長月、9月に入りました。外ではコウロギの鳴き声が聞こえます。残暑はあるものの確実に春が来ています。
9月に入っての最初の「日めくり万葉集」の歌は、「萩の花」が読み込まれた歌でした。
解説は上代文学研究者の森陽香(もり・ようこ)先生です。
秋風は
涼しくなりぬ
馬並べて
いざ野に行かな
萩の花見に
(巻10-2103作者未詳)
訳
秋の風は
涼しくなった
馬を並べて
さあ、野原に行こうよ
萩の花を見に
解説によりますと万葉集の中には150種類の植物が歌われています。その中で「萩」が読み込まれている歌は140首以上で、この時代人々がいかに愛した花であるかがわかります。
自宅の庭にもあるのですが、もう既に花は風に散りはじめています。この花は毎年同じ株から芽を出します。毎年同じ場所に、毎年同じ風景を作ってくれます。
過去ブログ
2008年10月25日
春秋の争い
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/07c1dca1e8a1234f5239554c0c47f558
で、京都府木津川市の馬場南遺跡で「阿支波支乃之多波毛美智」と書かれた奈良時代の木簡が発見された話を書きました。
今回の森先生の話の中にも詳しく解説されていました。
木簡には「阿支波支(あきはぎ)」と万葉仮名で表記されています。これが『万葉集』では「秋芽子(あきはぎ)」と表記され「芽」一文字で「はぎ」をあらわしています。
この理由は先ほど言ったように古株から直接また芽を出すからであろうというのです。
体感からして非常に納得する説です。
「萩」という漢字が古資料に出てくるのが平安時代になってからのことということで、このように萩が万葉歌に数多く詠まれることから、秋を代表する花として「萩」という文字が使われ、現代にあるのですから感慨深いものがあります。
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これも過去ブログの話ですが「萩」関係して、
2009年08月17日
萩の花と縁起の理法
http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/64a839bb83ccbb65460889c1b7bb64e2
わが岡に
さ男鹿来鳴く初萩の
花嬬(はなづま)問ひに
来鳴くさ男鹿
(巻8-1541大伴家持)
を紹介しています「萩が鹿の妻である」という古代人の自然に対する発想です。稲妻に見る「稲の妻」同様の「いのちの宇宙」を感じる花でもあるのです。
番組では次の歌も紹介されていました。
「日めくり万葉集」今朝は上代文学研究者森陽香先生の「萩」の話を中心に話しました。
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