ふと聴きたくなって、吉沢元治のベースソロを2枚聴く。
■ 『Outfit: Bass Solo 2 1/2』(Kenroad、1975年)
ソロコンサートの記録である。聴きながら捉えどころの難しい演奏だと感じる。力でも技でもない。押し出しが強いわけでもない。ことさらに繊細さを強調しているわけでもない。<日本的>などと言えば簡単だが、それは安易に過ぎる、何も言っていないにひとしい。
間章による長文のライナーノートがある。文章のノリは好きなものではないが、この演奏が当時の<現在>と向かい合っていたことを何とか示さんとするドキュメントではある。
■ 『From the Faraway Nearby』(PSF、1991年)
これはまた随分と様相が異なる。エフェクター、ノイズ、多重録音もあるのか、そんなサウンドの中で自己を放出するベースの音。時代がなんであれ、奇妙に心に刺さってくる音創りのプロセスである。
北里義之のライナーノートによれば、デレク・ベイリーに象徴される<即興性>から<操作性>へとシフトしていった記録なのだ、という。そうであれば、やはり、デレク・ベイリーと吉沢元治との共演をぜひ観たかった。新宿ピットインで予定され、わたしも予約していたのだが、ベイリーの来日中止によって取りやめとなった。吉沢元治のソロとなったライヴには足を運ばず、その後、ふたりとも亡くなった。
●参照
○高木元輝の最後の歌(高木元輝+吉沢元治『DUO 1969.10.9』)