分がする。5月は新緑が目に鮮やか。あちこちからカス . . . 本文を読む
本日から札幌で「 ティンガティンガ原画展」が開催されます。
ティンガティンガとはタンザニアの現代アートのこと。カラフルな色彩が特徴です。
北大正門から歩いてすぐの会場(ギャラリー・エッセ)にさっそく行ってきました。
思ったよりもたくさんの作品が展示されています。タンザニア人アーティストの実演コーナー、カンガ(女性用衣装)やコーヒーなどの販売コーナーなどもあって、札幌に小さなタンザニア . . . 本文を読む
(北海道新聞夕刊<魚眼図>2008年10月2日)
ベルリン観光の穴場をお教えしよう。
アレクサンダー広場とそこにそびえ立つテレビ塔のことなら誰でも知っている。南西に少し歩くとニコライ地区に入る。ここにはベルリンでは珍しく古い石畳の街並みがある。中心にれんが造りの旧ニコライ教会が建っている。この正面からシュプレー川へと抜ける小路を歩こう。途中、左側の壁に「Zille Museum(ツィレ美 . . . 本文を読む
円空は江戸時代初期の僧で、生涯に十二万体の仏像を彫り上げた。
各地への旅に明け暮れた、遊行僧であった。
その足跡は、当時の蝦夷地/アイヌモシリにも刻まれている。
このことを今日のテレビ番組「美の巨人たち」(テレビ東京系、午後10時から10時半)で知って、興味をかきたてられた。
円空はアイヌ民族とも交わって、仏像を彫ったのだという。
アイヌモシリ滞在後の円空仏には変化が見られる . . . 本文を読む
ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。前にこの欄に書いたときはまだ春でしたが、それから札幌らしくなく蒸し暑い夏を超え、最近では秋の入り口に立った感じがします。今日はいい天気だったので、散歩がてら、家の近所を写真に撮って回りました。円山の南麓にある界川神社で例大祭をやっているというのぼりが立っていたので、行ってみました。ここはこの辺りの氏神様なのでしょうか、奥まったところにあるほんとに小さな . . . 本文を読む
イサム・ノグチ(1904‐88)。日本人を父に、米国人を母に、ロスアンジェルスに生まれる。幼少期を日本で過ごす。青年期から米国で彫刻をはじめる。太平洋戦争が勃発し、米国西海岸の日系人が強制収容所に送られはじめると、その頃東海岸にいたイサムは志願して(!)収容された。戦後は、ニューヨークと牟礼という二重の本拠地で作品を作り続けた。越境者にしてはかりしれないクリエーター。 石を彫刻する。ここに言うま . . . 本文を読む