デュッセルドルフのCubic Studiosにて、『Black is the color, None is the number』(2019/2/17)。
近くに住むサックスのフローリアン・ヴァルターにデュッセルドルフに行くと連絡したところ、ダンスを観に行くから一緒にどうか、と。なんと皆藤千香子さんの振付によるステージ。到着早々だがこれは是が非でも駆けつけなければならない。
到着したら、即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』に出演していた荒川創也、ヤシャ・フィーシュテートのふたりがいて、そしてヴァルターもほどなくして現れた。もちろん皆藤さん。
Taneli Törmä (dance)
Jascha Viehstädt (creation)
Phillip Schulze Bühnenbild (live music)
Ivan Geddert (scenic design)
Kanade Hamawaki 濱脇奏 (light design, graphic)
Chikako Kaido 皆藤千香子 (choreography, concept)
写真スタジオの白い空間に、タネリ・トルマがひとり立っている。横にはマットレスがふたつ。サーチライトのような照明がかれに向けられ、動かされている。
横臥しているダンサー。手の動き、足の動き、それらの機能をひとつひとつ試しているようだ。かれは立ち上がり、ばらばらだった各機能を有機的につなぎあわせ、獲得し、身体の中で軋みを摩耗させていく。しかしその動きは逆に過剰にも振れる。また倒れては、いちからひとつひとつの機能を試す。
ここで横臥するかれの上に光の啓示がある。アンビエントな音楽が止まり、また此岸に戻ってくることで、音楽の存在感が露わになったりもした。かれはマットレスの背後に隠れ、倒したそれをひたすらに動かす。まるでシジフォスが岩を山頂に持ち上げ続ける苦行のように。
これは誕生の物語であり、人生そのものでもあるように思えた。オーディエンスは1時間、このプロセスを取り込み、凝視し続けた。
終わったあとで皆藤さんに聞くと、これはゼロから1へのコンセプトであり、そこには物質の質量に関与するヒッグス粒子も意識したということ。スタニスワフ・レム『ソラリス』においては海の中に創出される顔の部品が相互に噛み合わない違和感が書かれていたが、今回のステージは、そのような段階からの誕生と運命とが表現されたのかもしれない。次の日本公演にも期待大。
Nikon P7800
●皆藤千香子
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)