開高健『モンゴル大紀行』(朝日文庫、原著1992年)を読む。
テレビの仕事で、開高健がモンゴルを訪れ、釣りをするという企画の記録。
ちょっと前の人ならともかく、わたしにとって、この名前の神通力はまったくない。むしろ、「経験」や「冒険」や「道楽」や「純真さ」といった面からたてまつられた姿を見ると、正直言って、しらけてしまう。メッキなど、もうはがれている。
それよりも、開高健につねに随行した写真家・高橋昇の作品が目当てである。極めて自然に感じさせるアプローチも、色もいい。『オーパ!』のころは、ミノルタX-1を2台使っていたはずだが、このときもミノルタだったのだろうか。
ついでに、本のもととなったテレビ特番『開高健のモンゴル大紀行』、『続・開高健のモンゴル大紀行』(1987, 88年)を観る。モンゴル北部やゴビ砂漠に棲む、猛禽類、アネハヅル、タルバガン、狼などの姿がとらえられていた。なかでも、ネズミのようなタルバガンの狩は興味深い。大の男が、白いふさふさしたものを持って幻惑しながら這ってゆき、近づいたところで撃つという方法である。今もやっているのかな。