Sightsong

自縄自縛日記

侯孝賢『戯夢人生』

2012-12-23 08:10:16 | 中国・台湾

侯孝賢(ホウ・シャオシェン)のDVD13枚組を入手した(なんと44ドル)。そんなわけで、まずは、『戯夢人生』(1993年)を観る。

台湾。1895年の下関条約により、日本の占領下に入る。主人公・李天祿の語りもここからはじまる。父は結婚して養子に入ったが姓が悪いと判断され、息子(李)を元の姓で戸籍登録しようとするも、日本の法律で認められない。祖母の健康が悪くなったとき、その代わりに自分の命を差し出すと祈っていた母が亡くなり、祖母は回復する。その祖母が行く先々で死がつきまとう。父は呑んだくれになり、再婚相手は李とのそりが合わない。李は人形劇の腕を買われて劇団を転々とする。日本軍による戦意高揚のための劇にも参加せざるを得ない。そして1945年に日本は敗戦。日本軍の戦闘機などを鉄屑として売ったオカネで演劇ができるのだと聞いたとき、李は、台湾の独立を実感する。

晩年の李天祿による語りと、台湾の山々や田畑の風景が映画を支配する。ドラマとしての幹はなく、すべては時代の記憶である。しかし、その力が圧倒的で、否応なく惹きこまれてしまう。あの何気ない風景のロングショットを、まったく惜しみなく挿入する侯孝賢の手腕はやはり途轍もない。

それにしても、布袋劇という伝統的な人形劇は面白い。まるで京劇のようで、声色を作った語りの合間に、出入りや流れるような動きがあり、そのときに小さな銅鑼が連打される。最新作『レッド・バルーン』(2007年)でも人形劇を扱っていた侯孝賢の、人形劇への拘りや如何に。

●参照 侯孝賢
『冬々の夏休み』(1984年)
『ミレニアム・マンボ』(2001年)
『珈琲時光』(2003年)
『レッド・バルーン』(2007年)


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