諏訪敦彦+イポリット・ジラルド『ユキとニナ』(2009年)の試写を東京日仏会館で観た。
上映前に、ユキ役のノエ・サンピと諏訪監督の舞台挨拶があった。ノエ・サンピはフランス人の父と日本人の母を持つ9歳の子ども、本当にすれてない感じ。そりゃ9歳だもんなと思っていると、なぜか演歌歌手のさくらまや(10歳!)が登場し、完璧にステージの受け答えをして、なぜかジャクソン5の「ママがサンタにキスをした」を歌った。司会の女性は2人の子どもを並べて天才天才と持ち上げていた。こういう大人になってはいけない。
ユキは離婚間際の父母とパリで暮らしている。母が日本に連れて帰ろうとするのを突然拒否したユキは、友だちのニナと家出をする。ニナの両親も離婚していて、2人が向った先はニナの父の別荘。そこから森の中へと入っていった2人だが、ユキはあえてニナとはぐれ、本能の赴くままに森の中を歩き続ける。と、いきなり開けた場所は日本の田園風景。
何の予備知識もなしに観た映画だが、傑作であり、怪作と言ってもいい。台詞はほとんど即興(子どもも!)。無限大の内的世界を持った子どもが蠢く、無限大の存在を孕む森。ノスタルジックでメルヘンチックなおとぎ話を想像して入ると、思わぬ衝撃を受けるに違いない。
ユキの父親は離婚の哀しさからか、深夜大音量の音楽とともに酔っ払って踊り、起きてきたユキに「大人なんてヘンな生き物なんだよ」と呟く。何だか身につまされてしまう。そして観る者はヘンな生き物の大人であると同時に、底知れない生き物である子どもにも自分を投影する。
エンディングテーマは、UA+大島保克「てぃんさぐぬ花」。これもさりげなく秀逸。