全体に強い芯のある映画だ。大人になりきれない女の子がふと転落してゆく青春ものでは決してない。彼女の行動にはすべて意思が見える。むろん、麻薬を運ぶときにもいろいろなことを想定してから自分の意思で選ぶのである。だから、悪夢を見たとしても彼女は後悔しない。いつも前を向いている。
この辺りが通常の転落ものでない女性映画である。
ブツを体に飲み込んで、入国するまでのいきさつは手に汗を握るスリル感がある。何か . . . 本文を読む
古くからあるテーマ「初恋」。10年後に故郷に戻ってきた男と女はすでに歳月という代物がすべてを変えてしまっていた、という古今東西の究極的なテーマを、悠然とした大河が流れるような緩やかなテンポで描く。
少々くどい説明調が気になるが、中国の自然が美しいので許せる範囲。
ラスト近くの水かさが急に増え始めている川のほとりでの3人3様の葛藤は唯一動的な部分だ。特に香川照之は聾唖者役だがセリフがなくても十分こち . . . 本文を読む
13歳の男の子の胸に突然今まで考えたこともない移民者の民族的問題。1週間の人間の生き死にの地獄をまさに自分が経験したことからもたらした課題であった。
この映画の鋭いところは政治で解決の出来ない部分をどこまでヒューマニズムで追求できるか、である。命の恩人なのに、難民者というだけで、強制送還される仲間たち。
まず、生きて飢えをしのぐためには盗みでも何でもしなくてはその日を生きていけないのだ、という当た . . . 本文を読む
イタリア映画の真髄を見る思い。ベロッキオの演出が冴え渡る。世界を震撼させた首相誘拐からテロへと移る「赤い旅人」の視点から見た人間の自由とは、、。
テーマが重いと思っていて敬遠していたのだが、本作は女性から見た輻輳した人間の思い、夢にまでつながるイマジネーション、かなり思い切った映像処理で広がりのある映像化に成功している。
緊密なショットが続くわりに、僕たちの気持ちを画面から離させないのは、政治的な . . . 本文を読む