1997年に世田谷美術館で開かれたA.R.ペンクの個展会場では、ペンクが叩くドラムスの音がBGMとして流されていた。それ以降、絵描きとしてのペンクよりも、音楽家としてのペンクに興味があったのだが、なかなか実際の音を聴くことはなかった。(なお、ペンクは1980年に東ドイツから西ドイツに亡命しており、奈良美智の師匠でもある。)
フランク・ライト『Run with the Cowboys』(1983年頃)は最近入手したLPで、おそらくは、直接的にか、限られたギャラリーにおいてのみ頒布されたものである。勿論ジャケットは裏表共にペンクの手によるもので、本人はピアノやフルートで参加している。
Frank Wright (sax, vo)
Peter Kowald (b)
Frank Wollny (g)
Coen Aalberts (ds)
A.R. Penck (p, fl, vo)
そんなわけで聴いてみると、良い意味でも悪い意味でも予想を裏切らない。ライトは、ぶぎゃー、のうぇー、ひゃー、とサックスを吹きまくり、ときに興奮してか意味不明な言葉を叫ぶ。ペーター・コヴァルトのベースはいつもながら素晴らしく、指でも弓でもその音色は絹のようだ。時に皆を押しのけてギターが全体を支配する奇妙さは愛嬌。
そしてペンクである。よくわからないキーボードと、よくわからない笛と、(ライトに比べると)か細い叫び。おっさんおっさん、何のつもりだ。評価不能である。
結論、ペンクはアートワークで十分。
ところで、YoutubeにこのLPのA面がアップされていた。おそるべし。(>> リンク)
●参照
○エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ペンクの絵の前でライトやブロッツマンが吹く映像、コヴァルトのインタビュー)
○ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(コヴァルトのヘタウマな絵)
○2010年と1995年のルートヴィヒ美術館所蔵品展(ペンクの絵)
○ヨーロッパ・ジャズの矜持『Play Your Own Thing』(ゲオルグ・バゼリッツがペンクについて語る)